活動電位が発生
皮膚には温度を感じる温度感受性TRP(Transient Receptor Potential)チャネルというものがある。これは細胞の膜にあるタンパクで、特定のイオンを選択的に透過させることのできる通路のような構造になっている。
細胞は通常、イオンの行き来はしていないが、温度を感知すると開くイオンチャネルがTRPで、これが開くことで細胞膜の外にある陽イオン(ナトリウムイオンやカルシウムイオン)が細胞内に流れ込むと富永氏。
このようにTRPが開き、陽イオンが細胞内に流れ込むと電位差が崩れ、これに反応してナトリウムチャネルが開き、活動電位というものが発生する。その電気信号が脳に届くことによって、熱い、冷たいといった温度の感覚を引き起こすのだ、という。
痛みと温度を感じる知覚は密接な関係
1997年以降TRPチャネルの研究が盛んになり、現在は11のチャネルが温度を感じるチャネルとして機能していることがわかっている。面白いことは、これらの温度に反応するTRPチャネルが、実は全く異なる刺激でも活性するということで、それがなんと「味」であると富永氏。
むしろ最初にTRVチャネルを特定したのは、温度のチャネルではなくカプサイシンの受容体としてであった。辛いものを食べると口の中が熱く感じるが、これに着目してTRVに熱刺激を加えたら熱刺激でも活性化することがわかりTRVが温度の受容体であることがわかってきたという。
味の中でもいわゆる5味は舌の味蕾でキャッチされるが「辛い」は味蕾ではなく、細胞のTRPの中でもTRPV1という部分に作用し、辛いということを感じるという。
しかし、舌以外にあるTRPV1は辛味ではなく痛みとしての受容体として存在する。いずれにせよ、痛みを感じる知覚と温度を感じる知覚には密接な関係があるといえよう。
42℃以上は痛みの感覚に
また、人が心地よいと感じる温度は40〜42℃だが、42℃を超えるとそれは痛みの感覚に変わる。その理由はまだ明らかにされていないが、一定の温度以上や以下では「痛い」と感じるチャネルが「辛い」を感じるチャンネルと同じであるという。
温度を感じるためのTRPチャネルが温度以外の刺激によって活性する。
では、冷たい方はどうか。ミントなどに含まれ清涼剤として用いられることの多いメントールはTRP8というチャネルで感知される。
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