高ポリアミン食の摂取が健康維持の秘訣
ポリアミンは、ヒトをはじめ全ての生物(微生物、植物、動物)に存在する成分で、ヒトの体内ではとくに成長期に盛んに合成される。構造的には脂肪族炭化水素の総称である。私たちの体内には20種類以上のポリアミンが存在し、代表的なものには、スペルミジン、スペルミン、プトレスシンがある。
ポリアミンは母乳に多く含まれ、とくに胎児や新生児の細胞ではポリアミンの細胞の増殖能力が高く、合成も活発である。また食品では納豆やチーズ、ヨーグルトなどが高ポリアミン食に分類される。これらの食品を摂取すると血中のポリアミン濃度が上昇することがヒト臨床試験でも明らかになっているという。
日常的な高ポリアミン食の摂取が健康維持の秘訣であることが近年注目されている。というのもポリアミンが細胞内で活発に合成され続けることが、細胞の安定的な増殖や形成に不可欠であるからと考えられているためだ。
通常、食品やサプリメントで特定の栄養素を補っても消化管(主に小腸)で分解されるため、その成分がそのまま体内に取り込まれるとは限らない。例えばタンパク質はより小さい分子のアミノ酸に分解されてから吸収される。
アミノ酸の一種であるアルギニンから細胞内で合成
ポリアミンはどのような仕組みで、どの程度体内に吸収されるのか、長い間研究されてきた。しかし、消化管のなかに入ったスペルミンとスペルミジンについては、ほとんどがそのままの分子の形で細胞内に移行することが報告されており、ポリアミン素材も同様にポリアミン血中濃度を引き上げることに貢献するという。
しかし、プレストシンについては体内で分解酵素が働くために、取り込まれたうちの90%は一旦分解され体内で再合成される。その結果、わずか30%しかポリアミンとして利用されない。
本来、体内で生産されるポリアミンはアミノ酸の一種であるアルギニンから細胞内で合成される。細胞内に取り込まれたアルギニンはオルニチンに変化し、オルニチンは酵素の作用でプトレスシンに変化し、プトレスシンからスペルミジンが合成、さらにスペルミジンからはスペルミンが合成される。
加齢とともに、ポリアミン合成が低下
加齢と共にポリアミン濃度が低下するのは、ポリアミンを合成する体内酵素の活性が低下するためである。高齢者にポリアミンの原料であるアルギニンを多量に経口摂取してもらっても、ポリアミンの合成は亢進しない。最初からスペルミンやスペルミジンが多量に含まれている高ポリアミン食を直接摂取したほうが、血中濃度に明らかな変化があるというのがポリアミンの大きな特徴である。
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