イチゴ種子の新たな皮膚への3つのアプローチ 〜ifia Japan 2015展示会セミナー

2015年5月20日〜22日、東京ビッグサイトで、ifia2015「第20回国際食品素材/添加物展・会議」が開催された。同展示会のセミナーからオリザ油化鰍フ「イチゴ種子の新たな皮膚への3つのアプローチ〜セラミド増加だけじゃない」を取り上げる。


イチゴ種子エキス、パウダーや液体として開発

世界中で食されているフルーツのイチゴ。日本では年間約20万トンの生産があり、栃木、静岡、兵庫、福井、奈良などが主な生産地として有名である。イチゴはビタミンC、ポリフェノールのアントシアニン、フラボノイドなどが豊富で、健康機能についても盛んに研究されている。

しかし、イチゴ種子に限定した研究はほとんど行われていない。オリザ油化では、イチゴ種子からフラボノイドであるチリロサイドを主とした機能性成分を多く含む「イチゴ種子エキス」の抽出に成功し、パウダータイプや化粧品として使用できる液体などの開発に成功したことを報告した。

イチゴ種子エキスの美容効果

イチゴ種子エキスはすでにダイエット機能が確認されている。今回同社では、美容効果に関する最新の研究について報告した。

肌の保湿やバリアー機能を担う成分といえばセラミドが有名。他に、天然保湿因子のもとになるフィラグリン、角層の強度を高めるインボルクリンなどがある。

セラミドは肌の角質層と有棘層に多く存在し、セラミドの前駆体であるグルコシルセラミドは顆粒層に存在する。天然保湿因子、つまりバリアー機能の元になるフィラグリンは肌の角質層と顆粒層に、角層の強化担当のインボルクリンは角質層、顆粒層、有棘層のいずれにも存在する。

角質層のセラミドや顆粒層のグルコシルセラミドを増加

イチゴ種子エキスは経口投与でも塗布でも、皮膚やバリアー機能の維持や強化につながることはすでに臨床試験でわかっている。しかし、それがどのようなメカニズムで働いているのか、今回は「ヒト表皮三次元培養モデル」を使用し、実験が行われた。

イチゴ種子エキスにはチリロサイド以外にもケンフェロール3-O-グルコシドなどの機能性成分が含まれているが、イチゴ種子エキスが総合的に肌の保湿に働きかけているのか、それとも特異成分であるチリロサイドによるものなのかを調べるため、「ヒト表皮三次元培養モデル」を2つ用意し、イチゴ種子エキスとチリロサイドのそれぞれを添加し5日間変化を考察した。

その結果、角質層のセラミドも顆粒層のグルコシルセラミドも、どちらのエキスでも有意に増加する結果が得られたという。

セラミド合成酵素を発現

しかしなぜセラミドが増加するのか?
そもそもセラミドが体内で合成される際、GCS(グルコシルセラミドシンターゼ)とGBA(グルコセレブロシターゼ)という2つの酵素を経由して合成されるか、SMS(スフィンゴミエリンシンターゼ)とSMPD(スフィンゴミエリンホジエステラーゼ)という2つの酵素を経由して合成されるか、いずれかのプロセスを経て体内で合成されることがわかっている。

これらの酵素はセラミド合成酵素ともいわれ、これらがなければセラミドは合成されない。セラミドの量を増やしたければ、セラミド合成酵素を発現させる必要がある。

先の実験で、これらの酵素にはどのような影響があったのかを解析したところ、GCSはイチゴ種子エキスで有意に増加するがチリロサイドではほとんど変化が起こらないこと、GBAはイチゴ種子エキスでもチリロサイドでも有意に増加が起こることが発見されたと報告。

SMSについてはイチゴ種子エキスでもチリロサイドでもほとんど変化は起こらなかったが、SMPDについては両方において有意に増加が起こったという。

食品や化粧品への幅広い利用が期待

さらに天然保湿因子のもとであるフィラグリン、そして角層を強化するインボルクリンについてもイチゴ種子エキス、チリロサイドのいずれもが発現量を増加させることに関与することが解明されたという。

つまり、潤いのある肌を維持するのに欠かせないセラミド、フィラグリン、インボルクリンという3つの成分を、イチゴ種子エキスもイチゴ種子エキスの主要機能性成分であるチリロサイドも、有効に増加させる、ということがこの実験によりわかったという。

さらにセラミドについてはセラミドを合成させるために遺伝子の発現に関与していることが重要だと強調した。

イチゴ種子エキスは内外からアプローチできる新たな美容機能を持つ素材として、食品にも化粧品にも幅広く利用できる素材であるとした。


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