どんな栄養素をどれだけ摂取するかによって全く違う体に
冒頭で、ナード氏はある一枚のモノクロ写真を私たちに紹介した。その写真には3匹の子豚が写っている。
ナード氏は20年以上も栄養学に携わっているが、栄養学を学び始めた当初の20年以上前に見たある1枚の写真がこの「3匹の子豚」の写真であり、この写真を未だに忘れることができないという。
というのも、そこに写っている3匹の子豚はなんと三つ子であるにもかかわらず、全くサイズが違うからだ。
20年前はまだそのような実験をすることが許されたそうだが、3匹の子豚にそれぞれ「必要最低限の食事」「栄養バランスと糖制限をかけた食事」「標準食」を1年与えて変化を観察した。
結果、最低限の子豚はとても小さく、バランスのとれた食事の子豚はミドルサイズ、そして標準食の子豚は先の2匹の2倍近いサイズにそれぞれ成長した。
その写真はまさに遺伝的要素だけでなく、個体がどんな栄養素をどれだけ摂取するかによって全く違う体を得ることになることを示した良い例の1つだと解説した。
高騰する先進国の医療費
もちろん環境や遺伝的要因は個体差や病気を作る大きな要因となる。しかし何をどれだけ、そしていつどのように食べるか、私たち一人一人が「食」を正しく選択する必要に迫られている。
例えば、ビュッフェに行き、「私が健康になるためにどれを選べばいいですか?」と質問されても、それに答えることはできない。
なぜならその人の見た目やその日の体調だけでなく、日頃の運動量やその前後に食べた、あるいはその後食べる予定の食材など、よりパーソナルな情報がなければ最適な食材を選ぶことができないからだ。
しかしそれくらいパーソナルに「何をどの程度食べるべきか」を各々が知る必要に迫られている。なぜなら医療費が恐ろしく高騰しているからだ、とナード氏。特にアメリカの医療費は桁外れであるし、これは先進国共通の課題といえる。
今求められる「個別化栄養」
この大きな問題を解決するために個人が「予防」と「予防へ実際に投資する」ことが求められている、とナード氏は指摘する。しかし健康な食事をガイドライン化することは非常に難しい。
今求められているのは「個別化栄養」だ、という。そして個別化栄養を実現させるために必要なものは3つあるという。
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