健康食品の正しい使い方
〜日本臨床栄養協会主催:市民公開講座

2013年12月15日(日)、東京海洋大学で、一般社団法人日本臨床栄養協会主催の『第二回市民公開講座』が開催された。「高齢者のいきいき生活のために」をテーマに、独立行政法人国立健康・栄養研究所 情報センター長 梅垣 敬三氏が、多くの高齢者が利用している健康食品の正しい利用法について解説した。


消費者の50%が健康食品の有効性を期待

「健康食品とは薬ではなく、食品である」という当たり前のことが周知されているようでされていないと梅垣氏。しかし健康食品は本当に食品なのか?と問われれば、梅垣氏もただ頷くことはできないという。

というのも、食品とは美味しくて安全なものを指すからだ。健康食品のなかでも特に錠剤・カプセルのものに美味しさはなく、安全性についても確かではないものが含まれている。こういったことから、健康食品とは一体どういうものなのか、どのように利用すべきなのかを消費者一人ひとりに今一度考えてほしいという。

厚生労働省の調査によると、健康食品を利用する消費者の50%はその商品に有効性や効き目を期待しているという。またその機能性をわかりやすく表示してほしいという声も多く、現在その方向に向かった動きもある。

食品に機能の表示は行き過ぎていないか

しかし梅垣氏はこの消費者の意見にこそ問題があると指摘。もし目に見えるような効果や効き目があればそれは医薬品であり、消費者が個人の判断で購入して使えるものではない。

つまり健康食品に有効性や効き目に期待すること自体間違っていると解説する。機能性表示についても同様である。そもそも食品に機能を表示することは行き過ぎていないか?健康食品は医薬品ではないということを強調してもし過ぎることはないと繰り返した。

なぜこれほど健康食品の使用方法や表示に注意を促さなければいけないのか。それは医者ではない人が食品に病気の予防や改善効果を記載することで消費者の多くが適切に治療をする機会を失うからだと訴える。

生活習慣の改善に繋がるような利用が大切

例えば「鉄」という成分は貧血に効果があるということは一般的に知られている。だからといって鉄の健康食品だけを摂取していればいいのか?貧血には鉄不足が原因のものだけでなく、腎臓が原因になっている場合も少なくない。

他にも、鉄だけを摂取していても貧血の症状が改善されず、根本の原因が悪化して治療が遅れた場合、一体誰が責任を取るのか?そういった意味からも健康食品を疾病の改善だけでなく予防目的で使うことはとても危険だと訴えた。

では正しい使い方とはどういうものなのか?それは健康食品を利用することで生活習慣の改善に繋がるような利用をすることだと梅垣氏はいう。

例えば、ビタミン類のサプリメントを摂るのであれば同時に運動もするように心がけるとか、機能性のお茶を飲むのだから野菜を多目に摂取するように心がけるとか、健康食品を利用することで乱れがちな食生活の改善を図ることが大切だと梅垣氏。

トクホ商品の中には血圧や中性脂肪に働きかける機能が記載された商品も少なくないが、それだけを使って健康になれるわけではない。あくまでもその食品を摂取することで足りていない栄養を補給する、食生活や生活習慣の改善のきっかけに使うべきであると強調する。

機能性表記、消費者は製品に「期待」を寄せ過剰に摂取しがち

健康食品の中には違法な物や劣悪な物も存在している。栄養機能食品についても十分なチェックはなされていない。

しかし製品の善し悪しよりも消費者がどう使うかが最も大切で、例えばヨーグルトにはトクホヨーグルト、機能性ヨーグルト、普通のヨーグルトと3種類あるが、これを消費者がきちんと選べるようにすることが大事だと梅垣氏。体調になんの不安も問題もない人が無理に高価な機能性ヨーグルトを食べる必要はない。普通のヨーグルトでも美味しくて安全なものはたくさんある。

トクホヨーグルト、機能性ヨーグルトだからといって、これに効果を期待しすぎて食べ過ぎた結果、体重が増加した、お腹の調子が悪くなったというケースも少なくないという。

もちろん普通のヨーグルトも食べ過ぎれば同じようなデメリットが生じるが、それが起こりにくいのは「期待」が少ないからだ。機能性を表記するとどうしても消費者は製品に「期待」を寄せ過剰に摂取しがちだ。食品なのだからとにかく「美味しい」と「安全」を優先すべきだという。

医薬品との相互作用の問題も

もちろん優れた健康食品や機能性食品もある。科学的根拠が出そろっている製品もある。しかし例えそうであっても、消費者が安全で効果的に利用できる環境はまだ整備されていない。仮に有害な影響が出た時に、健康食品が原因であるかどうかさえ判断しにくい。健康食品の問題で近年多く指摘されるのが医薬品との相互作用の問題である。

多くの高齢者が何らかの医薬品を日常的に摂取しているが、医薬品と健康食品の相互作用、つまり医薬品が効かなくなってしまったり、効き過ぎてしまうことについては、ほとんどわかっていない。医薬品と違い健康食品は複数の成分から複雑に製造されていて、しかもそれがメーカーごとに異なるため、相互作用について研究することは非常に難しいという。

あくまで補完が目的

また医薬品と違い、自己判断で利用されている健康食品の健康被害の実態はよくわかっていない。健康食品に対するクレームのうち、健康被害を訴えるケースは実はそれほど多くなく、効果がなかったというクレームのほうが多い。これはやはり表示があるからであろう。一般の食品を食べても美味しく安全であれば文句はだれもいわない。

しかし、錠剤カプセルのもの、つまり美味しさを除外されたものを摂取して何も起こらなければ文句をいいたくなる人がいても不思議ではない。あくまで補完が目的であるということを消費者はきちんと理解して利用すべきという。

食品の機能性については情報が常に変化している。消費者は中立的な情報を得られるよう努力し、商品を選ぶ際にはGMPマークなども判断材料にしてほしいとい梅垣氏。わからなければアドバイザリースタッフや医師に相談し、健康食品の乱用、薬との併用なども避けるべきだと訴える。また効果的に利用するために、利用記録をとることが大切とした。


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