目の健康にクロセチン、優れた網膜保護作用〜「食品開発展2013」セミナー
2013年10月9日〜11日、東京ビッグサイトで、「食品開発展2013」が開催された。同展示会のセミナーから理研ビタミン鰍フ「目の健康にはクロセチン!〜優れた網膜保護作用について」と題した講演内容を紹介する。


水や油に馴染みやすい

クロセチンは、クチナシの果実やサフランのおしべに含まれる色素成分(カロテノイド)で、人の体内では合成できない。クロセチンは天然の着色料として世界中で永く利用され、東洋では生薬として古い歴史がある。

カロテノイドではベータカロテンがよく知られるが、分子が大きく親油性で、油分に溶けるが水には溶けないという難点がある。しかしクロセチンは分子が非常に小さく、親水基を持つため、水や油に馴染み(水に溶かすには一定の条件が必要となる)、添加物として利用しやすい。

眼精疲労改善で注目

クロセチンには、紫外線からの皮膚保護、美白作用、眠りの質の改善などの機能性が認められている。なかでも近年注目されているのが眼性疲労改善効果である。

  日本では近年、緑内障や加齢黄斑変性症、糖尿病由来の網膜症が急増している。いずれも網膜の疾患だが、網膜疾患の危険因子は複数あり、原因を特定することが難しいとされている。

網膜疾患の危険因子とは、加齢、強い光、酸化ストレス、炎症、高眼圧、グルタミン酸毒性、血管新生、高血糖、低酸素・虚血などである。どれか一つが原因というより、複数が重なり発症するケースが多い。そのため、網膜疾患を解消するには、複数の危険因子に同時にアプローチできる機能を有した成分が効果的と考えられている。

1.5時間で速やかに眼球に分布

クロセチンの網膜保護に関する研究が複数のアプローチから行われている。クロセチンは経口摂取すると血管に取り込まれ、わずか1.5時間で速やかに眼球に分布することが分かっている。  

24時間を境にその量が減少していくため、一日に1回程度の継続した摂取で、常に眼球にクロセチンを分布させておくことが可能である。

マウス実験で、強い光をマウスの眼球に照射し、網膜視細胞を障害状態にさせ加齢黄斑変性を起こさせ、そのマウスがクロセチンを経口投与した場合、どのような変化が起きるか観察した。結果、網膜の顆粒層という部位のアポトーシス(細胞の死)を抑制し、網膜機能の低下を抑制することが確認できた。これにより、クロセチンに視細胞保護の働きがあることが結論づけられた。

網膜機能の低下を抑制

また、緑内障は眼圧により視神経が慢性的に圧迫されることから生じるが、日本人は眼圧が正常範囲にもかかわらず緑内障になるケースが多い。これには、グルタミン酸毒性の関与が以前より指摘されている。

マウス実験で、視神経に障害を与えたマウスにクロセチンを経口投与させると、視神経の細胞数の減少が低下し、網膜機能の低下抑制が認められた。これによりクロセチンは加齢黄斑変性のような視細胞の症状にも、緑内障のような視神経の症状にも優位な効果を発揮することが明らかとなった。

  目の健康の機能性成分ではルテインがよく知られるが、クロセチンとルテインの併用により抗酸化力が高まり、相乗効果が示される。スマートフォンやタブレットの急速な普及により、今後目の病気や疲労を訴える人はますます増加すると予測される。クロセチンは目の健康をサポートするだけでなく、睡眠の質を高める効果があるため、現代人には必須の機能性成分となりそうだ。


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