日本の昆布で世界を健康に〜ウエルネスフードジャパン「第5回スポーツフードEXPO」

2016年8月2日〜4日、東京ビックサイトで、ウエルネスフードジャパン「第5回スポーツフードEXPO」が開催された。同展示会セミナーより、鞄V満大阪昆布の「昆布で世界を健康にしたい」を取り上げる。


中国で日本の昆布を薬品(ヨード)として重宝

これまでとは全く違う昆布の使い方で昆布水を作り、料理をする「昆布革命」が話題になっている。発案者である喜田條氏が昆布水を作るまでの過程と昆布の健康パワーについて語った。

昆布水とは、だし昆布を1o幅にカットし1Lの水に対し10gのカット昆布を入れ、3時間放置し、昆布のエキスを抽出した水のことである。

日本の昆布の95%は北海道産で、残りの5%は青森、岩手、宮城といった東北3県で賄われている。喜田條氏は大阪で父の代から創業70年の昆布問屋を営んでいる。

大阪では当然昆布は採れない。ところが江戸時代から明治時代にかけて日本海海運で活躍した「北前船」により元禄のあたりから昆布が大阪に入って来た。

同じくかつお節も土佐から大阪に入って来ていたが、かつお節は「東下り」といって江戸にまで行き渡ったのに対し、昆布は「東下り」をせず、当時財政難だった薩摩藩が琉球へ運び、清(中国)へ密貿易をした。

というのも中国では日本の昆布を薬品(ヨード)として重宝していた。これが非常に高値で取引され薩摩藩の財政を立て直すのにも一役買った。そこで昆布は大阪の商人にとっても大事な商品となり、食生活のなかにも昆布が浸透していったという背景がある。

世界が「日本食」に注目

ところで、味覚には5つの種類ある。塩味・甘味・苦味・酸味、そして旨味である。しかし旨味が5味として認められたのは2001年、わりと最近のことである。

1908年、湯豆腐が好物の池田菊苗氏(東京帝国大学理学部教授)が、お水に昆布を浸けただけのお湯で食べる湯豆腐がなぜこんなにも旨いのか、研究を重ねた。

結果、最後に残った白い粉が旨味であることを突き止め「グルタミン酸」と名づけた。これは後に日本の10大発明の一つといわれるようになる。

しかし当時は味覚は4味というのが常識で、2000年にアメリカ人により舌の味蕾にグルタミン酸受容体があることが発見されるまで旨味が5味として認められることはなかった。

そんな中で世界は「旨味」や「健康」という要素がぎっしりつまった「日本食」に注目し、食品や外食を選ぶポイントも「おいしくて健康かどうか」がトレンドになっている。

昆布、生産量も消費量も激減

とはいえ、昆布は全く売れていないという。現在、日本では45年前の半分の量しか昆布が消費されなくなっているという。

生産量も消費量も激減している昆布だが、食卓から消えた理由について昆布協会がアンケート調査をしたところ、最大の理由は「顆粒だしを使うから」でということが分かった。

「だし昆布より顆粒だしを使う理由」として、「だし昆布の使い方がわからない」「和食は家で作らない」「出し殻昆布を捨てるのがもったいない」の3つに集約された。

そこで喜田條氏はこの3つの問題点を払拭し、昆布だしを復活させるためにさまざまなことを試みたという。

昆布のうまみ、表面だけでなく断面からも

10年前まで、日本で一番昆布が消費されていたのは沖縄だった。沖縄では昆布を利用したさまざまな家庭料理があり、昆布を「クーブ」と呼び、中でも豚肉といためた「クーブイリチー」は定番料理であった。

クーブイリチーでは、出汁のでた後のだし殻昆布を1oに切って使用する。そこで喜田條氏は昆布を1oサイズにカットするというヒントを得たという。喜田條氏はカットした昆布で出汁を取り味噌汁を作ると、いつも作っている味噌汁より味が濃く感じた。

大きくカットしたものと1oでカットしたものでそれぞれ出汁の濃度に変化があるのか食品分析センターに依頼したところ、なんと同じ昆布の量でも1oカットのほうが137%も濃度が高いことがわかった。

これまで昆布からでる旨味は表面から出ると考えていた喜田條氏であったが、昆布の断面からも出汁がでるということに気づいたという。

昆布水の調理で、どんな料理も美味しくなる

また、水だしすることで1週間〜10日は日持ちするということも発見した。水だしした昆布だしそのものはそのまま飲んでもそれほどおいしいわけではない。しかしこれでご飯を炊いたり味噌汁を作ったりすると驚くほど美味しくなる。

ごはんは高級寿司屋のしゃりレベル、味噌汁は料亭の味、カレーライスも洋食屋レベルで大量に作ってもその日のうちに完食、その美味しさと驚きで、昆布水で料理することにのめり込んだという。

和洋中のあらゆる料理で使用する水を昆布水に置き換えて調理するだけで、とにかくどんな料理も美味しくなる旨味のパワーに驚いたという。イタリアンも昆布水で作るようになったので、だし殻昆布はオリーブオイルを絡めて冷蔵庫で保管していた。

それをある日チャーハンに入れてみたら、そのチャーハンも驚くほどおいしくて、だし殻料理も数々生み出した。

ハンバーグ、ギョウザ、ハムエッグ、ただ醤油に浸けておくだけでも佃煮になるし、酢に浸ければ酢の物としても美味しい。蜂蜜につけてヨーグルトのトッピングにするのも家族から好評だという。

昆布水料理で体重も減少

気がついた時には、「だし昆布の使い方がわからない」「和食は家で作らない」「だし殻昆布を捨てるのがもったいない」の3つの問題点をすべて解決していた。

1oにカットし水につけるだけのだし昆布を販売する、和食に限らずあらゆる料理の水を昆布水に置き換えてもらう、だし殻昆布の簡単レシピを提案する。

これを従来の顧客に「昆布革命」というタイトルでDM送付したところ、たまたま目にしてくれたNHKの関係者から問い合わせがあり「あさいち」に出演。瞬く間に「昆布革命」は全国に知られるようになり、いまでは海外用パンフレットも数カ国語で用意されるに至ったという。

昆布水料理に没頭していた数年間で、気がつくと100kg近くあった体重は70kgまで減少し、高血圧も消えていたという。これは昆布にあるラミニンとカリウムの作用であることがわかったそうだ。

肥満解消に糖尿病や高血圧改善など

「美味しさ」というのは国や地域で異なる。そのため昆布水で作った料理が世界に通じるかはわからない。しかし「健康」の基準は各国共通だ。いまは昆布水料理を飛び越え「昆布で世界を健康にする」をテーマに活動をはじめた喜田條氏。

趣味のお茶や落語はすべてやめて、残された時間はすべて「昆布」の普及に使うことを決めて日々活動をしているという。

すでにわかっている昆布の健康効果としては、肥満解消作用、糖尿病や高血圧改善、便秘改善作用、脳活性作用など。他にもヨードやビタミンB2による肌荒れ予防作用、カルシウムによるストレス低減作用などがある。

欧米では「カリウム」と寿命の関係の研究などもはじまっているが、これは非常に興味深い研究だという。昆布にはまだまだ知られざる魅力があるはず、と喜田條氏はいう。まずはだし昆布を使って「昆布水」料理を試してみて欲しいと語った。


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