機能性アミノ酸(オルニチン・シトルリン)
の食品への最新活用術
〜「ifia JAPAN 2013」セミナー

2013年5月15日〜17日、東京ビッグサイトにて「第18回国際食品素材/添加物展・会議(ifia Japan2013)と第11回ヘルスフードエキスポ(HFE JAPAN2013)」が開催された。 企業セミナーより、協和醗酵バイオ株式会社の「機能性アミノ酸(オルニチン・シトルリン)の食品への最新活用術」を紹介する。

機能性アミノ酸(オルニチン・シトルリン)の食品への最新活用術
協和醗酵バイオ株式会社

オルニチン、アンモニア解毒促進

アミノ酸の一種であるオルニチンやシトルリンは、タンパク質を構成しない遊離アミノ酸である。そのため、一般的な認知度は低いが、近年その機能性に注目が集まっている。

まずオルニチンだが、これは生体内の各組織に広く分布している。オルニチンは一般的に食事から摂るが、欧州では医薬品成分として25年以上使用されている実績がある。

日本でオルニチンといえば「しじみ汁」が連想される。「飲み過ぎた翌日」の肝機能改善効果が期待されているが、これはオルニチンがアンモニアの解毒を促進するためである。

肝臓は食品の代謝、薬物代謝、アルコール代謝の他、胆汁の生産や血漿タンパク質の生産など多様な機能を備えた重要な臓器で、生命活動維持に必須な臓器として24時間フル活動している。

しかし、別名「沈黙の臓器」といわれるように、その機能が低下・悪化しても多くは自覚症状がないままで、気がついたときには重篤な状態であることが多い。

肝臓に異常を認める人が年々増加傾向

2010年に人間ドックを受診し、いずれかの項目に「異常あり」とされた人の割合は96.1%にものぼる。その中で肝臓の数値に異常を認めた人の割合は31.9%で、1983年の9.6%と比較すると、肝臓に異常を認める人は年々増加傾向にある。

欧州ではオルニチンは医薬品成分として用いられているが、日本では肝機能の低下を改善する決定的な薬剤は存在しないとされ、医師の指導の下、安静にするか栄養療法を行うことが治療の柱となっている。

オルニチンは口から摂取すると腸で吸収され、肝臓や腎臓、筋肉に運ばれ、オルニチンサイクルというアンモニアを代謝する経路で働き、アンモニアの解毒を促すことが明らかとなっている。

オルニチン、シジミにだけ飛び抜けて多い

アンモニアはタンパク質の分解により発生する毒性物質で、生体に悪影響を与える。そのため、その解毒を助けることは肝臓のスムーズな代謝に貢献すると考えられている。実際に、ヒト試験においても、オルニチンの摂取が肝機能マーカー値の改善を示すことが認められている。

肝臓に良いとされる成分としては他に「タウリン」「アラニン」「ビタミン12」などがあり、これらはホタテ、イカ、アサリにも含まれている。

しかし、オルニチンはシジミにだけ飛び抜けて多く含まれている。オルニチンはオルニチンサイクルの働きを活発にすることで肝機能を助け、肝臓疲労を回復することが期待される。そのため最終的には全身の疲労回復に役立つことが期待されている。

成長ホルモンの分泌を促進

オルニチンの新しい機能性として「成長ホルモン分泌効果」が認められている。ヒト試験において運動習慣のない日本人(成人男性12名)に、運動前にオルニチンを単体摂取させたところ、プラセボ摂取群に比べ、運動後の成長ホルモンの変化量が優位に上がった。

オルニチンには脳の下垂体を刺激して成長ホルモンの分泌を促進する機能性があることについてすでに幾つかの論文が出ている。実際、アメリカではオルニチンが筋肉を効果的に増強したいアスリート向けのサプリメントとして利用されているという。

成長ホルモンは加齢とともに減少するが、とくに40歳から右肩下がりで低下するため、オルニチンで成長ホルモンの分泌を促すことはアンチエイジングにも効果的であることが期待されている。

睡眠のゴールデンタイムといわれる22時〜2時、つまり体内で最も成長ホルモンの分泌が高まる時間帯にさらに成長ホルモンを増やせるかどうか、睡眠2時間前にオルニチンを摂取して計測を行ったところ、成長ホルモンの分泌が増加、眠りの体感が良くなる、翌朝の目覚めがすっきりしたなどの報告があり、睡眠の質の改善にも効果がある可能性が示唆された。

シジミ汁は日本でも古くから食経験があり、古代中国でも健康食として伝承されている。今後も肝機能改善作用をはじめさまざまな角度からオルニチンの機能とそのメカニズムを明らかにしたいという。

シトルリン、血管拡張効果が近年明らかに

シトルリンはオルニチン同様、遊離アミノ酸で生体内に幅広く分布している。日本の研究者によってスイカから発見されスイカの学名にちなんでシトルリンと名づけられた。日本で食品素材として使用されるようになったのは2007年、現在は清涼飲料水やドリンンク剤、ガムなどに添加され幅広く利用されている。

シトルリンはスイカの他にもメロンやウリ、キュウリ、へちまなどウリ科の植物に比較的多く含まれ、私たちの健康に寄与している。その最大の効果は血管拡張効果であることが近年明らかになっている。

血管そのものにアプローチできる物質

私たちの血管内では一酸化窒素(NO)が日々生産されている。一酸化窒素は健康に非常に有用であることは1998年ノーベル医学・生理学賞を受賞した研究で認知されるようになった。

一酸化窒素には血管を拡張する作用があり、これにより血液は体のすみずみまで行き渡り酸素や栄養が運ばれていく。血管壁にコレステロールや血球が付着して、血管が狭くなるのを防ぐ効果もある。

血液が流れやすく、しなやかな血管であることが若さの秘訣ともいわれるが、血流ではなく血管そのものにアプローチできる物質としてシトルリンにはますます注目が集まることが考えられるという。

血管は加齢とともに硬くなり内側にはコレステロールの付着などによるつまりが生じる。そのため、動脈硬化や心筋梗塞・脳梗塞の原因になるが、一酸化窒素が体内で十分に働くことで、血栓を予防し、血管そのものの拡張から動脈硬化などの予防にもなる。

シトルリン、一酸化窒素の生成を助ける

体内に分布しているシトルリンは、一酸化窒素の生成を助け、血管を拡張する作用がある。そのため、シトルリンが一酸化窒素の生成を促すことで、血流はスムーズになり、動脈硬化、冷えやむくみ、筋肉増強などのさまざまな健康効果が期待できる。もちろん脳内の血流も促進するため、集中力や記憶力のサポートにも役立つことが期待されている。

このように私たちの体内で重要な役割を果たすシトルリンは、別名スーパーアミノ酸ともいわれている。オルニチンもシトルリンも私たちの身近な食品に含まれる安全性の高い成分で、高齢社会に不可欠な機能性を有した優れた成分のため、これからもさまざまな加工食品や飲料で利用されることが期待されるとした。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.