腸は謎に満ちた器官
腸が超有能な免疫器官であることが、ここ数年広く一般にも知られるようになってきた。腸は消化・吸収を担う臓器だが、「免疫機能」を有する、非常に重要な器官でもある。
腸は、まだまだ謎に満ちた器官で、各分野から研究が盛んに行われるようになっている。特に医療分野から注目が集まっている。
というのも、腸という免疫器官を上手に扱うことができれば、感染症を中心とした病気の予防できるからだ。この観点から、現在、医学・農学・工学といった異なる分野が融合し、米を使ったワクチンによる腸内環境へのアプローチを進めているという。
そもそも「免疫」とは疫から逃れる、「病気」から逃れるためのシステム、あるいはウイルス・アレルゲン・細菌といった異物を感知し体から排除するシステムのことである、と清野氏。
腸管粘膜には約1兆個の免疫担当細胞が存在
私たちの体は、筒のような形状になっている。筒の外側にあたるのが皮膚。筒の内側が口から肛門までの消化管で、ネバネバとした「粘膜」で覆われている。
そのため消化管は「粘膜免疫」とも呼ばれる。こうした皮膚と粘膜のバリアで私たちは守られている。なかでも腸管は非常に広大で、テニスコート半分ほどある。
腸管粘膜は健康であればピンク色をしていて、背の高い絨毛を持つ。腸管粘膜には約1兆個の免疫担当細胞があり、異物や病原菌の排除だけでなく、有益な菌との共存共生システム構築も行っている。
免疫システムの司令塔、GALTパイエル板
腸管粘膜のなかには免疫システムの司令塔と呼ばれる「GALTパイエル板」が存在する。近年、マウスを完全無菌状態で育てると、パイエル板は発達せず、免疫システムが微弱なマウスになることが分かっている。
しかし、通常の環境に戻して育成するとパイエル板は発達しはじめることから、腸内フローラ(百兆個以上もの多種多様な細菌が1kg以上も棲みついて、腸内に集まっている様)を形成させるためには良い菌も悪い菌も実は同等に重要であることが分かってきた。
さらにパイエル板を調べると、一部の細菌は異物として腸管粘膜の外側で共生するのではなく、腸管粘膜の内側に取り込まれ、そこで共生しているものまである。例えばアルカリゲネス菌はパイエル板の内側で生息するが、この菌は体内に入り込み免疫系と連動するという。
腸管免疫システム、「IgA抗体」に何の影響もない
こうしたシステムは一体どのように「免疫」に作用しているのか?
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