黒酢研究会設立、黒酢の機能性研究推進
〜日本黒酢研究会 第1回学術研究会

2014年1月24日(金)、東京海洋大学品川キャンパスで、「日本黒酢研究会 第一回学術研究会」が開催された。第一回目となる今回の学術研究会では8名の研究者による最新の黒酢研究に関する報告が行われた。ここでは鹿児島大学農学部 候 徳興氏による「黒酢の免疫賦活作用および黒酢もろみ末の高血糖抑制効果」について取り上げる。


黒酢の機能性研究を進めるため黒酢研究会を設立

和食が世界的にも注目を集めている。中でも黒酢は約200年もの間、健康食材として伝承され、現在は調味料としてだけでなく、飲料やサプリメント、トクホ商品としても広く普及し人気を集めている。

今日までにさまざまな研究者により生体に対する黒酢の機能性が報告されており、いくつかの機能解明がなされてきた。しかし、科学的エビデンスに基づく基礎研究や臨床研究、開発研究は未だ十分とはいえない。黒酢の機能性研究・科学的研究を進めることは、人々の健康を守るために必要不可欠であると考えられ、黒酢研究会が昨年設立された。

抗アレルギー作用、血清コレステロール低下作用など

鹿児島県霧島市福山町で伝統的に造られている食酢が黒酢である。原料は蒸し米・米麹・地下水のみで、これらをひとつの陶器の壷に入れて醸造される。壷のなかでは原料が混ざり合うことで、糖化・アルコール醗酵・酢酸醗酵といった過程が順次進行し、原料の熟成が進んでいく。

この熟成した上澄みの部分が黒酢であり、壷の底に残る不溶性醗酵残渣は「黒酢もろみ」。この「黒酢もろみ」を乾燥させて粉末化したものが「黒酢もろみ末」である。

黒酢の機能性としては、脂質代謝改善作用・高血圧抑制作用・糖代謝改善作用・肝機能改善作用などこれまでにも多くの効果が報告されている。

また近年は黒酢もろみ末の方にもいくつかの有効性が認められており、特に抗アレルギー作用・血清コレステロール低下作用・抗腫瘍作用などが動物実験や臨床実験でも報告されてきていると候氏は解説。

マウス実験で、NK細胞の活性が有意に増加

候氏のグループは、黒酢の機能性研究の一環として、黒酢の免疫賦活作用及び黒酢もろみ末の高血糖抑制効果について検討を行ったことを報告。この検討はマウスで行われたものであるが次のようなものであったと解説した。

はじめに正常マウスに黒酢を摂取させ、そのNK細胞活性を測定し、さらに黒酢を分画して得た構成成分を腫瘍を移植したマウスに摂取させ、免疫賦活作用および抗腫瘍作用にどのような変化が起こるかを解析した。

その結果、黒酢成分を正常なマウスに21日間連続投与したところ、マウスの脾臓のNK細胞の活性が有意に増加したことが認められ、また黒酢および黒酢の分画成分であるS-180という成分を腫瘍移植マウスに投与したところ、腫瘍の増大が明らかに抑制されたことも認められたという。

免疫賦活や抗腫瘍作用

さらに分析を行った結果、腫瘍移植マウスの方は、腫瘍の増大抑制に加え、膵臓のNK細胞の活性が有意に増加することや、サイトカインのIFN-γ、TNF-α、IL-12の分泌が有意に増加することも明らかになったと候氏。

IFN-γ、TNF-α、IL-12はキラーT細胞を活性する司令塔の役割を果たす物質であり、これらのサイトカインが豊富な環境になるとキラーT細胞だけでなくNK細胞、NKT細胞も活性化することから、黒酢には免疫賦活作用だけでなく、抗腫瘍作用があることが明らかとなったという。

また、U型糖尿病モデルマウスを用いて、黒酢もろみ末の高血糖抑制効果について検討を行ったことも報告。黒酢もろみ末を摂取させたマウスは、コントロール群に対して飼育40日より血糖値が有意に低下し始めた。血中総コレステロール濃度、中性脂肪濃度、肝臓中の中性脂肪含有量も有意に低下したことを示したという。

高血糖抑制や高脂肪抑制

この他、ブドウ糖を体内で運ぶ役割を果たすGLUT4という物質が筋肉中で増加することもわかった。GLUT4がよく働く状態というのはブドウ糖がしっかりと体内で動き代謝される状態で、糖尿病の治療には非常に有効だが、GLUT4は有酸素運動や筋肉量を増やすことで増加することが知られており、食による変化はあまり知られていなかった。

しかし今回の研究で、黒酢もろみ末の摂取によっても筋肉中のGLUT4に有意な変化があったことがマウス実験で明らかとなり、この点は非常に注目すべき点であると解説。これらの研究の結果、黒酢もろみ末は高血糖抑制だけでなく高脂肪抑制にも有用であることが明らかになったと発表した。

黒酢や黒酢もろみ末はその構成成分が非常に複雑で、先に示した有効性も成分が単独で機能しているのではなく多糖による働きではないかと候氏は解説。また、動物実験でも長期服用で変化が起こる、つまりヒトにおいても長期服用により健康維持に役立つ機能を発揮することが考えられるとした。


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