セルフメディケーションを重視
渡辺氏は、神奈川県にある薬局の二代目薬剤師として50年近く地域の健康に関わっている。また、神奈川県の女性薬剤師会の会長も務め、薬剤師発の健康情報の発信にも力を入れている。
神奈川県では2011年から黒岩知事が、セルフメディケーションを推進している。黒岩氏の父親はがんになり、長期の抗がん剤治療を受けていたが、症状が改善されず、漢方薬に切り替えてから体調が良くなり始め、結果的に、生活の質を保ちながら寿命を全うできた。
このことから、病院にばかり頼るのではなく個人のセルフメディケーションを重視し、いわゆる「健康寿命を伸ばし、ピンコロで楽しく人生を全うできるよう」さまざまな施策を打ち出し、薬剤師との提携や薬局の活用などにも力を入れていると渡辺氏。
中でも注目を浴びているのが「マイカルテ構想」。これは県民自らが自己の検査データや服薬歴などの医療情報を管理活用するというもの。
薬の種類が多く、薬で他の病気になる
最近の傾向としては、若い人の病気が増えていると渡辺氏。主な症状としてはアレルギー性疾患や精神疾患、そして不妊。また在宅では高齢者の薬の種類が多すぎることによる副作用、老化現象(ロコモ、サルコペニア等)、介護をしている家族の問題などが増えているという。
若い人の問題のほとんどは、栄養バランスが根本にある。また高齢者は、高齢になってどう体を作ればいいのかという問題が根本にあると渡辺氏。特に高齢者は長期継続処方が多く、薬の種類が多く(平均11種類)、薬で他の病気になるということがよく見受けられるという。
医師にものが言えない状況も
例えば咳が止まらない高齢者が病院に行くと、医師はその咳を止めようという観点から診察し処方をする。しかし薬剤師はそれが他の薬剤、つまり降圧剤の副作用ではないかと考える。
しかし薬剤師から医師に意見を言い過ぎると、薬局に患者さんが送られてこない、処方箋がまわってこないといったことがある。特に一人の医師の専属のような薬局ではほとんどものが言えない状況にあるという。
病院に行く前に、薬局や薬剤師に相談を
他にも、誤診と思われる糖尿病も多いという。例えば長期間抗アレルギー剤を飲んでいると、将来的に必ず血糖値が上がる。しかしこれはいわゆる糖尿病の症状とは全く違う。
しかし病院にいくと糖尿病と診断され、糖尿病の治療が始まる。そして糖尿病の治療薬が別の病気を作るということになる。
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