何をどう食べるか、あなたと家族の未来が決まる〜「オーソモレキュラー.jp」オープニング記念講演
2014年8月31日(日)、有楽町朝日ホールで、「オーソモレキュラー.jp」オープニング記念講演会が開催された。オーソモレキュラーという治療法を提唱する3人の医師による講演で会場は満員となった。ここでは「栄養療法で変わる日本の医療」と題した、姫野友美氏(ひめのともみクリニック院長)の講演を取り上げる。


栄養療法、医者にとっては「儲からない」ものの1つ

日本人の健康状態の現状はというと、男性の肥満の増加、女性のやせの増加、肥満と低体重の両方の問題を抱えていること。特にメタボリックシンドローム、つまり生活習慣病やその予備軍が増えているため、厚生労働省もその対策として2008年から特定検診を開始している。

これまで国は栄養療法を重視してこなかった。入院患者以外に栄養指導をする場合「外来栄養食事指導料」ということで診療報酬は130点(約1300円)が付くが、この点数は10年据え置きで、医者にとっては「儲からない」ものの1つだったという。

もうひとつ栄養に関するものでは「入院栄養食事指導」というものがある。これも130点だったが、2006年には少し加点された。薬剤だけでなく栄養を考えることも必要だと国が考え始めたのが2006年頃、と姫野氏。

退院するともとの食生活に戻り「再発」するケースも

2012年になると栄養サポートチーム加算(NST)という制度が導入され、入院している患者さんへの栄養指導が200点と、徐々に評価されるようにはなっている。

NSTでは、栄養障害が生じている患者さんやそのリスクが高い患者さんに対し、医師や管理栄養士がチームで栄養管理とサポートを行う。

これは、それなりの効果を発揮するが、問題は退院するともとの食生活に戻るため、「再発」が多いことだと姫野氏は指摘する。

現在福岡にある「ひめの病院」では新病棟を建設中だが、そこにはキッチンスタジオを併設し、専門家と一緒に食べることで、口に入るものが体内でどのように変化し、どのような影響を与えるのか、十分な説明ができる場所にする予定だという。

医師たちも「どうやったら薬を減らせるのか」を勉強中

現在、栄養療法がクローズアップされているのは薬物療法の限界を多くの人が感じているからではないかと姫野氏。症状が良くならなければ、多剤併用になり、次第に副作用も出るようになる。

実は薬物療法に頼る治療法に国も限界を感じていることは明らかで、今年の診療報酬の改訂において、特にうつ病や睡眠薬などにおいて薬を多種類処方すると減点されるようになったという。

そのため、医師たちも「どうやったら薬を減らせるのか」という勉強会を頻繁に開催するようになっているそうだ。

とはいえ、薬を減らすことには医師も患者も不安がある。それで良くなる保証はあるのか?薬に変わる治療とは何なのか?そこを明確にしなければ医師も患者さんも困る。

例えば、日本精神神経学会では薬に代わる方法として「生活習慣の改善」「認知行動療法」「精神療法」「代替薬物療法」などを薦めている。しかし医師は栄養についてはまだまだ勉強不足であることを否めない、と姫野氏。

医療機関でサプリメントの販売が可能に

今年6月24日の閣議で「医療機関でサプリメントの販売をすることは可能である」ということが明確化され、さらにこれを周知するように決められた。これまでも医療機関でサプリメントを取り扱うことは問題なかったが、自治体によっては禁止されているところもあった。

国としても、医療機関の業務範囲を広げ、収益源を多様化させ、政府の成長戦略が掲げる「健康長寿社会実現」の一貫として、患者の疾病予防のニーズに医療機関が答えられることを望んでいる。

栄養療法は患者だけでなく、家族や医師自身をも救う

国民は国や医師以上に栄養に興味を持っているというのが現状だ。姫野氏自身も健康番組に多数レギュラー出演していて、「栄養番長」として情報発信しているが、「ナッツの健康効果」や「糖質制限」については当初同業の医師から批判されたことがあった。

しかし栄養療法で多数の実績を挙げ続けたことで、今ではこれらの健康法もスタンダードになってきているという。

最後にまとめとして、
@体の機能を正常化するために必要な栄養素を入れ、不必要な栄養素を排除することが、自然治癒力を高め、あらゆる病気の治療のベースになることは明らかであること。
A栄養療法は病気を予防し、健康寿命を延ばすという事実を、いまでは多くの人が理解し、政府も推奨し始めていること。
B医学全体も対処療法ではなく根本治療を目指し始めているということ。
C栄養療法は患者だけでなく、家族や医師自身をも救う方法であるため、医療関係者も絶賛しはじめている、
という栄養療法の4つの優れた点を強調した。


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