キウイフルーツ由来のKFPEの肉・魚介類軟化効果〜メディケアフーズ展2016セミナー

2016年1月26日、27日、東京ビッグサイトで、「メディケアフーズ展」が開催された。同展示会のセミナーより、ユニテックフーズ(株)の新素材 「キウイフルーツ由来のKFPE」を取り上げる。


浸すだけで食肉・魚介類が柔らかく

肉や魚の食感を柔らかくしたり、噛み切りやすくしたりするために、食品添加物の中でも軟化剤がよく用いられる。 そんな軟化剤の新たな選択肢として、キウイフルーツ由来のKFPE(キウイフルツーツパウダーエクストラクト)に注目が集まっている。

KFPEとは、タンパク質分解酵素「アクチニジン」を豊富に含む果汁由来の食肉・魚介類軟化剤のことで、浸漬する(浸す)だけの簡単なオペレーションで食肉・魚介類を柔らかくする。

肉や魚を柔らかくする従来の添加物には「PH調整剤」「増粘多糖類・リン酸塩」「タンパク質分解酵素(パパイン酵素など)」の3種類がある。「PH調整剤」は肉や魚のタンパク質内に入り込み、タンパク質繊維を切断することで軟化作用が得られる。しかし柔らかくなり過ぎてしまうことや、適度な食感までもが失われてしまうというデメリットもある。

従来の添加物とは全く違う作用で肉や魚を軟化

「増粘多糖類・リン酸塩」は、肉やタンパク質内に水分と一緒に入り込み、タンパク質を膨張させることで柔らかさが得られる。しかし食品中の水分量が増加するため、肉が水っぽくなったり衛生管理が厳しくなるというデメリットも生じる。

「タンパク質分解酵素(パパインなど)」は酵素のパワーによって肉や魚のタンパク質を破壊することで軟化硬化が得られるが、破壊力が強いため、型くずれの問題が生じやすい。

長時間処理を施すと、肉や魚が融解することもある。しかしKFPEはこれら従来の添加物とはまったく違う作用で肉や魚を軟化させることができという。

KFPE、「低温活性」など4つの特徴

KFPEの特徴は主に4つ。「特定のタンパク質のみを切断できる」「低温で活性する」「限定的酵素反応を持つ」「シンプルな使用方法」である。

具体的に、KFPEはH7付近の結合組織のみを切断する。これにより肉や魚の形を崩すことなく適度な硬さと元の形を維持したまま必要な柔らかさに仕上げることができる。

また低温(2℃〜)活性するため、流通温度として定められている4℃を十分にカバーし、微生物の発生リスクが非常に少ないというメリットがある。

自然な柔らかさを保つ

さらに「筋原繊維」のみを特異的に分解するため、酵素の過剰反応や食感ロスを起こすこともほとんどない。それを「浸漬する」という非常に簡単な方法で実現させる。

浸漬時間は1時間〜24時間と幅広く、これはKFPEの添加量(どれだけ軟化させたいか)によって調節が可能。

しかしながら、肉に関しては、3時間の浸漬で硬さが30%減少、6時間の浸漬で55%減少、それ以降は3日浸漬しても7日浸漬しても硬さは55%が維持されたままで6時間の浸漬と変わらない。

つまり過剰に柔らかくしてしまうことはなく、自然な柔らかさを保ち続ける、というメリットがKFPEにはある。

介護食など幅広く活用

これらのKFPEの4つの長所を、通常食だけでなく介護食へも幅広く活用させていきたいという。介護食を必要とする高齢者にとって、どのように栄養を摂取するかは非常に重要な問題となる。咀嚼することで脳機能が活性したり、口腔内環境が整ったり、腸内環境が整う。

そのため介護食だからといって流動食が望ましいとは言い切れない。また介護食に限らず、高齢者のタンパク質摂取量の減少やそれに伴うロコモティブシンドロームやサルコペニアの問題が注目されている。

しかし、高齢になるにつれ嚥下障害、咀嚼力の低下、唾液の減少などがおこりやすく、加齢とともに肉や魚を敬遠しがちになる。

30分の加熱調理で硬さが50%低下

KFPEを用いると、肉や魚介類を味や見た目を損なうことなく適度な柔らか食材となる。またKFPE処理をした食材は、調理時間の短縮にもつながり介護側にもメリットになるという。

例えば、豚肉は加熱すると硬くなるが、豚ロース100gにKFPEを6時間浸漬させれば硬さが30%減少する。またスジを特異的に切る(限定的酵素反応を持つ)ため、食感として噛み切りやすくなり、咀嚼の軽減に役立つという報告も多くある。

高齢者に敬遠されやすい「牛スジ肉」100gに対しKFPE0.3gを3時間浸漬したところ、30分の加熱調理で硬さが50%低下したという。

介護食を中心に、「柔らか食の提案」に貢献

肉の軟化効果だけでなく、調理時間の短縮はあらゆる人に大きなメリットになる。肉だけでなく、魚にも有効で、タラのように繊維が多いものは介護現場では使用が難しいが、KFPEで処理すると柔らかさだけでなく繊維感も改善され、安心して食べてもらえるようになる。

KFPEは化学溶液を使用せずに抽出され、また一定の品質を保っていて安全性も高く、優れた特徴を持った新たな軟化剤である。介護食を中心に、新しい「柔らか食の提案」に貢献できれば、とした。


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