スプラウト(新芽)は天然のサプリメント
〜食品開発展2016セミナー


2016年10月5日〜7日、東京ビッグサイトで、食品開発展2016が開催された。同展示会セミナーより(公財)静岡県産業振興財団/株式会社不二工芸製作所 アグリ事業部の「スプラウト(新芽)素材の可能性」を取り上げる。


スプラウトにこそ可能性

2001年から健康食品業界に参入している不二工芸製作所アグリ事業部では、機能性野菜や付加価値農作物などの開発を行っている。

国立健康・栄養研究所のホームページには、現在約855件の健康食品の素材が登録されている。

その中には馴染みのものもあれば、まだ知名度が低いものもあるが、「スプラウト(新芽)」に関しては、わずか20程度しかなく、市場に流通しているものはもっと少ないことがわかる、と解説。

スプラウトとしてよく知られているものに、もやし(緑豆もやしや大豆もやし)、ニンニクの芽、カイワレ、豆苗、ブロッコリースプラウト、発芽玄米などがある。

現在、流通しているのはこの程度で、健食素材では、ブロッコリースプラウトのスルフォラファンくらいしかなく、スプラウトにこそ可能性があるのではないか、という。

スプラウトは野菜の王様

スプラウトは、新芽であることが最大の利点で、種子である時と比較してもアミノ酸やポリフェノールだけでなくスルフォラファンのような固有の成分が発芽により急増する。

そもそも種子が芽を出して成長する時は、さまざまな酵素が活性し、栄養成分が増加した状態になる。

また、乾燥した種子の状態では存在しなかったビタミン類なども含有されるため、スプラウトこそ野菜の王様であり、天然のサプリメントといっても過言ではないという。

無農薬で育成し安全性が高い

例えば、もやしは20円程度で流通されているが、アミノ酸やビタミンC、食物繊維が非常に豊富で、現代人にとって不可欠な食材といえる。

玄米は食べにくいが、食べやすいく人気の高い発芽玄米も、発芽することでアミノ酪酸やギャバが豊富になる。特にギャバに関しては1ミリ芽が出るだけで、種の状態に比べ6倍にも増えることがわかっている。

スプラウトが新たな健康食品あるいは健食素材となる可能性とメリットとして、「ほとんどが屋内かハウスで栽培されるため、安定して供給することができること」「ハウスなどの管理下で栽培できるため、無農薬で育成し安全性が高い」「高栄養でローカロリーである」などがある。

高付加価値の素材としてスプラウトを追求することに、まだまだ大きな可能性が秘められている、という。

そばの芽を乳酸菌により発酵

不二工芸製作所が一押しするスプラウトが「そばの芽」。そばの種子を発芽させた「そばの芽」は、そばが持っているルチンやアントシアニンなどの機能性成分がそばよりも多く含まれる。

ルチンは血管を強化する作用があり、アントシアニンは抗酸化作用、食物繊維は腸内環境改善で知られる。これがスプラウトの状態になるとさらに強化される。

不二工芸製作所では、そばの芽を乳酸菌により発酵させることで、「発酵そばエキス」を開発し、抗アレルギー作用を持つケルセチンやアミノ酸などを自然な形で含有させることに成功しているという。

難病指定の間質性膀胱炎にも期待

「発芽そば発酵エキス」は血圧降下作用、花粉症などの抗アレルギー作用などの機能で、信州大学や静岡大学と共同研究を重ね、サプリメントも開発。このサプリメントは医師の治験用として売れ行きが順調であるという。

また今年4月に難病指定された間質性膀胱炎にも「発芽そば発酵エキス」による改善作用が期待されているという。

間質性膀胱炎は現在、原因も治療法もわかっていないが、「発芽そば発酵エキス」を用いることで改善作用が得られることが動物試験で評価され、さらに臨床でも11人中9人が症状改善したという結果も出ており、今後エビデデンスの確立のための更なる共同研究が求められているという。

いずれにせよ、明らか食品としても原料素材としても、スプラウトへの着目が、新たなヒット商品との出会いになるのではないか、とまとめた。


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