PM2.5、高濃度曝露による身体影響についての研究はほとんどない
PM2.5が注目されたのは、これまで健康への影響が認められないと想定されていた濃度よりも、低い濃度で影響が見られるという米国での20年に及ぶ疫学研究の結果が明らかとなったことがきっかけだった。
しかし高濃度のPM2.5に曝露された場合の影響については知見や研究がほとんどない。今後中国でどのような健康被害が報告されるかに注目が集まっていると新田氏。
PM2.5に限らず、大気汚染が健康にどのような影響を与えているか調べるには疫学研究に頼るしかない。もちろん世界中で何百という疫学研究データがストックされている。
それらの調査結果から、大気汚染によって呼吸器症状や呼吸機能の変化、心臓・循環器の機能変化、医療機関への受診・入院数・外来受診の増加や変化、呼吸器系・循環器系疾患による死亡者数の増加、肺がんの増加、胎児・小児への影響が起こることが分かっている。
またこれらの疫学調査からPM2.5の健康リスクについて考えると、以下のような場合は心配するレベルであると新田氏は解説。
・長期的に環境基準(年平均値15μg/m3以下)をかなり超えるような状態が何年も続いた場合で、しかも健康に影響が大きい成分が減らないことが続く場合。
・短期的に環境基準(日平均値35μg/m3以下)の何倍(とりあえずの目安は70μg/m3)にもなるような濃度が何日も続く場合。
・呼吸器や循環器などの病気がある人は、健康な人よりも影響が強く現れたり、より低い濃度でも影響が現れる場合があるので注意が必要。
マスクなどで曝露の低減が期待
PM2.5による健康被害を低減するために個人としてできることは、マスクなどで曝露の低減が期待されるが、マスクや衣類による具体的な健康への影響防止効果についても実は検証されていないという。
子どもや病人など感受性が高いと考えられる人は、大気汚染レベルの正確な情報を把握した上で、適切な管理を行うことが求められるが、個人が経済的に負担を伴うような(引越など)曝露低減策を講じなければならないという状況ではない、それよりもタバコの健康被害や非喫煙者でも分煙されていない場所での汚染濃度を気にする方がよいと新田氏は解説した。