栄養療法、医者にとっては「儲からない」ものの1つ
日本人の健康状態の現状はというと、男性の肥満の増加、女性のやせの増加、肥満と低体重の両方の問題を抱えていること。特にメタボリックシンドローム、つまり生活習慣病やその予備軍が増えているため、厚生労働省もその対策として2008年から特定検診を開始している。
これまで国は栄養療法を重視してこなかった。入院患者以外に栄養指導をする場合「外来栄養食事指導料」ということで診療報酬は130点(約1300円)が付くが、この点数は10年据え置きで、医者にとっては「儲からない」ものの1つだったという。
もうひとつ栄養に関するものでは「入院栄養食事指導」というものがある。これも130点だったが、2006年には少し加点された。薬剤だけでなく栄養を考えることも必要だと国が考え始めたのが2006年頃、と姫野氏。
退院するともとの食生活に戻り「再発」するケースも
2012年になると栄養サポートチーム加算(NST)という制度が導入され、入院している患者さんへの栄養指導が200点と、徐々に評価されるようにはなっている。
NSTでは、栄養障害が生じている患者さんやそのリスクが高い患者さんに対し、医師や管理栄養士がチームで栄養管理とサポートを行う。
これは、それなりの効果を発揮するが、問題は退院するともとの食生活に戻るため、「再発」が多いことだと姫野氏は指摘する。
現在福岡にある「ひめの病院」では新病棟を建設中だが、そこにはキッチンスタジオを併設し、専門家と一緒に食べることで、口に入るものが体内でどのように変化し、どのような影響を与えるのか、十分な説明ができる場所にする予定だという。
医師たちも「どうやったら薬を減らせるのか」を勉強中
現在、栄養療法がクローズアップされているのは薬物療法の限界を多くの人が感じているからではないかと姫野氏。症状が良くならなければ、多剤併用になり、次第に副作用も出るようになる。
実は薬物療法に頼る治療法に国も限界を感じていることは明らかで、今年の診療報酬の改訂において、特にうつ病や睡眠薬などにおいて薬を多種類処方すると減点されるようになったという。
そのため、医師たちも「どうやったら薬を減らせるのか」という勉強会を頻繁に開催するようになっているそうだ。
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