日本の医療や医療費の問題についてもはや避けて通ることはできない。特に医療費は2025年に60兆円を越える予測が立っている。しかもその3割が生活習慣病といわれ、もはや公的保健だけでは国民の健康は守れない。
医療費削減のためには国民一人ひとりが「予防」を心がける、「セルフメディケーション」浸透させる、といったことが最重要課題となっている。その一貫として「機能性表示制度」が始まろうとしている、と森下氏。
しかし「機能性表示制度」だけでは十分とはいえない。実際、政府は他の動きもしている。例えば医薬品の早期認証制度の法律もすでに国会を通っている。
また、「機能性表示制度」のスタート後、トクホ制度や栄養機能食品の見直しも行われることが決まっており水面下では動き始めているという。
米国では機能性表示で市場が4倍に拡大
もともと「食品の三次機能」については日本が世界をリードしていた。新制度では世界に追いつき再び世界をリードすることが最大の目的である。新制度を活用して健康関連市場が活性化し、国民が健康になることが望ましい。
今回見本とした米国の「ダイエタリーサプリメント制度」は、施行後、米国で生活習慣病やがんの罹患率が低下しただけでなく、この制度開始から20年経過した今市場規模は4倍に拡大していると報告されている。日本でも同じような展開が期待される、と森下氏。
機能性表示には、「健常者を対象にしたトクホに準じた試験が行われること。またはシステマティックレビューの実施と報告」「臨床試験を行う場合はUMIN(臨床試験登録システム)への登録」さらに「査読つき論文雑誌への発表」が標準的なステップとなる。
また表示にあたり事前に消費者庁に届出する必要があるが、届出を行い認証されると「受理番号」が送付され、それをパッケージに明記して販売するということが決まっている。
HACCP、GMP等の品質管理に積極的に取り組むことが必要
使用可能な表現については、依然「曖昧である」という意見が多い。たとえば健康な人に対し「疲労を回復する」はOKでも疾病のある人に「疲労を回復する」はNGである。
また、健康な人に対し「改善」はOKであるが、疾病のある人に「改善」はNGであるなど、あくまでパッケージも含めた全体で審査が行われる。
この制度で最も重要なことは「安全性」であり、制度が長く有効に活用されるためにもやはり利用する企業はHACCP、GMP等の品質管理の取り組みについて自主的かつ積極的に取り組むことが求められる。
特に健康被害発生時における因果関係の検証のためにも企業は十分な努力をする必要がある。
森下氏が事務局長を務める抗加齢協会でも査読などの手伝いを積極的に行う体制を整えているという。
今後はドクターズサプリメントなどの市場もより活況になることが予測される。「国民の健康増進」「医療費の削減」「新産業の創出」を同時に実現するために、この制度に寄せられる期待は大きいとした。
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