マウスの研究からわかってきたことは、脳内のドーパミン経路は乳幼児期にものすごい勢いで発達するが、幼児期にビオプテリンが少ないとドーパミン経路がうまく発達しないと一瀬氏。
しかしマウスの場合、乳幼児期にビオプテリンを投与することでドーパミン経路は通常レベルまで発達させることができ、逆に離乳後のマウスではビオプテリンを投与してもドーパミン経路は回復しないことがわかったという。
他にも、ビオプテリンには血管拡張、細胞性免疫、神経伝達、血管形成、アポートーシス誘導などの働きに関与していることがわかってきたという。しかしビオプテリンを積極的に摂取すればいいのかというと、まだそのあたりは解明されておらず、ただ「有効ではないか」という仮定で研究がすすめられている段階だと一瀬氏。今後は薬としての可能性も模索されていくであろうとした。
老化が起こるメカニズム、「遺伝子説」と「エラー説」
小城氏は、「老化、酸化ストレス、ビタミン」と題して講演。老化が起こるメカニズムには多くの仮説があり、70くらいのメカニズムが解明されている。大きく分けると「遺伝子がすべてを決定している」という「遺伝子説」と「細胞のエラーが蓄積して老化が起こる」という「エラー説」の2つに分類できるという。
「遺伝子説」は簡単にいうと、どんな人間も120歳くらいまでしか生きられないように遺伝子がプログラムされているというもの。「エラー説」は細胞の酸化や突然変異が徐々に蓄積され最終的に破綻するというものである。
動物の種類によって寿命はある程度決まっているため、遺伝子が寿命や老化に関係していることは明らかである。その一方で、一卵性の双子でも生活習慣が異なると、寿命や老化現象に大きな差が現れることから、エラーも関与しているといえるだろうと小城氏はいう。
酸化ストレス、ガンや動脈硬化に関与
この細胞のエラーを引き起こす原因が「酸化ストレス」であることもよく知られている。酸素は私たちの生命維持に必須である一方で、酸素を取り込んで体内でエネルギーを生産する時に、1%ほどの割合で活性酸素と呼ばれる毒性の非常に強い物質を作り出し、生体の分子と反応して細胞に損傷を与え、それが蓄積することで病気や老化が引き起こされる。
この酸化ストレスが関与する病気としてガン、動脈硬化、糖尿病の合併症、アルツハイマー型認知症などが代表的なものとして知られている。しかし人の体は、活性酸素に対抗するメカニズムもしっかり備えている。それがビタミンC、E、ナイアシン、グルタチオン、酸化ストレス感知システム、抗酸化酵素などであると小城氏。
こうした成分を積極的に取り込むことで体を酸化ストレスから守ることができるが、健康食品やアンチエイジングを目的とした食品の中にもビタミン類やファイトケミカル、あるいはポリフェノールと呼ばれる成分が含まれている。
私たちの体は生命維持のために酸素を絶対的に必要とする。その一方で活性酸素を発生させ、死を準備するというメカニズムが備わっているのではないかとした。