年間2億8700万トンの塩が生産
日本ではさらりとしたまろやかな塩が当たり前に入手できる。しかし、世界ではどのような塩が流通しているのか。そもそも塩にはどのような種類があり、原料はどんなもので、製法にどのような違いがあるのか。
塩にはいろいろな種類がある。土地ごとの風土や気候に合わせて、岩塩や海水などを主な原料にさまざまな製法によって製造されている。また食用塩については国ごとに品質基準や制度も異なる。
眞壁氏は韓国、中国、アメリカ、ヨーロッパでどのような塩の流通、制度があるのかを調査し、報告を行った。
そもそも世界では年間2億8700万トンもの塩が生産されているという。そのうち岩塩は2/3、天日塩は1/3という割合。日本では年間100万トンの塩が生産されているが、それは世界の生産量のわずか0.3%に過ぎないという。
食用での用途が多いのは東アジアの国々
日本は塩の自給率が非常に少ないが、それに比べ中国は自給率91% 、アメリカは78%、ドイツ、インド、オーストラリア、カナダ、メキシコなどは自給率100%を超えている。
しかもそれらのすべてが食用というわけではなく、工業用やソーダー工業用という用途もある。工業用としては主に医薬品、道路の凍結防止、革製品、家畜などに使用されるという。
塩の食用においては。塩の摂取量(一日あたりの平均)が多いのは韓国や日本など東アジアの国々。ラテンアメリカや南アフリカの国々はやや少なめで、世界各国で平均すると塩の平均摂取量は約10gとなる。
ヨウ素添加塩でヨウ素不足の疾病が7億人まで減少
塩は「私たち人間が必ず毎日摂取するもの」で、「ほぼ一定量を摂取」し、「遠方に供給することができる」という3つの大きな特徴がある。またその機能性としては体内で必要な微量要素(ヨウ素、フッ素、鉄など)を運ぶ役目があり、生命維持に欠かせない。
日本や韓国では海藻を食べる食文化があるためヨウ素が不足することはほとんどない。しかし、世界では数年前まで16億人がヨウ素不足による疾病(甲状腺トラブル等)が起こっていた。
そこで「ヨウ素添加塩」の流通がはじまる。この塩の登場によりヨウ素不足の疾病が7億人まで減少したといわれるほど、塩とヨウ素、そして私たちの健康は密接に関係しているという。
日本でも栄養成分表示に塩の明記義務化始まる
ちなみに日本ではヨウ素は食品添加物として認められておらず、ヨウ素添加塩は販売されていない。しかし中国やポーランドでは食用塩にヨウ素を添加することが義務づけられている。
食品表示についてはどうか。栄養成分表示に塩を明記することは1994年アメリカでの義務化からスタートした。日本では今年2015年4月から義務化がスタートし、来年からはEUでも義務化がスタートする。
やはりどの国でも塩を「適量」摂取することと健康維持の関係は認識されるようになっている、と眞壁氏は解説。では国ごとに食塩の「扱い」にどのような違いがあるのか。
韓国では食文化に欠かすことのできない食材
【韓国の塩事情】
韓国では生産量の約8割が「天日塩」ということが挙げられる。天日塩の場合、生産量が天候に左右されやすいため、毎年生産量に数十トンという大きな差が生じる。
また、小瓶やチャック付きパックで販売されている塩も存在するが、3kg〜5kg天日塩がポリ袋に詰められて販売されているのが当たり前で、一般的にも塩は大袋で購入するという。
このような大袋が主流なのはやはり食文化と関係しており、韓国の漬け物キムチやチャガチ作りに大量の塩が欠かせいないため。大袋で販売される塩はkgあたり126円程度と価格もリーズナブルである。
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