「遺伝的要因」と「環境的要因」
1989年、英国脳栄養学者のマイケル・クロフォード博士が、自著の中で「日本の子どもの知能が欧米の子どもと比べて高いのは魚を多く食べているから」とした。しかし、日本では食の欧米化により魚離れが進んでいるというのが現状だ。
「頭が良くなる」というのは「脳の機能が良くなること」とも換言できる。特に乳幼児期においては脳の機能が良くなると、知能も発達するという側面が大きい。
人の脳の発達は胎児期から幼児期にかけてものすごいスピードで進むが、胎児期から乳幼児の知能発達には「遺伝的要因」と「環境的要因」の2つが大きな影響を与えると清水氏。
母親からの影響を多大に受ける
「遺伝的要因」として、先天異常があると知能の発達に悪影響を及ぼす。明らかな異常がなくても遺伝的に親の影響を受ける。特に子供の知能の発育は母親からの影響を多大に受けていることが明らかとなっているという。
また、「環境的要因」による影響も大きい。その最たるものが「栄養状態」。母体が胎児の発達・発育を阻害する影響を受けると、そのまま胎児にも影響する。
近年は妊娠期の母体の栄養や疾患だけでなく、妊娠前の母体の健康状態も胎児の脳の成長に多大な影響を与えていることが発表されていると清水氏。
母体の栄養不良、胎児の脳のシナプス発達障害
また、出生後の胎児の栄養状態や産後の母子の「精神状態」も子供の脳の発達に大きな影響を与える。受精から生後8ヶ月までは、脳神経の発達が生涯で最も活発になり、脳のシナプスのネットワークの大部分が形成される。
生後1年で脳の重量は約2.5倍になる。脳神経や脳の発達は成人になった後も続くが、そのスピードや活性状態は胎児期から生後8ヶ月までが生涯で最大である。
胎児期前半に母体が栄養障害になると、胎児の脳神経細胞の産生が確実に阻害され、脳のシナプス発達障害が起こる。
また胎児期後半から乳児期の高度な栄養障害は髄鞘化(神経細胞の軸索の線維が髄鞘という絶縁体で包まれること)を引き起こすこともわかっているという。
脳の栄養不足、低体重児や消化器疾患を起こす
脳の発達障害が起きると知能だけでなく体の成長も阻害される。例えば、生後6ヶ月で呼吸不全で亡くなった赤ちゃんの脳をみると、脳神経の発達が非常に悪い。
他にも、早産、低体重児や消化器疾患、肝疾患、膵疾患などの症状が見られることが多い。
最近、日本で未熟児(2,500g以下)の出生が増えており、10人に一人が未熟児で誕生している。未熟児の場合、学童期以降の精神発達障害に陥るリスクが高くなることもわかりつつある。
例えば、ADHA(注意欠陥多動性障害)の子どもは、正常体重で産まれた子どもの5.7%にしか見られないが、低体重時の場合は約3倍の18.5%の子どもに見られる。
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