健康長寿社会に貢献、コラーゲンペプチドの新たな可能性〜コラーゲンペプチドシンポジウム2016

2016年11月12日(土)、東京ミッドタウンにて「コラーゲンペプチドシンポジウム2016」が開催された。同展示会セミナーから、野村 義宏氏(東京農工大学農学部教授)の「健康と若さの鍵、コラーゲンペプチド研究の最前線」を取り上げる。


コラーゲンは有用というのが最新の知見

私たちの体の約16%がたんぱく質だが、うち1/3はコラーゲンである。つまりコラーゲンは体を構成する重要な成分である。

「コラーゲンを摂取してもアミノ酸に分解されるから意味がない」ともいわれている。

しかし、これまでの研究からコラーゲンを摂取すると、確かにコラーゲンは胃や腸で分解されるが、その後コラーゲン特有のペプチドになり、そのペプチドはわずか30分後には血中に移行し、さらに皮膚にも到達する。

そのペプチドがコラーゲンを作る細胞に作用し、コラーゲンやヒアルロン酸の合成を高めることがわかってきている、と野村氏。つまりコラーゲンを摂っても意味がないということはない、というのが最新の知見であるという。

医薬品ではコラーゲンを増やせない

またコラーゲンについて、豚や鶏由来など原料にもいろいろあるが、原料によって効果に差がないこともわかりつつある。ただし、植物性コラーゲンではなく、動物由来のコラーゲンであることが前提、と野村氏。

サプリメントや健康食品素材としてだけでなく、薬のカプセルやフランクフルトの皮、フィルムなどにもコラーゲンは幅広く利用されている。

また、体内では皮膚にだけ存在するのではなく、筋肉や骨、角膜にも存在するため、コラーゲンは女性の美容だけでなく健康維持、生活維持に不可欠な成分であるといえる。

問題は、体のあらゆるところに存在するコラーゲンは加齢と共に低下、また医薬品ではコラーゲンを増やすことができないということ、と野村氏。

「効果を体感」できる人が多い

コラーゲンの効果効能を体感するためには「1日5g」が摂取目安量とされる。コラーゲン5gというと「さんま丸ごとを17本」「シャケ丸ごとを2切れ半」「鶏ガラスープ1.2リットル」に換算される。つまり、容易に摂取することは難しい。

しかしコラーゲンを摂取することで「効果を体感」できると答える人は多く、少量でも継続してできるだけコラーゲンを摂取するのが望ましい、と野村氏。

ではコラーゲンを摂取するとどのような効果が得られるのか。マウス実験でもやはり皮膚の弾力回復、老化防止、髪の毛や爪の強化、変形性ひざ関節症の痛みの緩和などがあげられる。

魚食が減り、コラーゲン摂取量が低下傾向に

コラーゲンはペプチドに分解されてもペプチドのまま血中や皮膚中に現れ、そこがコラーゲンやヒアルロン酸の合成を刺激し、細胞を活性することが動物実験で明らかとなっている。

日本人のコラーゲン摂取量は低下傾向にあるが、これは魚食が減っていることと関係している。「しらす干し」は安くてコラーゲンも豊富に含まれているため、手軽にコラーゲンを摂れるオススメ食材のひとつであると野村氏。

また、サプリメントなどで補うのもいい。過剰摂取については、あらゆるタンパク質がそうであるように、膨満感と下痢が起こる。しかし食品からの摂取であれば過剰摂取の心配はない。まずは食品からコラーゲンを意識的に摂取してみてはどうか、とまとめた。

コラーゲン、積極的に摂るべき成分

また、赤松 浩彦氏(藤田保健衛生大学 医学部 教授)は「コラーゲン摂取でいつまでも健康で若々しい体を」と題して講演。

赤松氏は皮膚科医の立場から「コラーゲンは積極的に摂るべき成分だ」と考えているという。自身も加齢とともに気になりはじめた「爪のトラブル(割れる、薄くなる)」を改善できないか、と、コラーゲンの摂取をはじめたそうだが、爪の問題だけでなく、全身に良い効果を感じているという。

