抗コレステロール素材、植物スタノールエステル〜ifiaJAPAN2016セミナー

2016年5月18日〜20日(金)、東京ビッグサイトで、ifiaJAPAN2016「第21回国際食品素材/添加物展・会議&第14回ヘルスフードエキスポ」が開催された。同展示会セミナーより、ユニテックフーズ鰍フ抗コレステロール素材、植物スタノールエステルについて取り上げる。


日本成人の約58%が高コレステロール

WHOの発表によると世界の成人の約50%が高コレステロールであり、日本でも成人の約58%が高コレステロールとされている。

つまり日本人の約7,000万人がコレステロールの問題を抱えている。そのためか、機能性表示食品でも「抗コレステロール」商品への注目度が高い。

血清中のコレステロール中でも特に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は心疾患の主なリスクファクターである。そのためLDLコレステロール値を低下させ、さらにそれを低めで維持することが心疾患の予防に最も重要なこととなる。

植物スタノール、LDLコレステロールを約10%低下

健康診断などで高いLDLコレステロール値を注意され、食事や運動で一時的に下げることに成功しても、それを維持することは難しい。そのため、LDLコレステロールを下げる食品を日々摂取する工夫に関心が集まっている。

そうした食品成分として注目されているのが「植物スタノール」である。植物スタノールはそもそも野菜に多く含まれる成分だが、その構造がコレステロールと非常に類似している。

植物スタノールは水や油に溶けないため、摂取すると構造が類似したコレステロールと結合し、そのまま体外に排出される。

実際、植物スタノールを1日2g、2週間継続摂取すると、LDLコレステロールを約10%低下させることが報告されている。しかも体に必要な善玉コレステロール(HDLコレステロール)値を変化させることはないという。

世界各国の公的機関により安全性が確認

植物スタノールのコレステロール低下作用は、日本人を対象にした試験を含む70以上の研究論文にて報告されている。

その研究は多岐に渡り、健康な男女、子ども、コレステロール値の正常者、境界域者、高コレステロール者、メタボリックシンドローム該当者、またこれらの異なる人種の人たちなど、さまざまな対象者により効果が立証されている。

そのため多くの医師や専門家、有識者も植物スタノールの積極的摂取を推奨しており、また安全性も世界各国の公的機関により確認されている。日本でも既にトクホで認められている。

しかも安全性が高いことから日本では食品添加物ではなく食品に区分されている。今後、機能性表示食品としての表記も可能である。

「植物スタノールエステル」を開発

ただ、コレステロールの低下目的で食品から植物スタノールを摂取するのは量の問題から非常にむずかしい。また、できるだけ毎日摂取することが望ましいが、植物スタノールそのものは水や油に溶けないため、食品添加物として食品に付加することは難しい。

そこでフィンランドのRasio社では独自の特許技術で「植物スタノール」と「脂肪酸」をあわせた重合体「植物スタノールエステル」を開発するに至ったという。

「植物スタノールエステル」は、植物スタノールと同様、類似構造のLDLコレステロールに結合し、消化器官からLDLコレステロールが吸収されるのを防ぐ。

コレステロールには食品由来と胆汁由来の2種類があるが、両方のコレステロールの吸収を阻害することもわかっている。さらに「植物スタノールエステル」も植物スタノール同様、体内にはほとんど吸収されないので、結合したLDLコレステロールと一緒に体外へスムーズに排出される。

コレステロール低下マーガリンとして登場

植物スタノールをうまく食品に添加させるためにフィンランドで誕生した「植物スタノールエステル」。これを配合した食品が「Benecol」である。「Benecol」とは、現在は食品ブランドとして知られるが、スタートは「世界初のコレステロール低下マーガリン」として登場した。

現在、このマーガリンは世界30カ国以上で販売され、Benecolは植物スタノールエステルを配合したドリンクやキャンディなど140商品ものアイテムを販売する世界ブランドにまで成長している。その売上は年間3,000億円以上という。

Benecolブランドとそれを生み出したRasio社は20年以上もコレステロール低下食品の研究開発、マーケティングという経験と実績を持っている。現在はヨーロッパだけでなく北米、南米、アジアで販売されており、今後日本でも注目されそうだという。


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