過敏性腸症候群(IBS)が増加
腸内細菌の状態が健康を左右していることが年々明らかになっている。近年増えている過敏性腸症候群(IBS)も、腸内環境と密接に関係していることが分かってきているという。
人の体には多くの微生物が棲んでおり、特に皮膚や気管、生殖器に多く存在している。とりわけ消化器官は微生物に左右されているといえるほど微生物の在り方と深く関係している。
心療内科では鬱や不安などで悩む神経障害の患者が多いが、ストレスによって起こる身体的不調と心理的不調の両方を見ていく必要がある。
そうした中でも身体的不調でIBSを訴える患者は増えており、これは日本だけではなく世界的に増加傾向にあるという。
アジアや北米、10人に1人が発症
IBSはアジアでは10人に1人、北米も同様の発症比率といわれる。世界ではIBSが8.8%ともいわれ、世界規模の問題といえる。ちなみにIBSには世界共通の診断基準があるという。
その基準とは「腹痛が、3ヶ月のうち1週間に少なくとも1日以上生じ、その腹痛が、@排便に関連する、A排便頻度の変化に関連する、B弁形状の変化に関連する、の2つ以上の症状を伴うもの」で、さらに便の外観から「便秘型、下痢型、混合型、分類不能型」とIBSを4型に分類するという。
世界のIBS患者の割合はこの診断基準を満している人をカウントして算出した統計だが、潜在的にはもっと多い可能性が高い。
腸の疾患、ストレスと関連
なぜIBSという腸の疾患がストレスによって引き起こされるのか。
原因は、「ストレスにより腸内細菌が変容し、種類が減る」ことが考えられるという。つまりIBSは今では代表的なストレス性疾患の1つと考えられている。
さらに、IBSになると認知症やうつ病、など別の病気になるリスクが増大し、最近では死亡率に関係することも指摘されるようになっている。ただの腹痛として見逃すことはできない。
では具体的にストレスが腸にどのような変容や影響を与えるのか。イギリスで、インドに渡航し感染性腸炎になった人たちを対象に腸炎の治癒に関する調査を行った。
すると腸炎になった後、治癒が早かったグループは治癒が遅かったグループに比べストレスのないグループであることが分かったという。
高齢者より若年者の方がなりやすい
しかしこの感染性腸炎になった人たちは感染性腸炎になったことのない人たちに比べ、7倍くらいIBSになりやすいことも分かっている。
こうした調査から、ストレスがかかると腸内細菌が乱れたままで腸炎が回復しにくいこと、一度感染性腸炎になると腸内細菌が乱れIBSになりやすくなってしまうことが示唆されているという。
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