医療で専門家が求める健康食品とは
〜平成25年度第1回機能性食品勉強会

2014年2月25日(火)、大正製薬9階ホールで、「平成25年度第1回機能性食品勉強会」が開催された。今回は医療現場で、どのようなサプリメントや健康食品が求められているかについて講演が行われた。この中から、渡辺 睦子氏(日本女性薬剤師会副会長 神奈川県女性薬剤師会会長)の「薬剤師が求めるサプリメントの条件」について取り上げる。


セルフメディケーションを重視

渡辺氏は、神奈川県にある薬局の二代目薬剤師として50年近く地域の健康に関わっている。また、神奈川県の女性薬剤師会の会長も務め、薬剤師発の健康情報の発信にも力を入れている。

神奈川県では2011年から黒岩知事が、セルフメディケーションを推進している。黒岩氏の父親はがんになり、長期の抗がん剤治療を受けていたが、症状が改善されず、漢方薬に切り替えてから体調が良くなり始め、結果的に、生活の質を保ちながら寿命を全うできた。

このことから、病院にばかり頼るのではなく個人のセルフメディケーションを重視し、いわゆる「健康寿命を伸ばし、ピンコロで楽しく人生を全うできるよう」さまざまな施策を打ち出し、薬剤師との提携や薬局の活用などにも力を入れていると渡辺氏。

中でも注目を浴びているのが「マイカルテ構想」。これは県民自らが自己の検査データや服薬歴などの医療情報を管理活用するというもの。

薬の種類が多く、薬で他の病気になる

最近の傾向としては、若い人の病気が増えていると渡辺氏。主な症状としてはアレルギー性疾患や精神疾患、そして不妊。また在宅では高齢者の薬の種類が多すぎることによる副作用、老化現象(ロコモ、サルコペニア等)、介護をしている家族の問題などが増えているという。

若い人の問題のほとんどは、栄養バランスが根本にある。また高齢者は、高齢になってどう体を作ればいいのかという問題が根本にあると渡辺氏。特に高齢者は長期継続処方が多く、薬の種類が多く(平均11種類)、薬で他の病気になるということがよく見受けられるという。

医師にものが言えない状況も

例えば咳が止まらない高齢者が病院に行くと、医師はその咳を止めようという観点から診察し処方をする。しかし薬剤師はそれが他の薬剤、つまり降圧剤の副作用ではないかと考える。

しかし薬剤師から医師に意見を言い過ぎると、薬局に患者さんが送られてこない、処方箋がまわってこないといったことがある。特に一人の医師の専属のような薬局ではほとんどものが言えない状況にあるという。

病院に行く前に、薬局や薬剤師に相談を

他にも、誤診と思われる糖尿病も多いという。例えば長期間抗アレルギー剤を飲んでいると、将来的に必ず血糖値が上がる。しかしこれはいわゆる糖尿病の症状とは全く違う。

しかし病院にいくと糖尿病と診断され、糖尿病の治療が始まる。そして糖尿病の治療薬が別の病気を作るということになる。

薬剤師としては、薬が次の病気を作る可能性に目を光らせ、医師と連携したいが現状は難しいと渡辺氏。そのため一般の人には病院に行く前に、薬局や薬剤師に相談してみるという選択肢があることを知ってほしいという。

薬剤師が薬の副作用問題のストッパー役に

特にうつ病関連は医師による診断が必須とされているが、病院でうつ病の薬が処方されると、一定期間やめることができなくなる。そして薬がなければ脳内物質のセロトニンが分泌されないという悪循環に陥りかねない。

薬局にはサプリメントや栄養指導、運動指導も含めアドバイスをする薬剤師がいる場合もある。そうした薬局で薬の副作用や新たな病気を阻止するストッパー役を果たしたいと渡辺氏。

漢方、ハーブ、サプリメントの勉強に力を入れる

県の推進もあり、近年神奈川県では薬局が医療相談施設として市民に認識されはじめているという。相談内容は薬だけでなく、医療機関の紹介やセカンドオピニオンの紹介、介護保険の申請方法、血糖値の簡易測定、生活習慣病の予防方法、健康体操など。

渡辺氏らは薬剤師の教育に力を入れ、糖尿病関連や疼痛ケア関連の資格取得を促し、漢方、ハーブ、サプリメントの勉強にも力を入れている。とくに女性の薬剤師の役割は大きい。そのため、女性薬剤師を育てていきたいという。

今後サプリメントの果たす役割は大きい

今、薬局で求められているサプリメントについては、疲労感を解消する滋養強壮系、食物繊維などを中心としたデトックス系、膝や関節の痛みの緩和系。目と皮膚のトラブル系、快眠、快食に役立つもの、などであるという。

これらの価格が適切で、納得できるキャッチフレーズやエビデンスがあり、パッケージセンスの良いものを消費者は求めている。体の仕組み、増えている病気の原因、そして社会の変化を考えると栄養素や栄養学を考慮せず医薬品だけで病気の予防治療を行うのは不可能で、今後サプリメントの果たす役割は大きいと渡辺氏。

また高齢者の孤独が病気の原因になっていることもあるため、街のホットステーションとして薬局や薬剤師の果たす役割は大きく、そこで優良なサプリメントが正しく提供できれば、ヘルスメディケーションに役立つのではないかとまとめた。


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