食品科学の進歩で食文化が変貌
食品の科学技術は常に進化しており、食生活や食文化までを変えていると清水氏はいう。例えば、お茶1つとっても、かつて食後にお湯を沸かし煎じて飲む贅沢品であった。
しかし今や、缶飲料やペットボトルで持ち運べ、その結果、食後や一服のためだけでなく、より日常に密着したものになっている。
さらに健康効果を謳ったものも登場している。その中にはトクホ商品になったものもあれば、カテキンの効果が知られ、トクホと表記しなくでも十分というスタンスの商品もある。
お茶はもはやリラックスのために飲むだけでなく、健康維持や風邪予防といった用途に応じて飲めるものへと進化している。
食品の機能性研究、30年前より文部省のプロジェクトで開始
食品の機能性については昔から研究されていたが、約30年前に文部省のプロジェクトの1つとして立ち上げたことが進展の大きなきっかけになったと清水氏はいう。このプロジェクトには、食品化学だけでなく、栄養学、薬学、医学の専門家が集結し、「食品の機能性」の体系的な研究を行った。
そしてこの時、食品の機能が初めて3つに分類、定義された。まず身体の成長や構築を担う栄養素としての一次機能、美味しさや嗜好としての二次機能、そして生活習慣病を始めとする疾病予防を担う三次機能である。
この「三次機能」という概念は社会的にも非常に大きな注目を集め、全国で研究が展開されるようになった。そして、この研究成果が1993年にトクホ商品誕生へと繋がっていく。
トクホ商品、すでに1,100品超え
現在トクホ製品はすでに1,100品目を超えているが、機能性の評価が困難になってきているという。というのも、経口摂取した栄養成分は消化管内で消化され、腸内細菌で代謝され複雑に変化していくからだ。
それらの変化した成分は腸管で吸収されるもの、肝臓で吸収されるものなど、各臓器の中で複雑に代謝され構造を変えていく。
どの成分がどこでどう変化し、さらにどのような分子や受容体に作用し機能を発揮するのか、食品成分の「体内動態」や「認識機構」が機能性評価において非常に重要なファクターとなっている。
トクホは学問の成果
現在のトクホ商品の在り方としては、例えば血糖値や糖の活性を抑制する因子を加えることが主力になっていて、これはどちらも食品から摂取される糖が体内でどのように吸収されるのか、という研究から食品がデザインされている。コレステロールの吸収を抑制するトクホ商品も同様である。
近年は吸収されたものが体内でどう変化するのか、という研究からデザインされているものが増えている。例えば血圧上昇を抑制する作用などがこのグループである。
血圧上昇を抑制する方法としては神経系を介す方法もあり、そのメカニズムからデザインされたトクホ商品も出てきている。
いずれにせよトクホ商品の開発は科学的なメカニズムがベースとなっていて、まさにトクホは学問の成果、と清水氏。
機能性の評価は非常に難しい
現在、機能性表示解禁に向け、新たな機能性食品の評価方法の模索がはじまっている。しかし機能性の評価は非常に難しいということが、この30年の結論だ、と清水氏。
例えば、食べた機能性成分が実際そのまま腸で吸収されるかわからない。仮に吸収されたとしても、腸や肝臓で複雑に代謝して分子変化を起こす。変化した分子はさらに複雑に変化しながら体内の受容体や神経系などに作用し、さまざまな遺伝子の発現に関わる。
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