ダイエットにおける糖質制限、是か非か
〜第15回ダイエット&ビューティーフェア2016


2016年9月12日〜14日、東京ビッグサイトで、第15回ダイエット&ビューティーフェア2016が開催された。同展示会セミナーより、伊達友美氏らの講演「ダイエットにおける糖質の意味」を取り上げる。


飽きない糖質制限ができるように工夫

人気管理栄養士の伊達友美氏が進行役を務める「ダイエットフォーラム」も今年で3回目となった。

今年は同じく管理栄養士としてメディア等でも大活躍しているマリー秋沢氏と前田あきこ氏をゲストに、今話題の「糖質制限」について、管理栄養士の立場から公開ディスカッションが行われた。

マリー氏は自身の父親が糖尿病になり、食事療法の一環として糖質制限をする必要に迫られたが、その食事療法の実践により約1年で症状が改善したという経験を持つ。

そうしたことから糖質オフ料理をメインにレシピ開発を行い、数々のメディアで「美味しくヘルシー」なレシピを提案している。そして、今年7月には低糖質専門店を宝塚にオープンさせた。

マリー氏の糖質制限レシピは1品当たりに含まれる糖質量を0.3〜19gまでに制限しているが、美味しいことや、見た目にも楽しいことにこだわりがあり、飽きない糖質制限ができるように工夫されている。実際に大豆粉のお好み焼きやおからの洋風アレンジ、また糖質1gのコロネパンなどが紹介された。

糖質制限、効果的だが戦略的に実践すべき

前田氏は主に婦人科でダイエット相談や食事指導、運動指導を行っている。

最近は「食事行動療法」に力をいれており、糖質制限の良さについても「知っているのにできない人」にどうアプローチすることで行動につなげるか、行動療法を行うことで「実践できる」「継続できる」ダイエットをサポートしてるという。

また伊達氏は糖質制限については独自の見解を持っており、一般の人が完全に糖質を抜くことは危険で、続かないと指摘している。

しかしある糖質制限の一つの方法としてグルテンフリーを10年以上前から推奨し、それが今年も引き続き話題になっていることを報告した。そして3人とも「糖質制限は流行っているし効果的ではあるが、戦略的に実践すべき」という共通認識を持っている。

マリー氏の提案する糖質制限レシピは1食19gまでと比較的厳格に糖質をコントロールしていて、これは糖尿病が気になる人や糖尿病のリスクがある人にマッチしているという。

糖質制限食といって「肉食」に走ると、食物繊維不足やたんぱく質、脂質過多と言った別の弊害も生じる。

そのため、海鮮類を上手に利用することや、流行のナッツでも、例えばマカダミアンナッツは低糖質だがカシューナッツはNG、ドリップコーヒーはOKだがインスタントコーヒーはNGといったふうに、自分の好きなものを追求しながら糖質制限ができるようサポートしている。

過度な糖質制限、女性ホルモンに悪影響

前田氏は特に女性の過度な糖質制限に警鐘を鳴らす。女性ホルモンに悪影響を及ぼす可能性が高いからだ。

婦人科には女性特有の疾病だけでなく、病名の付きづらい不定愁訴、自律神経失調症などの悩みで相談に来る人が多い。

糖質制限をしているのに1日だけ糖質オフを解禁したり、普段は食事制限しているのに女子会や会食で制限が取り払われたりすることで、血糖値が乱降下するために精神面やホルモンバランスが不安定になっているケースが多いという。

そもそも女性特有の疾病や不定愁訴も血糖値コントロールすることで症状が良くなるケースが多い。血糖をコントロールすることは脳と自律神経を整えることとイコールであり、そのためホルモンバランスも自然に整うからだという。

現代社会で完全に糖質制限を貫くのは容易ではなく、一般的にダイエットしたい人であれば糖質は1食20g程度の糖質(ご飯茶わん1杯分)を毎食摂ることで、血糖値の乱降下を予防するようにして欲しいと話す。

糖質制限、短期間のダイエットにしか向かない

そして伊達氏も同様に糖質制限をするのであれば、何のためにするのかを考えるべきだと話す。

病気の治療とダイエット目的で同じ方法を取るのは良くない。特に健康な人が長期間糖質制限をするのは無理がある。そのため伊達氏は糖質制限の中でも「グルテンフリー」を行うことを推奨している。

糖質=炭水化物といっても、米と小麦では吸収のされ方が違う。米を食べることの弊害はほとんどないが、小麦は現代の日本人は取りすぎているので制限した方がいい。

また糖質制限やグルテンフリーを行えば、確実に体重が落ちるため、ダイエットスタート時のモチベーションアップに使うのもテクニックといえる、とした。

糖質制限が短期間のダイエットにしか向かない、と考える理由として腸内細菌との関係についても紹介。腸内細菌や腸内フローラもトレンドであるが、腸内の善玉菌は糖質を栄養として生息し増殖している。

糖質制限、腸内環境に悪影響

糖質を制限するということは、実は腸内環境にとって悪影響を及ぼすこともあり、腸内細菌が糖なしでいられる限界が3ヶ月ほどで訪れるため、それが糖質制限の限界として必ず訪れるというのだ。

グルテンフリーなら米はOKであるし、腸内環境にも影響を及ぼさず、アレルギー物質となりやすいグルテンだけを制限するので体調の変化が起こりやすい。まずは3日間、グルテンフリーにトライしてみて、体にどのような変化が起こるか、記録をしてみて欲しいと話す。

米を食べて太っている日本人はほとんどいない。おそらくパンやパスタ、麺類、菓子類などの小麦で太っている人の方が圧倒的に多いので、制限するのはその辺りで十分だと話した。

ストレスと血糖値の関係

また、前田氏はストレスと血糖値の関係について指摘。血糖値のコントロールに適度な糖質制限は役立つ。抜くのではなく、毎食20gは糖質を摂り、余計な糖質は摂らずにできるだけ血糖値を安定させることが心身のバランスをとることに大切であることは間違いない。

しかし、それをしていてもうまくいかないケースがあるのはその背景にストレスの問題があるからだという。

ストレスはそれほど恐ろしく、そんなに食べすぎていない、糖質を摂り過ぎていない、BMI値にも全く問題ないのに、管理職になった途端糖尿病になる人が男女ともに多いという。

ストレスで血糖値が上がる

これは糖質とストレスを管理する臓器がいずれも副腎であり、糖質制限の影響よりストレスの影響の方が多いからだと前田氏は指摘。

健康のためにウォーキングをしている人たちでも、それを楽しんでやっている時は体内で血糖値や血圧やホルモンが良い状態で安定するが、雨の日に無理に歩いたり、あるいは義務的に行うことで、ストレスホルモンや血糖値のレベルがぐんと上がることはよくあるという。

話題の糖質制限であるが、一般の人が健康維持や軽いダイエットのために取り組むための情報や知識はまだまだ不足している。それで体調を崩すことがないよう、正しいやり方、自分に合った方法を見極めてほしい、とまとめた。


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