ホスファチジルセリンの最新知見と応用展開
〜食品開発展2014セミナー

2014年10月8日〜10日、東京ビッグサイトで、食品開発展2014が開催された。食品分野の研究・開発、品質保証、製造技術担当者向けの専門展示会として1990年よりスタートし、今年で25回目を迎えた。同展示会セミナーから日油鰍フ機能性成分「ホスファチジルセリン」を取り上げる。


生体内では脳内に多く存在

ホスファチジルセリンとは、天然に存在するリン脂質の一種で、ヒトの細胞膜を構成している主要成分の1つでもあり、生体内では脳内に多く存在している。

割合としては脳内にある全リン脂質の約18%を占める。脳内では、このホスファチジルセリンがアセチルコリンやドーパミン、セロトニンといった神経伝達物質の分泌量を亢進させる働きを担う。

アメリカ食品医薬品局FDAはホスファチジルセリンに「限定的健康強調表示」を認めており、「ホスファチジルセリンの摂取は高齢者の認知機能障害のリスクを低減するかもしれない」といった内容を免責条件付きで表示することも許可されている。

アルツハイマーへの有効なアプローチに

ホスファチジルセリンの脳内神経伝達物質の分泌量亢進については、ホスファチジルセリンが食品から摂取したグルコースの取り込みを促進させることに関与しているため。

加齢とともに海馬の神経細胞が壊死し減少するが、脳内グルコースの代謝活性が起こるとそれを抑制し、記憶や学習能力の向上にもつながる。アルツハイマー型認知症の人が1日300mgを3週間連続摂取することで、記憶力の向上、ストレス耐性向上、血管老化の抑制が見られたという事例もある。

高齢化で認知症増加の問題を抱える日本人にとって、ホスファチジルセリンがアルツハイマーへの有効なアプローチ法の1つになりうるのではないかと期待が寄せられる。

美容分野の可能性なども示唆

ホスファチジルセリンはこれまで脳の中枢神経を中心に、脳機能改善や脳の血管老化防止作用などに期待されその機能性が展開されてきたが、最近の研究ではスポーツニュートリションや美容分野の展開も示唆されているという。

例えば、健常な人16人に対し、1日300mg、42日間連続摂取させたところ、ストレス反応が抑制され、精神性ストレスを緩和する作用が期待されている。

またオーバートレーニング後に800mg摂取させたところ、抗酸化作用が優位に働き、速やかな疲労回復に役立った。継続的な摂取でスポーツ競技のパフォーマンスそのものを高める可能性もあることが示唆されたとした。

この他、美容素材としても期待されている。真皮繊維芽細胞に紫外線を照射すると、コラーゲンの酸化を促進させ、コラーゲン細胞の切断酵素が発現し、皮膚の弾力が損なわれるが、この状態にホスファチジルセリンを加えるとコラーゲン切断酵素の発現を抑制し、速やかにコラーゲンを合成することも試験管では観測されているという。

血管の収縮機能が高まる

上記のことはすべて海外での実験だが、日油鰍ナは血管に関する独自の調査を行ったことも報告。

私たちは筋肉を自発的に鍛えることができるが、血管を鍛えることはできない。しかし血管の老化こそ体の老化で、血管年齢と体内年齢は密接に関係している。そのため老年期になると疾病のなかでも循環器系の占める割合は多くなる。

虚血性疾患や糖尿病も血管をより傷つける要因になる。しかし血管機能が低下したラットに3ヶ月間ホスファチジルセリンを連続投与したところ次第に血管の収縮機能が高まる効果が現れたため、日油鰍ナは明治薬科大学とともにこの結果に関する特許を8月に申請したという。

ホスファチジルセリンをより利用しやすく

日油鰍ナはホスファチジルセリンをこれまでも提供してきたが、ハードカプセルには向かない、錠剤にした時に斑点が見られるといった幾つかの問題を抱えていた。

しかし新しいホスファチジルセリンは流動性が高いものとしてリニューアルし、高含有の錠剤を作ること、それにより摂取量を減らすことなども可能となり、アプリケーションが広がったという。コストダウンも可能になり、より多くの人がホスファチジルセリンを利用しやすい環境が整ったという。


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