企業責任において表示
本年4月より食品の新たな「機能性表示制度」が施行される。この新表示制度において重要なことは「企業の責任において表示を行うこと」。また、表示内容が消費者の誤認を煽るものや期待を裏切るようなものであったりしてはならないことである。
そのためヒト試験やシステマティックレビューの精査などがこれまで以上に重い課題として企業にのしかかっている。この制度を企業、消費者ともに有効なものとするために、どのようなことに注意を払えばいいのか。清水俊雄氏は「食品の新たな機能性表示制度:科学的根拠と国際比較」と題して講演した。
世界に先駆けた日本の特保制度
食品には機能成分が存在する。それを機能性食品と定義し、その評価や周知を(薬事法を犯すことなく)食品に表示し、消費者の健康に役立てる。
このことを世界に先駆けて実現したのが日本の特定保健用食品制度で、日本はこの分野で世界の模範となっている。一方、欧米諸国も法整備を行い、機能性成分やサプリメントの開発や流通は活況で、消費者も多く利用している。
米国の「ダイエタリーサプリメント制度」が見本
そこで日本の成長戦略の1つでもあり、世界と基準を合わせるため、2013年6月の規制改革閣議で、「米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にし、企業等の責任において科学的根拠の下に機能性を表示できる」制度の創設が提案され、閣議決定された。
それを機に消費者庁に「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」が設置され、検討と議論が重ねられ、本年度4月より制度が施行する運びとなった。
こうした状況のなかで、今回「見本」とされる米国の「ダイエタリーサプリメント制度」にはどのようなメリットとデメリットがあったか、あらかじめ認識しておく必要があると清水氏。
身体の構造と機能に影響を及ぼす表示ができる制度
1994年に施行された米国のダイエタリーサプリメント制度では、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブ等について、身体の構造と機能に影響を及ぼす表示(構造・機能表示)ができる制度になっている。
企業は連邦食品医薬局(FDA)へ届出するだけで、審査されることなく、企業の自己責任において実証された効果を表示できる、というのが大きな特徴であった。
しかし施行当初からすべてが順調であったわけではない。有効性と安全性に関するガイドラインは存在せず、また第三者による評価機関もなく、表示される機能の科学的根拠の情報の公開も義務づけられていなかった。
米国では、たびたびの制度の見直し
そのためいくつかの有害事故も起こり、この制度の見直しが求められることとなった。2006年頃からたびたび見直しが行われ、当初は定められていなかった「科学的根拠のガイドライン」についても2008年に指針が発表された。
そして、見直しから数年経過し抜き打ち検査をすると、多くの製品がこのガイドラインに合致していないことや、安全性の評価においても審査が不十分であるといった報告が2012年になされた。
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