アレルギー患者の実態など最新報告
〜アレルギー情報管理勉強会

2014年8月20日(水)、東京ビッグサイトで、潟Cンフォマートが主催する「アレルギー情報管理勉強会」が開催された。フードコミュニケーションコンサルタントの田中あやか氏が、「アレルギー情報の法的要求事項とアレルギー患者の実態」と題し、最新の状況を報告した。


食物アレルギーの情報公開に前向きに

食物アレルギーの表示対象となる食品は年々増加傾向にある。食物アレルギーによるアナフィラキシーショック事件も報道されている。 こうした食物アレルギー情報の公開に前向きに取り組んでほしいと田中氏。

食物アレルギーの最大の問題点は、多くの人が「自分とは関係のない、ほんの一部の人の問題」として理解をしていない点にある田中氏は指摘する。実際、食物アレルギーを持つ人は日本人の1〜2%ともいわれ、割合として非常に少ない。

約26%が周りに食物アレルギーの人がいると回答

しかし、これは病院に通っている人の割合であり、実際には自分の経験から特定の食品を避けていたり、症状が軽度であるために病院に行かなかったりという人も多い。

またアレルギーは当事者だけでなく、その家族への影響を考えると、この問題に悩む人の数は1〜2%(乳児に限定すると10%)ということはないはずと田中氏は指摘。

実際、ある調査(注1)では「自分あるいは家族に食物アレルギーの人がいるか?」という質問に、約26%以上の人が周りに食物アレルギーの人がいると回答しているという。

近年、口腔アレルギー症候群が増えている

いろいろなアレルギー症状があるが、とくに食物アレルギーはここ15年で急増している。基本的には乳幼児が発症しやすいが、成人になってから発症する場合もある。

近年は果物・野菜・魚介類などによるアレルギー報告も多い。特に最近増えているのが新タイプの食物アレルギーである「口腔アレルギー症候群」。

これは特に成人女性に多く、アレルゲンは果物(キウイ、メロン、モモ、パイナップル、リンゴなど)、トマトなどの野菜が多い。基本的には口腔内だけに症状が見られる場合が多いが、ショック症状を起こすこともあり特に花粉症に罹患している人は注意が必要という。

「アレルギー表示」が貴重な命綱

食物アレルギーの症状としては、皮膚や粘膜、消化器や呼吸器に症状が起こるケースが多いが、最も恐ろしいのがアナフィラキシーで、全身に強いアレルギー反応が出て死に至る可能性もある。

基本的には小児に多い病気で、卵や牛乳にアレルギーがあると診断されたとしても、3歳までに診断された3人のうち2人が、12歳までに10人のうち9人が食事制限を必要としなくなっているとの報告もある。小児の場合は成長するに従って良くなっていくケースも多い。

しかし食物アレルギーに有効な治療方法はないため、予防するには原因となるアレルギー物質を避けるしかない。そうした中で、「アレルギー表示」は患者さんにとっては貴重な命綱ともいえる。

アレルギー情報をカバーできているとはいえない

現在食品衛生法によって表示義務が定められているのは「卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに」の7品目。

表示が勧められている特定原材料に準ずるものとしては「あわび・いか・いくら・さけ・さば・大豆・まつたけ・やまいも・牛肉・鶏肉・豚肉・ゼラチン・オレンジ・キウイ・くるみ・バナナ・もも・リンゴ・ごま・カシューナッツ」の20品目。

しかしこれらの食材以外がアレルゲンになっているケースも多く、これだけではアレルギー情報をカバーできているとはいえないのが現状である。

表示自体が複雑で正しく読み解けない

また外食やその場で供されるものは表記が不要であることなど、問題点はいくつもあると田中氏。表示自体も非常に複雑で、表示を正しく読み解くにはたくさんの知識が必要であるという。

例えば「乳アレルギー」とした場合、表示のなかから「乳」の文字があるものはすぐに理解できるだろうが、カゼインNaや香料などにも乳由来のものが多く、それは表示からは読み解くことが難しい。

あるいは乳化剤は大豆や卵由来の場合もあり、乳は混入していないこともある。この状態は患者さんだけでなく、事業者にとっても不利益で、双方がアレルギー物質が入っているかどうかを理解できないままになってしまうことが多いという。

メニュー表やネットからアレルギー情報を入手

食物アレルギーのある人が、外食や中食を避けているかというと、利用傾向については一般消費者と大差がなく、それなりに外食や中食も利用していることがわかっているという。

そうした中で、多くの患者さんは外食時のアレルギー表示情報を、一覧表やメニュー表、インターネットで調べるというケースが一般的で、店員からの情報も同じくらい頼りにしているという。

しかしアルバイト店員は十分な情報を持ち合わせていないケースが多く、外食事業者は店員に対するアレルギー教育が重要課題だと田中氏は指摘する。

外食や中食でアレルギーを発症した経験が50%超

実際、食物アレルギーを持つ人が外食や中食でアレルギーを発症した経験が50%を超えているともいわれる。

さらにそのうちの50%がアナフィラキシーを起こしているともいわれる。しかしそのような事態になっても、利用した飲食店に発症を伝えられないという患者さんや家族が多いのが現状という。

外食事業者は今後ますます従業員教育や対応方法を徹底する必要が求められている。情報公開の工夫をする必要もある。

またアレルギーの人に対しては持ち込みを可能とすることや、低アレルゲンメニューの開発など寛容な態度も求められるのではないかと田中氏は解説した。

(注1)ある調査〜日本生活協同組合連合会と大阪いずみ市民生活協同組合が、2009年3月に組合員を対象に実施した「携帯電話を活用した食品の情報提供によるアンケート」より。


Copyright(C)JAFRA. All rights reserved.