プロポリスの80%がブラジル産
富山大学名誉教授の門田重利氏が「プロポリスの先端技術による生物活性の解明と科学的評価」と題して講演。
プロポリスとはミツバチが巣の保全のために作る粘着性物質で、人類がプロポリスを使用しはじめた歴史は紀元前300年前に遡る。当時は炎症の治療やミイラの保存に用いられていた。近年の研究では、炎症やガン、肝疾患、糖尿病等への有用性が報告されている。
世界はもちろん日本でもプロポリスは健康補助食品として十分認知されている。そして日本に輸入されているプロポリスの80%はブラジル産であるという。
しかしプロポリスはヨーロッパ、南北アメリカ、アジア、アフリカなどさまざまな地域で生産されており、各プロポリスが採取される風土の違いやミツバチが餌にしている基源植物の違いなどでプロポリスの成分構成にも違いがあることがわかっていると門田氏。
従って、プロポリスの健康補助食品としての地位をより確実なものとするため、異なるプロポリスを化学的に比較評価することは非常に重要であり、門田氏らの研究チームはそうした分析や研究を行ってきたという。
例えばブラジルのプロポリス採取の現場では経験的に等級判別を行ってきた。採取時の色調については茶褐色より濃緑色のほうがグレードが高い。香りも少ないものより強いもののほうがグレードが高い。時期は秋・冬より春・夏のほうが良く、採取地域についても経験的な地区のもののほうが評価が高いという。
ミセル化抽出、アルコールや水で抽出される成分がほぼ検出
しかし実際これらを化学的に分析するとどうか。さらにグレードの異なるプロポリスエキス(抽出物)からどのような活性の違いがみられるのか。門田氏らは各等級のプロポリスエキスをメタノールと水という2種類の抽出方法で比較分析した結果を報告。
等級の異なる6つのブラジル産プロポリス、さらに2種の異なる抽出法によるプロポリスで、「細胞増殖阻害活性の有無」「DPPHラジカル消去活性の有無」「肝保護活性」を評価測定した結果、「肝臓保護活性」が等級の評価に最も適した活性試験であることを突き止めたという。
また、プロポリスの抽出法については、主なもので、アルコール、水、ミセル化とあるが、水抽出ではアルコールで抽出される成分が非常に少ないが、ミセル化抽出の場合、アルコールや水で抽出される成分がほぼ検出されることが分かったという。
またブラジル産プロポリスの中に含まれる41種類の抽出物のうち8種類の物質が肝保護活性に寄与する成分であることが明らかになった。さらに、経験的に等級が高いとされているプロポリスのほうにこれらの成分の含有量が多いことも明らかになった。
しかし採取される地域が異なると、プロポリスに含まれる物質も異なる。ブラジル産プロポリスで見つかった8種類の抽出物について、中国産やオランダ産プロポリスからは同定することができなかったという。
いずれにせよプロポリスの等級の判別や産地の特定は門田氏らにより、LC-MS分析で科学的に行うことができるようになった。採取地の異なるプロポリスに含まれる成分が異なる理由としては、やはりミツバチの餌となる基源植物が異なることが大きく、この植物の分析も重要であるとした。
プロポリスは非常に複雑な混合物であり、門田氏らのチームが単離同定した化合物だけでも50種類以上あるという。門田氏らの発表した学術論文は世界各国で引用されているが、さらなるプロポリス研究で新たな発見が期待されている。
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