パッションフラワーエキス、睡眠改善で期待
〜食品開発展2016セミナー


2016年10月5日〜7日、東京ビッグサイトで、食品開発展2016が開催された。同展示会セミナーよりオリザ油化鰍フ「パッションフラワーエキスの睡眠改善作用」を取り上げる。


緊張や不眠に対する鎮痛が期待

パッションフラワーは「フラワー」と名前に入っているが、花の部分だけを指すのではなく、茎や葉も含めて全体を称してパッションフラワーという。この植物の抽出成分も花弁だけでなく植物全体から抽出される。

パッションフラワーの花弁は、特に雄しべと雌しべの形が特徴的で、あたかも時計のように見えることから、日本では「トケイソウ」の名で親しまれている(チャボトケイソウとも呼ばれる)。

原産地は北・中南米の熱帯・亜熱帯地方で、古くから原産地では緊張や不眠に対する鎮静剤として使用されてきた植物であるという。

パッションフラワーは、中南米に渡った西洋人がヨーロッパに持ち帰り、ヨーロッパでも同じように緊張や不眠に対する鎮痛剤として今でも使用されており、フランス、ドイツ、スイス、イギリス、エジプト、アメリカでは「薬用ハーブ」として認められているという。

体内時計の乱れによる生活習慣病リスク

パッションフラワーは、日本では、食薬区分で医薬品と判断しない成分本質(原材料)リストに収載されており、主に健康食品やサプリメントの原料として認知度が高い。

ヨーロッパでは主に睡眠に対する効果が標榜されている。睡眠にどのようなメカニズムでアプローチするのかを調べるために、オリザ油化では「サーカディアンリズム」に注目し試験デザインを作成している。

サーカディアンリズムとは体内時計とも呼ばれており、これがしっかり働くことによって睡眠、覚醒、食物の消化吸収、ホルモン分泌、血圧、体温調整などが、1日の変動(リズム)に応じてスムーズに行われるようになる。

夜眠くなったり朝起きるのも、朝体温が上がり夜下がるのも、食欲や消化も、このサーカディアンリズムがメリハリを持って働くことによるものである。

これが乱れると、睡眠や食欲のコントロールがうまくいかなくなる。また、極端な冷え性やのぼせ、なかなか取れない疲労感などに悩まされるほか、生活習慣病のリスクが上がることもわかっている。

就寝時間の遅延、生活習慣病患の増加と関係

日本では1980年以降、急激にコンビニエンスストアが増え、夜22時までに寝る人が1960年代には66%もいたが、近年はスマートフォンやタブレットの普及で24%以下になっているという。

現代生活は夜間の光刺激が強く、就寝時間が遅延し、睡眠時間も減少しているが、それが生活習慣病患者の増加と無関係とはいえない。

ホルモンも日中(活動期)に盛んに分泌されるホルモンと夜間(安静期)に分泌されるホルモンがあるが、この分泌のメリハリがしっかりしていることも、仕事や睡眠の質に関わってくることが分かってきているという。

体内時計に関係するホルモンを動かす

今回の試験デザインではこのサーカディアンリズムのなかでもホルモンがパッションフラワーエキスで動かせるかどうかを考察するものだ、と解説。

ホルモンの中でも活動期に増えるホルモンとしてPer2とCry1というものがある。逆に安静時に増えるものの代表がBmal。

今回の実験ではマウスの皮膚の線維芽細胞にパッションフラワーエキスを添加することでこれらのホルモンがどのように変化するかを観察した。 結果、パッションフラワーエキス添加群はコントロール群と比較し、有意にPer2とCry1の発現量が増加したことがわかったという。

時計遺伝子の役割を果たす物質は全ての細胞に含まれているが皮膚の線維芽細胞にもあり、その一つがこのPer2とCry1ホルモンであるという。

日中はこのホルモンが活性することで紫外線などの刺激から皮膚を守り、夜は夜のホルモンが働くことで細胞を修復するように、メリハリを持って働く。

この細胞実験で、体内時計に関係するホルモンを動かせることがわかったため、マウスの睡眠実験も行った。

コントロール群、脳に働きかける睡眠薬に似たムシモール群、そしてパッションフラワーエキス添加群の3つのグループに分け、それぞれの「寝付くまでの時間」「睡眠時間」を調べた。

結果、パッションフラワーエキス群はムシモール群と同等レベルで寝つきの時間が短かく、また睡眠時間はムシモール群には劣るものの有意に長くなったことが分かった。

日中の「活動」や「眠気」を改善

こうした結果を見てもパッションフラワーエキスにより入眠がスムーズになり、睡眠時間が延長することがわかったため、社内ではヒトモニター試験も行った。

16名という少人数だが、パッションフラワーエキスを2週間1日200mg摂取することで睡眠スコアが改善した、という。

パッションフラワーエキスを摂取することで、時計遺伝子の発現を活性し、特に活動時のホルモンに影響を与えることで、昼夜の生活リズムにメリハリが与えられた。

その結果、寝つきの改善や睡眠時間の延長が起こり、ヒト試験においても日中の「活動」や「眠気」が改善されることが分かった。

このメリハリがしっかりしているほど睡眠の質も向上するため、ぐっすり眠れるという流れになるのではないか、という。

体内時計を調整する作用のある成分は今の所ほとんど見つかっていない、パッションフラワーエキスは安全性も高く粉末(水溶性)であるため使用しやすい。現代社会に必須の健康成分として活用して欲しいとまとめた。


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