組織の弾力性や保水、栄養の消化吸収などの役割
コンドロイチン硫酸は膝痛に効果のあるサプリメントとして大量に流通しているが、これがどのような物質で、どのような機能を持つのかはあまり知られていない。近年はコンドロイチン硫酸が関節の軟骨だけではなく全身に存在し、特に脳神経系でも役割を果たしていることに注目が集まっている。
「コンドロイチン」という名称は膝の痛みなどに悩む多くの人に役立つ健康食品などで知られているが、正式名称はコンドロイチン硫酸であり、膝を中心とした軟骨だけでなく全身に分布しており、近年では脳神経系においても重要な機能を有することが知られるようになっていると武内氏。
多糖類の一種であるコンドロイチン硫酸はコラーゲンとともに体内の結合組織を形作っており、組織の弾力性や保水、栄養の消化吸収などの役割を担っている。コンドロイチン硫酸は成人くらいまでは体内で自然に合成されるが加齢とともに合成量が低下する。
コンドロイチン硫酸、脳内にも広く分布
またコンドロイチン硫酸が体内で減少すると、軟骨形成層が薄くなって、骨の形成が遅れることもわかっている。つまりコンドロイチン硫酸は私たちの体のなかで強い体(骨格や弾力のある皮膚や筋肉)を維持するのに重要な役割を果たしている。このコンドロイチン硫酸は脳のなかにも広く分布しており、脳内では面白い現象が起こっていると武内氏。
一般的に大人の脳に比べると子どもの脳には柔軟性があり、物覚えなども良い。これは脳の可逆性、つまり外から与えられる刺激や経験によって脳の回路が編成される仕組みが、若いうちは活発に働く一方で、成人になるとこの可逆性が低下するからだとされている。
体内で活発に合成、脳内で機能
しかしなぜ脳の可逆性が低下するのか、そのメカニズムについては明らかにされていなかった。ところが近年マウスによる解析でわかってきたことが、脳の回路や層の形成にもコンドロイチン硫酸が深く関与しているということであったと武内氏。
胎児期のマウスの脳内からコンドロイチン硫酸の量を減少させると、なんと大脳の層の形成が遅れ、さらに大脳そのものの形成が遅れ、さらに脳のネットワーク(回路)形成までもが遅れることが観察されたのだという。
つまり幼少期に脳の柔軟性や可逆性が高いのは、コンドロイチン硫酸が体内で活発に合成され、脳内で機能していることと関係があることを指摘。
とりわけ幼少期には体内で合成されるコンドロイチン硫酸が、脳の活性に非常に重要であることが推測されると解説した。
では大人になったら合成量が低下するコンドロイチン硫酸をサプリメントなどで外から補えば脳が活性するのかといえば、どうやらそうでもないことが明らかになりつつあるという。
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