食品の新たな機能性表示について〜ガイドラインを踏まえて 〜第33回健康食品フォーラム
2015年2月10日(火)、全社協・瀬尾ホールで、第33回 社福協健康食品フォーラムが開催された。この中から、清水俊雄氏(名古屋文理大学健康生活学部教授)の講演「食品の新たな機能性表示制度:科学的根拠と国際比較」を取り上げる。


企業責任において表示

本年4月より食品の新たな「機能性表示制度」が施行される。この新表示制度において重要なことは「企業の責任において表示を行うこと」。また、表示内容が消費者の誤認を煽るものや期待を裏切るようなものであったりしてはならないことである。

そのためヒト試験やシステマティックレビューの精査などがこれまで以上に重い課題として企業にのしかかっている。この制度を企業、消費者ともに有効なものとするために、どのようなことに注意を払えばいいのか。清水俊雄氏は「食品の新たな機能性表示制度:科学的根拠と国際比較」と題して講演した。

世界に先駆けた日本の特保制度

食品には機能成分が存在する。それを機能性食品と定義し、その評価や周知を(薬事法を犯すことなく)食品に表示し、消費者の健康に役立てる。

このことを世界に先駆けて実現したのが日本の特定保健用食品制度で、日本はこの分野で世界の模範となっている。一方、欧米諸国も法整備を行い、機能性成分やサプリメントの開発や流通は活況で、消費者も多く利用している。

米国の「ダイエタリーサプリメント制度」が見本

そこで日本の成長戦略の1つでもあり、世界と基準を合わせるため、2013年6月の規制改革閣議で、「米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にし、企業等の責任において科学的根拠の下に機能性を表示できる」制度の創設が提案され、閣議決定された。

それを機に消費者庁に「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」が設置され、検討と議論が重ねられ、本年度4月より制度が施行する運びとなった。

こうした状況のなかで、今回「見本」とされる米国の「ダイエタリーサプリメント制度」にはどのようなメリットとデメリットがあったか、あらかじめ認識しておく必要があると清水氏。

身体の構造と機能に影響を及ぼす表示ができる制度

1994年に施行された米国のダイエタリーサプリメント制度では、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブ等について、身体の構造と機能に影響を及ぼす表示(構造・機能表示)ができる制度になっている。

企業は連邦食品医薬局(FDA)へ届出するだけで、審査されることなく、企業の自己責任において実証された効果を表示できる、というのが大きな特徴であった。

しかし施行当初からすべてが順調であったわけではない。有効性と安全性に関するガイドラインは存在せず、また第三者による評価機関もなく、表示される機能の科学的根拠の情報の公開も義務づけられていなかった。

米国では、たびたびの制度の見直し

そのためいくつかの有害事故も起こり、この制度の見直しが求められることとなった。2006年頃からたびたび見直しが行われ、当初は定められていなかった「科学的根拠のガイドライン」についても2008年に指針が発表された。

そして、見直しから数年経過し抜き打ち検査をすると、多くの製品がこのガイドラインに合致していないことや、安全性の評価においても審査が不十分であるといった報告が2012年になされた。

つまりサプリメント大国といわれるアメリカだが、消費者は行政が検証も承認もしていない表示に頼らざるを得ない、という状況が続いていた。

EUでは、トクホを超える200を超える健康表示が認証

一方、EUでは、栄養健康表示法に基づく機能表示、小児関連表示、疾病リスク低減表示の3つの健康表示について比較的綿密なガイドラインが定められ、比較的トクホのそれと似ていた、と清水氏。

欧州食品安全庁(EFSA)は科学的根拠の評価を進める中で、ヒト介入試験の重要性や、有効成分の同定定量評価、動物試験によるメカニズム解明の必要性などを明らかにしており、比較的厳しいハードルではあったが、トクホを超える200を超える健康表示が認証された。

トクホと同等の科学的根拠が求められる

こうした国際的な状況も踏まえ、日本での新機能性表示制度においては、機能性の科学的根拠の実証法として製品のヒト試験又は成分のシステマティックレビューでの実証が求められることになっている。

安全性に関しては、食経験の情報を踏まえ、安全性評価を実施することが求められている。また、機能性表示の表現は、特定保健用食品の保健の用途と同等とされ、機能性・安全性ともにトクホと同等の科学的根拠が求められることになっている。

新制度で表示の拡大が期待

トクホの科学的根拠だが、成分の同定定量評価、ヒト介入試験での実証、動物試験でのメカニズム解明などの考え方が、国際的整合性が高いといえる、と清水氏。

EUでは疲労回復、免疫改善、肌の健康などトクホにはない健康表示が承認されているため、新制度でも表示拡大が期待されるという。

「インフォームド・チョイス」が重要

いずれにせよ、企業が健康表示を科学的根拠に基づいて行うことは、消費者がより適切な製品を選ぶために必要なことである。

医療行為などにおいて正しい情報を伝えたうえで合意することをインフォームド・コンセントというが、健康食品についても「インフォームド・チョイス」がより重要になるであろう、と清水氏。そのために科学的根拠については、

  • ヒト試験で実証されているもの
  • 1回の実験結果ではなく網羅的に検証された実験結果に基づいているもの
  • システマティックレビューについては質の悪い研究は除外されているもの
  • 成分の定量管理が確実にできるもの
  • 第三者の評価(査読必須の学術誌など

消費者の正しい選択のために、アドバイザリースタッフの活用など、消費者庁の最終調整も進んでいる、という。


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