健康食品に関わる新たな課題と取り組み
〜第29回健康食品フォーラム

2013年6月24日(月)、瀬尾ホールで、「第29回健康食品フォーラム」」(主催:財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会)が開催された。健康食品の表示の変更について、関連する2つの基調講演「最近の食品表示行政」「健康被害情報の収集による安全性の確保」が行われた。

最近の食品表示行政について〜健康食品との関わりを中心に
消費者庁食品表示課 食品表示調査官 塩沢 信良

新「食品表示法案」が衆議院本会議で可決成立

いま食品表示制度が大きく変わろうとしているが、塩沢氏は変更の基盤となる「食品表示法案」が一体どのようなものか、そしてそれを基準に「栄養表示制度」と「機能性表示制度」がどのような方向に進もうとしているのかについて解説した。

まず「食品表示法案」だが、これまで食品表示は「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」の3つにまたがって規制されていた。そのため、非常に複雑で事業者や消費者にわかりにくく、トラブルが生じやすいことがかねてから指摘されていた。

この指摘を受け、2009年9月に消費者庁が設立、表示については消費者庁が一元管理し、表示関連法の一元化を目指してきた。そして新たな「食品表示法案」が数年の議論を経て取りまとめられ、先週金曜日(2013年6月21日)に衆議院本会議で可決成立した。

「消費者のため」「事業者への配慮」という概念が明確に盛りまれる

この新たな「食品表示法」では、「食品の安全性」と「消費者の自主的かつ合理的な食品選択」を確保することを最大の目的としている。今回成立した「食品表示法」は全部で23条から成るが、第3条の基本理念が最大の目玉であると塩沢氏。

これは現行の法律にはなかった条文で、この中に「消費者の権利尊重」と「自立支援」が盛り込まれていることは、食品表示法の基本理念が「消費者のため」という立場から成ることを意味している。

しかし、行き過ぎた消費者の権利主張は事業者の権利の阻害にもなりかねない。そのため、同じく3条には「小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響に配慮」や「食品関連事業者の公正な競争の確保に配慮」といった条文も盛り込まれている。いずれにせよ、基本理念に「消費者のため」という概念と「事業者への配慮」という概念が明確に盛り込まれたことに大きな期待が寄せられると塩沢氏。

具体的な表示ルールについては府令レベルで別途策定

またこの法律では、現在は任意制度となっている「栄養表示」について義務化が可能という枠組みとなった。しかし具体的な表示ルールについては法律ではなく府令レベルで別途策定することとしているため、これによりすぐに食品表示がわかりやすく変わるというわけではない。

栄養表示制度の方向性としては、栄養表示の義務化に向けた環境整備として、消費者庁では、
@合理的な推定により得られた値を表示値として記載することができるようにする
A低含有量の食品の場合には誤差の許容範囲を拡大する、などを検討しているという。

いわゆる健康食品についても機能性表示の容認が検討

機能性表示の方向性については、今のところ「栄養機能食品」と「特定保健用食品」以外は機能性表示ができないが、現在「規制改革」の議論が進められており、いわゆる健康食品をはじめとする保健機能を有する成分を含む加工食品及び農林水産物について、機能性表示を容認する方策を検討している。

具体的には各企業が自らの食品の機能性に関わる科学的根拠を十分に評価した上で、その旨や機能を表示できる米国のダイエタリーサプリメント表示制度を参考にし、企業の責任において機能性を表示できるものとすべきだという方向で議論がすすめられている。また栄養機能食品の対象成分の拡大についても検討されている。

消費者庁としては消費者利益につながる立場で諸々の検討を進めているが、今後1〜2年で食品表示が大きく変わることは間違いなく、消費者それぞれが食品表示を深く理解し活用する姿勢がますます重要になるであろうとした。

健康被害情報の収集による安全性の確保
独立行政法人 国立健康・栄養研究所 情報センター長 梅垣 敬三

粗悪品が混在しているのが現状

健康食品の中にはトクホ商品のように安全性や有効性が評価されているものもあれば、有害物質が混入した粗悪製品や、薬品成分を違法に添加した無承認無許可医薬品も混在しているのが現状である。

このような悪質な商品について、これまで行政は製品の摘発や公表を行い、消費者が健康食品の実態を適切に理解できるようにアドバイザリースタッフを介した情報提供などの取り組みを地道に行ってきた。

これらの対応により、国内で流通する健康食品の安全性はある程度は確保できているともいえるが、ネット販売などを中心に健康食品利用による健康被害の報告がなくなったわけではない。

製品摂取と健康被害の因果関係を明確にすることは困難

健康食品による健康被害については、@製品自体が原因になるもの(安全性が十分に検証されていない成分を含むなど)、A利用者や利用方法が原因となるもの(利用者の体質、アレルギー、医薬品との併用、過剰摂取など)の二つに分けられる。

しかし医薬品と違い、健康食品は消費者の自己判断によって利用されることや、いわゆる健康食品については製品の品質がさまざまであることから、製品摂取と健康被害の因果関係を明確にすることが非常に難しい。

しかし健康被害の情報を速やかに収集することが、製品の市販前には想定できなかった問題を明らかにすることや、製品の高い安全性を確保することに役立つ。現在、被害事例が寄せられるのは、保健所そして消費者センターや各企業に寄せられるものがほとんどという。

収集された情報が有効に活用できない

とはいえ、保健所にあがってくる情報数は少なく、重篤な事例以外は公表されない。企業に寄せられるものもすでに企業独自の考え方や目的で収集され報告されるため危害情報の考え方が保健所や消費者センターに寄せられるものと一致しない。

つまり情報の収集方法や、因果関係の判断についての考え方がバラバラで、収集された情報が有効に活用できないという課題があるという。

健康被害に関する個別事例が、健康食品の特性を考慮した客観的な因果関係評価法によって評価され、因果関係の強さで整理できれば、注目すべき事例を明確にすることができる。また、因果関係評価法に適用することを念頭にして個別情報の収集やヒアリングを行えば、質の高い情報収集ができるようになる。

健康食品摂取と体調不良の因果関係評価

また個人的な考え方に左右されないで事例を取り扱うことができれば、異なる組織や機関で収集された情報の整理や統合もしやすくなる。そこで独立行政法人 国立健康・栄養研究所 情報センターでは、健康食品に適した「健康食品摂取と体調不良の因果関係評価」を検討し、情報収集の方法や評価のガイドライン策定を進めてきたという。

つまり因果関係を判断するアルゴリズムを作成し、その情報を分析、整理するというものである。この共通のアルゴリズムを使用することで、健康食品と健康被害の因果関係の評価を行うことはある程度可能だが、実際に使用してみるとまだまだ問題点が浮かび上がってくるという。

例えば、消費者自身が使用していた健康食品の利用状況の記憶が曖昧だと、アルゴリズムによる判定がしにくい。また情報収集している機関や組織をどのように連携させるかということも現在の課題であるという。

健康被害で最も多いのが過剰摂取

健康食品だけでなくすべての食品が、すべての人に安全ということはない。悪質な製品は公表するにせよ、感受性の高い利用者だけに起こる特別な被害や医薬品との相互作用などは、市販前にはどうしても把握できない場合もある。

そのようなケースの報道に対しても消費者は冷静な対応をしなければならない。また健康被害で最も多いのはやはり過剰摂取であるという。

これも消費者側の注意で十分に防げることが多い。しかし健康被害の未然防止に務めたとしても、何か問題が生じた時には、うやむやにせずに国民生活センターや地方自治体、日本医師会などに速やかに届け出ることが大切であるとした。


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