食肉増産のシナリオが早急に必要
21世紀の人類が抱える共通の問題として、環境保全、途上国を中心とした人口の爆発的な増加、そして飢餓と貧困、感染症の統御、食糧の安定供給が挙げられる。
現在のペースで人口が増加すれば、2025年の世界の総人口は80億人を突破すると予測されるが、それは同時に家畜革命の必要性を意味する。
2008年、この年は世界で210億頭の家畜が飼育、60億人の人口を養った。2020年には、途上国で必要な動物性たんぱく質は現在の1.5倍となる。
食肉増産のシナリオが早急に必要だが、目途は立っていない。かろうじて考案されている施策としては、飼料効率の良い家畜への移行(一般的に好まれる牛→豚→鶏から鶏→豚→牛への移行)、飼育環境の改善による生産性向上、感染症の統御などがあるという。
とくに家畜の感染症を統御で生産量は2〜3割増になると推測されている。しかし、感染症の統御や撲滅はもはや一国の問題ではない。グローバル化が進む中、世界は相互依存を強めているため、一国のミス(感染症の発生)は世界の食糧危機になり得ることを肝に銘じなければならないという。
ちなみに、2011年は、養殖魚の生産量が牛肉生産量を突破し、2013年はおそらく、補食魚よりも養殖魚を多く食べる最初の年になるという。
食糧不足への危機感が薄い
21世紀の課題を解決するためには「世界は一つ、健康は一つ」という考えを基本にすることが重要である。どこか一つの地域が汚染されれば世界が汚染され、自然の健康が動物の健康や人間の健康につながる。
これらの問題解決には専門分野を超え、総合的そして国際的にアプローチしていくことが必須である。この考え方のもとにFAO(世界農業食糧機関)、OIE(世界動物保健機関)、WHO(世界保健機構)、WB(世界銀行)、UNICEF(ユニセフ)などで協力体制をとっている。
今や食には3つの要素が求められている。「食の安定供給」「食の安全」「食の防衛」である。しかし日本の食の現状はこの最初の段階で揺らいでいる。食糧自給率は40%以下で、今後も低下が予測される。
人口の減少、地方都市の過疎化、第一次産品の生産量の大幅な減少は深刻で、日本のメディアや消費者は食の第2段階の「食の安全」ばかり議論をしており、そもそも「食べ物がなくなる」ことへの危機感が薄い。
食品にゼロリスクを求める消費者
第2段階の「食の安全」には問題が山積している。消費者の安全性と科学的評価の間には大きな落差があり「ゼロリスクは有り得ない」ことについて消費者からは中々理解が得られない。
BSE問題や偽装表示など、食中毒や食品汚染の問題が生じると、日本では安全神話がすぐに崩壊し、行政、生産者、流通、そして科学者にまで不信が及ぶ。さらにメディアが不安を煽り、過剰対応のパフォーマンスが求められ、根本的な解決を見ないまま騒ぎが収束してしまう。
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