「肥満」は死亡リスクを高める
肥満については医学的にはBMI値(身長からみた体重の割合)で判定される。一般的にBMI22が標準とされ、18.5未満が痩せ、25以上が肥満とされる。
1997年以降、20〜60代男性の肥満の割合は右肩上がりで増加、メタボリックシンドロームという言葉とともに、とくに中高年男性の肥満が社会問題となった。その一方で女性は男性と異なり、40〜60代の女性の肥満の割合は1997年以降ほぼ横這い。とくに20代の女性では、2009年以降急激に「痩せ」の割合が増加している。
コホート研究とは、ある特定の要因の影響を受けている集団と、受けていない集団とを一定期間追跡し、研究対象となる疾病やリスクの発生率を比較するもので、健康や長寿に関しても「肥満である人」「肥満でない人」など分類し、数10年追跡した研究データがあると、玉腰氏はデータを紹介。
例えば、全死因のリスクは、「肥満である人」「肥満でない人」と比べてどれくらい高いのか。平均10年以上の追跡研究によると、男性の場合はBMI値が30以上になると死亡リスクは1.36倍になり、女性の場合も1.37倍になることが示されているという。つまり「肥満」は死亡リスクを高めるということだ。
肥満は「運動習慣の有無」よりも「生活習慣」が大きく関わる
しかしこのコホート研究から明らかになったことは「痩せ過ぎ」にも問題があるということ。BMI値が18以下になると死亡リスクは男性で1.78倍、女性で1.61倍にもなり、この数値は「肥満」よりも「痩せ」のほうが問題であることを示している。もちろんこのデータはタバコの影響や病気による体重減少の影響は差し引かれたものである。
運動については、1日の運動時間が30分未満だと、虚血性心疾患に陥るリスクが1.3倍以上に、脳梗塞のリスクが1.2倍になることが示されている。しかし「肥満」になるかどうかは、運動時間だけが関係しているわけではなく「生活習慣」によるところも大きいという。
とくに「食べるスピード」と「食べる量」が非常に重要で、「早食いで毎食満腹まで食べる」集団と「ゆっくり食べて毎食お腹一杯までは食べない(腹八分目程度)」集団を比較したところ、「早食いで毎食満腹まで食べる」集団は、肥満になるリスクが男女ともに3.2倍以上高くなることが明らかになったという。
つまり肥満になるかどうかは「運動習慣の有無」よりも「食べ方」を中心とした「生活習慣」が大きく関わっているのではないかと玉腰氏は指摘。
肥満が死亡リスクを高めることに間違いはないが、すべての人がそうした情報だけを鵜呑みにして不要なダイエットに励む必要はないともいう。
65歳以降、肥満は死亡リスクとしては大きな影響はない
肥満の死亡リスクを年齢別に分析すると、65歳以降で「肥満は死亡リスクとしては大きな影響はない」こともコホート研究から分かっているという。
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