中国で日本の昆布を薬品(ヨード)として重宝
これまでとは全く違う昆布の使い方で昆布水を作り、料理をする「昆布革命」が話題になっている。発案者である喜田條氏が昆布水を作るまでの過程と昆布の健康パワーについて語った。
昆布水とは、だし昆布を1o幅にカットし1Lの水に対し10gのカット昆布を入れ、3時間放置し、昆布のエキスを抽出した水のことである。
日本の昆布の95%は北海道産で、残りの5%は青森、岩手、宮城といった東北3県で賄われている。喜田條氏は大阪で父の代から創業70年の昆布問屋を営んでいる。
大阪では当然昆布は採れない。ところが江戸時代から明治時代にかけて日本海海運で活躍した「北前船」により元禄のあたりから昆布が大阪に入って来た。
同じくかつお節も土佐から大阪に入って来ていたが、かつお節は「東下り」といって江戸にまで行き渡ったのに対し、昆布は「東下り」をせず、当時財政難だった薩摩藩が琉球へ運び、清(中国)へ密貿易をした。
というのも中国では日本の昆布を薬品(ヨード)として重宝していた。これが非常に高値で取引され薩摩藩の財政を立て直すのにも一役買った。そこで昆布は大阪の商人にとっても大事な商品となり、食生活のなかにも昆布が浸透していったという背景がある。
世界が「日本食」に注目
ところで、味覚には5つの種類ある。塩味・甘味・苦味・酸味、そして旨味である。しかし旨味が5味として認められたのは2001年、わりと最近のことである。
1908年、湯豆腐が好物の池田菊苗氏(東京帝国大学理学部教授)が、お水に昆布を浸けただけのお湯で食べる湯豆腐がなぜこんなにも旨いのか、研究を重ねた。
結果、最後に残った白い粉が旨味であることを突き止め「グルタミン酸」と名づけた。これは後に日本の10大発明の一つといわれるようになる。
しかし当時は味覚は4味というのが常識で、2000年にアメリカ人により舌の味蕾にグルタミン酸受容体があることが発見されるまで旨味が5味として認められることはなかった。
そんな中で世界は「旨味」や「健康」という要素がぎっしりつまった「日本食」に注目し、食品や外食を選ぶポイントも「おいしくて健康かどうか」がトレンドになっている。
昆布、生産量も消費量も激減
とはいえ、昆布は全く売れていないという。現在、日本では45年前の半分の量しか昆布が消費されなくなっているという。
生産量も消費量も激減している昆布だが、食卓から消えた理由について昆布協会がアンケート調査をしたところ、最大の理由は「顆粒だしを使うから」でということが分かった。
「だし昆布より顆粒だしを使う理由」として、「だし昆布の使い方がわからない」「和食は家で作らない」「出し殻昆布を捨てるのがもったいない」の3つに集約された。
そこで喜田條氏はこの3つの問題点を払拭し、昆布だしを復活させるためにさまざまなことを試みたという。
昆布のうまみ、表面だけでなく断面からも
10年前まで、日本で一番昆布が消費されていたのは沖縄だった。沖縄では昆布を利用したさまざまな家庭料理があり、昆布を「クーブ」と呼び、中でも豚肉といためた「クーブイリチー」は定番料理であった。
クーブイリチーでは、出汁のでた後のだし殻昆布を1oに切って使用する。そこで喜田條氏は昆布を1oサイズにカットするというヒントを得たという。喜田條氏はカットした昆布で出汁を取り味噌汁を作ると、いつも作っている味噌汁より味が濃く感じた。
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