これらは、一般企業に自由に利用できるものとしてすでに公開されており、機能性表示食品の普及にも貢献できるような取り組みをしているという。
現在開発しているものとしては、カットフルーツなどの加工に適した果樹の開発、地球温暖化に対応できるような低温要求性の低い桃、海外に輸出するための機能性緑茶、カフェインレスのお茶などであると紹介。
また野菜も加工や業務用途に適したものの開発が求められており、切り花も品質保持期間が2倍になるようなものを開発する研究が進められているという。
栄養機能性の解明が主要な課題に
特にこれからの5年は、栄養機能性の解明とその付加価値を食品開発に力を入れることが農研にとっても主要な課題になってくる、と大谷氏。
健康寿命延伸といっても、世代別、あるいは個々人で必要なことは変わってくるため、その多種多様なニーズに応じた所農作物や食品開発が必要であろう。
栄養機能性が高いだけのサプリメントのようなのもではなく、食べやすく、美味しく、全体の栄養バランスに優れている「食品」や「食物」であることがますます大事になってくるであろう。
また日本の機能性食品は世界的に見てもレベルが高いため、海外に輸出しても勝負できるようなものが多いが、それを長期貯蔵するシステムなどもますます重要となる、と大谷氏。
カドミウムをほとんど吸収しない稲の開発に成功
他に、日本の米は和食と共に世界的に人気だが、デメリットとしてヒ素とカドミウムの含有量が多いことが指摘されている。これは日本の土壌の特徴によるものだが、農研機構によってカドミウムをほとんど吸収しない稲の開発に成功しているという。
さらにその周辺の研究開発として家畜の疾病予防技術の開発や家畜のウエアラブルデバイスによる健康管理などもあることを解説。
また米は糖質と分類されるため、糖質制限に取り組んでいる人には避けたい食材となっているが、血糖値が上がりにくい米が開発されているという。
そして最後はそれをどう調理し、どう食べるか、といった食育まで考えることによってフードチェーンとして完結する。課題はたくさんあるが食品研究の方向性やトレンドとしては、「機能性とその付加価値によるフードサイエンス」とまとめられる、とした。
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