食品の安全、「食品表示」の進捗状況
〜食品表示を考える意見交換会

2013年9月26日(木)、ベルサール半蔵門で、食品表示を考える意見交換会「食品の安全と食品表示」が開催された。この中から、池戸重信氏(宮城県産業技術総合センター副所長)の「食品表示の一元化に至る議論の経過と残された課題」、平山潤一郎氏(消費者庁食品表示企画課企画官)の「食品表示法について」の2講演の内容を取り上げる。


消費者庁主導で、食品表示一元化へ

池戸氏は、食品表示の概要とこれまでの流れを次のように解説した。
食品表示は主に「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」の3つでカバーされている。昭和45年に「品質表示基準制度」が創設され「原材料・内容量・原産国・製造年月日・保存法・製造者」等が明記されるよう義務づけられた。以後、表示制度に大きな動きはなかった。

平成に入り、添加物の議論と表示の義務化が始まり、以降は急速に表示に関連する法律が増加し複雑化の一途を辿った。管轄も農林水産省、厚生労働省等へと分かれていった。

4年前に消費者庁が立ち上がり、表示に関しては消費者庁が主導し「食品表示一元化」が押し進められるようになった。消費者庁成立以前の食品表示については、「食品衛生法」「健康増進法」は厚労省、「JAS法」は農水省の担当で連携がスムーズとはいえなかった。

消費者が商品を選ぶ際に役立つ食品表示を

消費者庁設立後は「食品衛生法」「JAS法」「健康増進法」の表示規制にかかる事務作業を同庁が一元的に掌握、表示基準等の企画立案も行い、執行業務に関しては関係省庁と連携して実施するという方向で進められている。

2011年度の9月より第1回「食品表示一元化検討会」が開催、2012年8月の第12回で検討会が終了し、「消費者が実際に商品を選ぶ際に役立つ食品表示を目指す」ことを中心に意見がとりまとめられた。

「原産国や製造国」を気にする消費者

消費者は現行の食品表示についてどのような印象を持っているのか。平成23年の12月に消費者庁が行ったWEB調査(男女各1000人が対象)の結果によると、購入時に見る表示は「価格」「賞味期限」「商品名」「一括表示」との答えが圧倒的に多く、トクホマークやJASマークといった認証マークや栄養成分の強調表示(カロリーゼロ、レモン○個分のビタミンCなど)については、それほど浸透していないことが明らかとなっている。

購入の際に参考とする表示については「原産国や製造国」「原材料の原産地名」を見るという回答も比較的多った。しかし、多くの人が食品表示について、「文字が小さいくわかりにくい」と回答しており、文字の大きさと情報量のバランスをどのように保つかが表示の鍵となりそうである。

アレルギー物質に関する情報提示が重要

一元化される新たな食品表示については「情報の重要性の整序」が最も重要となる。現在、表示事項のすべてを見ている消費者は必ずしも多くない。より重要な情報が確実に消費者に伝わるよう検討することが重視されている。

文字サイズについても原則より大きな表示にすることが検討されているが、そのためには一括表示の内容を精査して緩和する必要が生じる。特にアレルギー表示については重要だが、一般食品だけでなく、中食や外食の現場においてもアレルギー物質に関する情報提示をする重要性が別途検討されはじめている。

包装されている全ての加工食品を対象に義務化

またインターネットによる食品販売も普及しているが、これには別途専門家を交えた検討が必要とされている。また自動販売機については大きな問題がないため、現行制度の枠組みを維持することなどが確認されている。

新たな栄養表示制度の枠組みについては現状次のようにまとめられている。対象食品は「あらかじめ包装された全ての加工食品を対象に義務化する」。対象事業者は、「原則全ての事業者が対象」。対象とする栄養成分については、「現状の環境整備を行いつつ施行までに決定する」。

環境整備が重要

この新制度を今後義務化していくために、環境整備が非常に重要となる。事業所への働きかけだけでなく、消費者への普及啓発の推進や環境作り、また栄養表示が行えるようにするためのデータベースの作成なども必要である。現状では器ができたにすぎず、中身はこれからで、今後5年で食品表示について大きな変化があることは明らかである。

食品表示法が改善されても、消費者が学ばなければ新しい制度の有効活用は難しい。食品表示とは新たな栄養政策でもあり、国民の健康維持増進に役立つようなものでなければならない。新制度で表示がわかりやすくなったとしても、それが活かされなければ意味がない。この表示の本質を国民が同じレベルで理解することが大切であると強調した。

栄養表示義務化に関する検討はこれから

消費者庁の平山氏からは、新たな食品表示法に向けてのタイムスケジュールの解説が行われた。現在、新たな食品表示法については昨年検討会のとりまとめを終え、法案が作成提出。国会に提出された法案が2013年8月の国会で成立したばかりである。器ができただけの状態であり、実際表示基準案を作成し、栄養表示義務化に関する検討はこれからと平山氏は強調。

いずれにせよ法律が公布の日から起算して2年を超えない範囲内で新食品表示法は施行されなければならない。また、栄養表示義務化については5年以内に大きな変化が起こるであろうから、関係者各位の協力が重要であると要請した。

消費者庁としても法の整備や環境整備だけでなく、消費者教育なども含めてよりよい食品表示法が導入できるように全ての事業関係者だけでなく消費者にも協力を要請していくことも検討しているという。

表示制度の一元化のメリット

表示制度の一元化のメリットについては大きく4つあるという。1つ目が「整合性の取れた表示基準を制定」。2つ目が「消費者、事業者双方にとって分かりやすい表示」。3つ目が「消費者の日々の栄養・食生活管理による健康増進に寄与」。そして4つ目が「効果的かつ効率的な法執行」。  

一元化にあたり最も重要なコンセプトは「食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保する」こと。より重要な情報がより確実に消費者に伝わることが最大の目的で、表示制度が複雑である、わかりにくい、トラブルが多いといった声を解消するべく、急ピッチで新表示制度の確立を押し進めたいとした。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.