このような悪質な商品について、これまで行政は製品の摘発や公表を行い、消費者が健康食品の実態を適切に理解できるようにアドバイザリースタッフを介した情報提供などの取り組みを地道に行ってきた。
これらの対応により、国内で流通する健康食品の安全性はある程度は確保できているともいえるが、ネット販売などを中心に健康食品利用による健康被害の報告がなくなったわけではない。
製品摂取と健康被害の因果関係を明確にすることは困難
健康食品による健康被害については、@製品自体が原因になるもの(安全性が十分に検証されていない成分を含むなど)、A利用者や利用方法が原因となるもの(利用者の体質、アレルギー、医薬品との併用、過剰摂取など)の二つに分けられる。
しかし医薬品と違い、健康食品は消費者の自己判断によって利用されることや、いわゆる健康食品については製品の品質がさまざまであることから、製品摂取と健康被害の因果関係を明確にすることが非常に難しい。
しかし健康被害の情報を速やかに収集することが、製品の市販前には想定できなかった問題を明らかにすることや、製品の高い安全性を確保することに役立つ。現在、被害事例が寄せられるのは、保健所そして消費者センターや各企業に寄せられるものがほとんどという。
収集された情報が有効に活用できない
とはいえ、保健所にあがってくる情報数は少なく、重篤な事例以外は公表されない。企業に寄せられるものもすでに企業独自の考え方や目的で収集され報告されるため危害情報の考え方が保健所や消費者センターに寄せられるものと一致しない。
つまり情報の収集方法や、因果関係の判断についての考え方がバラバラで、収集された情報が有効に活用できないという課題があるという。
健康被害に関する個別事例が、健康食品の特性を考慮した客観的な因果関係評価法によって評価され、因果関係の強さで整理できれば、注目すべき事例を明確にすることができる。また、因果関係評価法に適用することを念頭にして個別情報の収集やヒアリングを行えば、質の高い情報収集ができるようになる。
健康食品摂取と体調不良の因果関係評価
また個人的な考え方に左右されないで事例を取り扱うことができれば、異なる組織や機関で収集された情報の整理や統合もしやすくなる。そこで独立行政法人 国立健康・栄養研究所 情報センターでは、健康食品に適した「健康食品摂取と体調不良の因果関係評価」を検討し、情報収集の方法や評価のガイドライン策定を進めてきたという。
つまり因果関係を判断するアルゴリズムを作成し、その情報を分析、整理するというものである。この共通のアルゴリズムを使用することで、健康食品と健康被害の因果関係の評価を行うことはある程度可能だが、実際に使用してみるとまだまだ問題点が浮かび上がってくるという。
例えば、消費者自身が使用していた健康食品の利用状況の記憶が曖昧だと、アルゴリズムによる判定がしにくい。また情報収集している機関や組織をどのように連携させるかということも現在の課題であるという。
健康被害で最も多いのが過剰摂取
健康食品だけでなくすべての食品が、すべての人に安全ということはない。悪質な製品は公表するにせよ、感受性の高い利用者だけに起こる特別な被害や医薬品との相互作用などは、市販前にはどうしても把握できない場合もある。
そのようなケースの報道に対しても消費者は冷静な対応をしなければならない。また健康被害で最も多いのはやはり過剰摂取であるという。
これも消費者側の注意で十分に防げることが多い。しかし健康被害の未然防止に務めたとしても、何か問題が生じた時には、うやむやにせずに国民生活センターや地方自治体、日本医師会などに速やかに届け出ることが大切であるとした。