健康食品とどう向き合えばいいのか
〜日本臨床栄養協会「第4回市民公開講座」


2015年12月13日(日)、昭和女子大学で、「私たちは健康食品とどう向き合うのか」をテーマに、「一般社団法人日本臨床栄養協会 第4回市民公開講座」が開催された。この中から、医師の久保 明氏(抗加齢センター長)の基調講演「医師からのメッセージ」を取り上げる。


サイエンスとは常に変わるもの

健康食品とどう向き合えば良いか、医師から言えることは、サイエンスとして健康食品と向き合う、相談できるプロ(主治医、主治栄養士、主治薬剤師など)を持つ、自らの心身の声に耳を傾ける、の3つという。

例えば、今話題の「ココナッツオイル」など、メディアから流れる情報はサイエンスとしては不十分。

サイエンスで、一番大事なのは「Nの数(大規模臨床試験の被験者となった人の数)」で、数名の被験者で行われた臨床試験ではあまり意味がない。

最低でも1,000名以上の被験者を対象に、半年、一年と時間をかけて調査、メタ解析を行わなければ十分なサイエンスとはいえない。 しかも非常に重要なことだが「サイエンスとは常に変わるもの」と久保氏。

サイエンスに基づいた判断や情報の取捨選択が難しい

そして、サイエンスはyes/noだけで割り切れるものではない。例えば同じ病名/症状で病院に行っても、ある病院ではサプリメントや栄養療法を勧め、別の病院ではそれを否定することもある。

そのため消費者は「サイエンス」という観点を頭の隅に置き、自ら検証する必要がある。

現在、官公庁で健康食品の情報を発信している。しかし、それを見ているのは国民の5%以下に過ぎないといわれている。つまり多く一般消費者は自分一人ではサイエンスに基づいた判断や情報の取捨選択ができていない。

プロの力を借りて健康食品を上手に活用

そのため、プロの力が必要で、よく言われるのが「かかりつけ医を作ろう」というものだが、これも難しい。栄養に詳しい医師は少なく、また患者と医師との相性もある。

しかし、健康食品や幅広い意味で健康について語れるプロは医師以外にもいる。例えば栄養士や薬剤師。栄養士の場合、「栄養カウンセリング」を受けることで、自らの主治栄養士になってくれることもある。また薬剤師もいい。

特に健康食品については薬剤師から適切なアドバイスが受けられる場合が少なくない。またサプリメントアドバイザーの人たちもいる。これらプロの力を借りれば健康食品をもっと上手に活用できるようになるはず、と久保氏。

自身の心身の声に耳を傾ける

自身の心身の声に耳を傾けることも大切。メディアや友人のアドバイスに惑わされやすい人であれば「使用期間は3ヶ月」など制限を設けてみるのも一策である。

一方で、「自分の体のことは自分が一番良くわかっている」と言い切る人もいるが、自覚症状というものは半分程度しか現れない。そのため健診や医師の問診が必要である。

米国と日本とのサプリメント市場の違い

今回の日本における機能性表示食品制度はアメリカのダイエタリーサプリメント制度を手本にスタートした。しかし、米国と日本ではサプリメントに対する考え方が根本的に違っていると久保氏。

売れているサプリメントをみると、米国の場合、マルチビタミン、プロテイン、ビタミンB群、ビタミンKといったもの。

しかし、日本では、青汁、グルコサミン、マルチビタミン&ミネラル、ヒアルロン酸といったもので、CMの放送数などのメディアの影響、また高齢者からの支持などでサプリメント市場が形成されている。

エビデンスのレベルにばらつき

既に170件以上の商品が機能性表示食品として許可されているが、エビデンスのレベルにばらつきが見られる。

健康食品による健康被害は実際多いとはいえないが、ゼロでもない。健康食品の良し悪しではなく、個々人に合っているか、適量かなどの問題である。

「バランスを考えて」と言われても、そのバランスに個人差がある。人それぞれ筋肉量、骨量などすべて異なる。そこがプロのアドバイスが必要な領域となる。

すべて薬まかせというのもどうか

といって、すべて薬まかせというのもどうか。新薬のリスクはあまり報道されないが、実際は問題も起きている。

例えば認知症の薬は現在4種類あるが、どれも患者の3割程度にしか効果が認められていない。それでも医薬品として許可されている。

では健康食品とどう付き合えばよいか。まず頭に入れておくべきポイントとして「医薬品での解決が不十分な領域」で活用してみる、というもの。

「倦怠感や不定愁訴、目や感覚器のトラブル、関節障害、ダイエット、認知症」などは健康食品を活用する余地が十分にある。

例えば、高用量ビタミンEでアルツハイマー型認知症の進行を遅らせられるというエビデンスも揃いつつある。

腸内フローラや遺伝子でさえ個人レベルでどうなっているのかを調べられる時代になった。メディアの情報だけを鵜呑みにしない、プロを上手に利用し、さらに自身をよく知ること。このポイントを抑えて健康食品と上手に付き合って欲しい、と久保氏はまとめた。


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