抗酸化成分の有用性と魚食の奨め
〜「ダイエット&ビューティー2013」セミナー

2013年9月11日(水)、東京ビッグサイトで「ダイエット&ビューティー」が開催された。同展示会のセミナーから矢澤 一良氏(東京海洋大学 特任教授)の「食べたものは私をつくる」と題した講演内容を紹介する。


「肥満」がロコモティブシンドロームを招く

私たちの体は頭の先から足の先まで「食べたもの」で作られ、それ以外のものでは作られない。つまり自己責任によって体は作られる。高齢化社会が進み、医療費が高騰し続ける中、私たち日本人は健康維持のために「食」の管理、何よりも「肥満の予防」「脳の活性」「良い環境での生活」を心がける必要があると矢澤氏はいう。

すでに「肥満」はさまざまな病気の温床になることが明らかになっている。とくにウエスト周辺に脂肪が溜まる「内蔵型肥満」は脂肪細胞から悪質なタンパク質が分泌され、そのタンパク質が糖尿病をはじめとするさまざまな生活習慣病を引き起こす原因となる。

一般的に女性に多い皮下脂肪型肥満では、太りすぎることで体重が支えられなくなり、膝を中心とした骨格に支障をきたし「ロコモティブシンドローム」となる。そうなると、歩行困難が生じ、運動不足になり、最終的には呼吸器系のトラブル、あるいは内蔵型肥満へと繋がる。

内蔵型肥満も皮下脂肪型肥満も最終的には糖尿病由来の腎臓病や血管系の疾患によって命を落とすことになる。どのようなタイプの肥満でも死亡リスクを高めることを熟知し、歳だからと肥満を放置せず、適正体重を維持することが大切、と矢澤氏は指摘する。

若いうちから脳を積極的に活性化する日常生活を習慣付ける

また、加齢とともに「脳」の健康維持も非常に重要である。35歳を過ぎると全ての人の脳細胞が毎日減少する。記憶力の低下や物忘れが増えると病気というわけではないが、明らかに記憶が欠落したり、生活にトラブルが頻繁に生じるようだと、脳に必要以上の萎縮が起こっている可能性が高い。

とはいえ、脳機能の低下を完全にリカバーする薬が存在しない以上、脳機能の低下が始まる前の若いうちから、脳を積極的に活性するよう日常生活を習慣付け、脳機能の低下を自らの意志で遅らせる生活を送ることが必要となる。

「ストレス」で日本経済は3兆円以上の損失

1998年の厚生労働省の調査によると、日本人の59%が「疲れている」と訴え、「ストレス」の問題が頻繁に取り上げられるようになった。しかもその問題は拡大する一方で、2008年の再調査では70%が「疲れている」と訴えたという。つまり、ほとんどの日本人は「疲れ」や「過度なストレス」を抱え、それが解消されないまま過ごしている。

疲れやストレスそのものは直接的な死因にはなりにくいが、それらが原因となって複雑な免疫疾患や、アレルギー、うつ病や自律神経失調症などの疾病を引き起こす。

物質的に豊かであってもメンタル面での豊かさが不足すれば、病気になるだけでなく自殺の原因にもなりかねない。いずれにせよ「疲れ」や「ストレス」によって日本の経済は3兆円以上の損失が出ているという統計もあるという。

第7の栄養素「ファイトケミカル」を積極的に摂る

「肥満になりやすい環境」「脳機能の低下」「ストレスフルな環境での生活」というのは日本人の誰もが抱えている共通の問題ともいえるが、これらは体内で過剰な「活性酸素」を生み出す。活性酸素は細胞を傷つけ、病気や老化の直接的な原因になる、いわば体の「錆(さび)」である。

この活性酸素の悪影響を少しでも減らすために、私たちにできる唯一の対策が「抗酸化成分」を積極的に補うことである。抗酸化成分とはファイトケミカルとも言われ、第7の栄養素として脚光を浴びている。

主な栄養素には、体を作る3大栄養素「タンパク質、糖質、脂質」と、体の調整機能の役割を果たす「ビタミン、ミネラル」を合わせた5大栄養素がある。さらに腸の機能を活性する「食物繊維」が第6の栄養素として注目を浴びて久しいが、現代人は過度なストレスにさらされているため第7の栄養素であるファイトケミカルを積極的に補わなければ生き残ることができないといっても過言ではないと矢澤氏は指摘する。

「エビデンス」「メカニズム」「安全性」の3拍子揃ったヘルスフードは多くはない

ファイトケミカルは主に野菜や果物、あるいは魚介類や海藻類などに含まれる栄養素以外の機能性成分だが、活性酸素除去作用や白血球を活性し免疫を高めるなど、その機能性の高さに世界中の研究者が注目を寄せている。ファイトケミカルを豊富に含む食品は「体の機能を整えるヘルスフード」「脳の機能を整えるブレインフード」「心の健康を整えるムードフード」と称され、研究開発が盛んに行われている。

しかしながら、ヘルスフードと認められるまでハードルは高く容易ではない。莫大なコストをかけた「科学的エビデンス」が必要で、同時になぜその食品(食材)が「ヘルシー」なのか、消化吸収のメカニズムも解明されなければならない。もちろん食品である以上「安全性」は絶対に担保されなければならない。従って「エビデンス」「メカニズム」「安全性」の3つが揃ったヘルスフードはまだそれほど多いとはいえない。

魚の摂食、肥満予防効果や「ブレインフード」としても注目

日本人の食卓から魚が消えつつあるといわれるが、魚は「ヘルスフード」で、例えば、週5日の魚食で心臓病や心疾患のリスクが減ることや、アルツハイマーを含む認知症全体のリスクが低下することが世界各国の疫学データから明らかとなっている。魚は「肥満予防効果」だけでなく、「ブレインフード」としても注目が集まっている。

DHAは認知症のリスクを低下するといわれているが、魚を食べる子どもは食べない子どもより知能が高い傾向にあるというデータも出ている。また、粉ミルクにはDHAが含まれないが、母乳にはDHAが含まれており、粉ミルクより母乳で育てた子どものほうが知能指数が高いというデータも出ているという。

魚や海藻海類に、「マリンビタミン」と称される機能成分

日本人にとって長い食習慣のある魚や海藻海類といった海由来の食材からは、DHAだけでなくスクワラン、グルコサミン、アスタキサンチンなどさまざまな「マリンビタミン」と称される機能成分やファイトケミカルが見つかっている。

私たちの体は「食べるもの」から作られている。そして「食べたもの」をしっかり機能させるために「運動」と「休養」が同じレベルで大切になってくる。老化現象だから病気になっても仕方がないと諦める必要はない。

今や私たちは年齢に関わらず、自分の体を自分でコントロールできる時代になっている。健康とは努力して勝ち取るものであることを理解して欲しいと矢澤氏は結んだ。


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