機能性表示食品の表示と現状について
〜第90回「食と環境のセミナー」


2016年5月31日(火)、「今から求められる食品の機能成分の開発と今後の課題」をテーマに、第90回「食と環境のセミナー」が日本橋社会教育会館にて開催された。この中から、内藤 瑞恵氏(消費者庁食品表示企画課 課長補佐)の講演「機能性表示食品の表示と現状について」を取り上げる。


機能性表示食品制度がスタートし1年が経過

昨年6月より機能性表示食品制度がスタートし1年が経過する。この制度により、食品で効果・効能を表示できるものは「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」「機能性表示食品」の3つとなった。

施行より1年が経過して機能性表示食品の認知度は高まってきてはいるが、まだまだトクホには追いついていない、というのが消費者庁の認識だという。

そもそも機能性表示制度は、既存の2つの制度の課題をカバーすべく誕生した。その課題とは「栄養機能食品」では栄養成分が非常に限定されていること。

また「トクホ」では有効性や安全性に関わるヒト試験や許可までのコストが莫大で中小事業者にハードルが高過ぎるということがあった。

この2つを解消すべく機能性表示制度が誕生したが、現状これらの課題はクリアしつつある、と内藤氏。

300件を超える届出

制度施行から1年、2016年5月31日時点の機能性表示食品の届出状況は、公表件数で既に308件に達している。内訳はサプリメント形状の加工食品が145件、その他加工食品が160件、生鮮食品が3件。届け出の所在地では東京、大阪、愛知の3都道府県で204件を占めている。

機能性表示制度によって新たに表示可能となったものとしては、「内臓脂肪をはじめとし体脂肪を減らす機能がある」「便通を改善し、腸内環境を整える機能がある」「血圧低下作用があり、血圧が高めの方に適した機能がある」「手元のピント調整機能を助ける機能がある」「肌の潤いに役立つ機能がある」「丈夫な骨を維持する機能がある」「膝関節の曲げ伸ばしを助ける機能がある」など。

これにより、これまで表示できなかった効果・効能が明確に示され、消費者の選択肢の幅や訴求効果が高まっている。

現在、事業者が消費者庁に「機能性表示」の届け出を行うにあたり、多くはスムーズに受理されているが、中には基本的な書類の抜け漏れやミス、不適切な表示で認められなかったりするケースもあるという。

明らかに疾病の予防に当たる表現はNG

不適切な表示例としては、明らかに疾病の予防に当たるもの。例えば「動脈硬化を防ぐ」「骨粗鬆症を予防する」「インフルエンザを予防する」といったものは認められない。他にも「血液をサラサラにする」「低下した肝機能を改善する」といった暗示表現も禁止されているため注意が必要である。

他にも「健康の維持と増進を超えたもの」、例えば「皮膚、爪、髪が丈夫で美しくなる」「朝食べれば夕食までの摂取カロリーを抑える」といった表現も認められない。もちろん、科学的根拠に基づかない機能性の説明もNGである。

施行後も制度の見直しや検討を

機能性表示を希望する事業者側において、新制度のルールはこの1年でだいぶ浸透してきている、という手応えを感じているという。

とはいえ、この制度はスタートした当初からいくつかの課題もあった。そのため、施行後も運用状況を踏まえて制度の見直しや検討を重ねることが必要で、実際に現時点でもいくつかの見直しが行われているという。

例えば、栄養成分や機能性関与成分が明確でないものの取り扱いについては、今年の1月から検討会を立ち上げ、すでに5回の検討会が17名の専門家によって行われている。

検討会は今年の秋頃までに後5回行われる予定で、10回目では報告書の取りまとめが行われる予定だ。また今年の3月31日にガイドラインの一部が改正され、「食品衛生法に抵触しないかの有無」や「トクホの審査における安全性評価情報を記載する旨を追記する」といった、内容の一部修正があった。

オンラインで事業者も消費者もスムーズにアクセス

またこの4月から届け出方法が郵送ではなくオンラインに変更となった。これにより、事業者は届け出がスムーズになり、記入漏れなども自動的にチェックされ、基本的なミスが激減しているという。

また消費者もキーワードにより検索が簡単にできるようになり、知りたい商品情報にスムーズにアクセスできるようになっている。

しかしながら、この機能性表示制度を適切に運用し、消費者と事業者に対し普及啓蒙や理解促進を図るにはまだまだ消費者庁としても積極的な活動が必要と考えているという。

そのため制度の説明会は随時開催し、消費者向け・事業者向けのパンフレットの作成や公表、また消費者庁サイトからは各種パンフレットがダウンロードできるなど、啓蒙活動が続けられている。

調査事業の実施にも力を入れる

今後はこの制度が適切に運用されているかを確認するために調査事業の実施にも力を入れていくという。

「届け出られた研究レビューの検証事業」「制度に対する消費者の意向に関する調査事業」「機能性に係るエビデンスのセカンドオピニオン事業」などが重要と考えられ、実際に少しずつ着手されている。

制度が適切に運用されるため、消費者庁、事業所、消費者の3方向からの理解と協力が引き続き不可欠であるとまとめた。


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