コラーゲンを摂取することで、肌や爪に効果が現れるのはなぜか。例えば、皮膚では、摂取したコラーゲンがそのままコラーゲンになるのではなく、コラーゲンやヒアルロン酸の合成を刺激したり細胞を活性したりする。

結果、肌のコラーゲン量が増える、というメカニズムが明らかになりつつあるが、もっと重要なこともわかってきている。

そもそも皮膚はターンオーバー(皮膚代謝)で生まれ変わる。表皮は古くなり死んだ細胞になるとアカやフケとなって自然にはがれ落ちる。それでも体から皮膚がなくならないのは、皮膚の真皮部分に「幹細胞」があるからである。

日々コラーゲンを摂取することが大事

私たちの体は約200種類60兆個の細胞から成る。この200種類の細胞の起源=大元が「幹細胞」である。私たちの体の中では、1分間に約250万個の細胞が生まれ変わり入れ替わっている。心臓の細胞でさえ4ヶ月で入れ替わる。

しかし加齢とともに生まれ変わり=再生能力が低下する。これは幹細胞の数が加齢とともに減少するからだと考えられている。では幹細胞はなぜ減るのか?

実は幹細胞は一人では生きていけない細胞で、幹細胞の周りを取り囲むように存在するのがコラーゲンである、と赤松氏。

コラーゲンも加齢とともに低下するが、それはつまり、幹細胞の居場所がなくなること、ともいい換えられる。

つまり幹細胞が元気に働き続けるためにはコラーゲンが必要なのである。最新の研究などからコラーゲンは幹細胞の生存維持に大きく関与している可能性が濃厚になってきている。

そのため日々コラーゲンを摂取することが大事、と赤松氏はいう。実際、ヒト試験でもコラーゲンを摂取して3週間以降で効果を体感できる人が60% 、7週間で80%を超え、継続摂取がいかに重要かがわかる。

アンチエイジングのためにできることはたくさんあるが、その手前の「再生」のためにできることとして、コラーゲンを取っておくことが将来の健康貯金の大きな差となるだろう、とまとめた。

食物繊維は第6の栄養素

真野 博氏(城西大学薬学部教授)は「かくれ老化対策として注目を集めるコラーゲンペプチド」と題して講演。

平均寿命と健康寿命の間には約10年の差がある。寝たきりにならず自立したまま寿命を全うするために、予防医学の重要性が提唱されているが、そのカギがコラーゲンがある、と真野氏。

真野氏が栄養学をはじめて学んだ約30年前は、食物繊維はいらない栄養素、栄養の吸収を阻害する栄養素とされていた。しかし、現在、食物繊維は非常に重要な第6番目の栄養素として注目されている。

5大栄養素と第6の栄養素の食物繊維は、私たちの体が成長して成人するまでに絶対的に必要不可欠な成分であることは間違いない。

しかし、「中高年や高齢者も5大栄養素を摂っていれば十分なのか」といえば「そんなことはなさそうだ」ということがここ数年考えられるようになってきているという。

コラーゲン、中高年や高齢者に必要な栄養素

つまり、高齢化社会が進み生活習慣病や医療費の問題などがあぶり出されるようになり、中高年や高齢者に必要な「新しい栄養素」があるのではないか、と真野氏。

その一つにコラーゲンがあるという。コラーゲンは摂取した後、消化吸収され、特有のペプチドになって血中に取り込まれるが、骨においては骨代謝の中でも骨の破壊を促すFOXG1という遺伝子の発現を制御し骨を強くすることがわかっている。

ヒト試験では、城西大学の駅伝部のメンバーに摂取してもらう試験を行い、ランナー特有の膝の痛みや炎症に対し、コラーゲン摂取群の方が優位に痛みや炎症が減少したという報告もあるという。

健康寿命が低下する原因の一つに「骨折」があり、ロコモティブシンドロームなどの「かくれ老化」に注目が集まるが、実際に膝を痛めたり、骨折してからの治療では手遅れになることも多い。

30代、40代からでもかくれ老化が始まっていると感じたら、コラーゲンの意識的な摂取をすることがセルフメディケーションになり得るのではないか、と真野氏はまとめた。


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