大腸に菌が100兆個以上棲息
細菌は地球上のあらゆる所に存在している。海底や火山、あるいは極端な酸性やアルカリ性の環境でも棲息している。
地球上の全ての物の体積の1/3がバクテリアといわれるほどで、人も皮膚や粘膜を中心に多くの共生細菌が棲息している。
菌のいない世界に我々は生存することができない。体内では特に大腸に100兆個以上棲息しており、それは人体を形成する細胞の数よりはるかに多い。
人の遺伝子の総数はメタゲノム解析で約22,000と推測されている。対して、500〜1,000種類以上の菌種から成り立つ腸内細菌叢の遺伝子数は人の遺伝子数をはるかに凌駕すると大野氏。
腸内細菌叢、様々な病態に影響
この多種多様な菌同士が相互に作用し、代謝し、宿主(ヒト)とも相互作用することで、宿主の健康状態に多大な影響を与える。
実際、腸内細菌叢は腸疾患のみならず、肥満症や糖尿病などの代謝性疾患、神経性疾患、肝臓疾患、免疫疾患など様々な病態にも影響していることがわかってきている。
近年は、特に海外を中心に「糞便の移植」つまり「腸内細菌の移植」によって治る病気の症例報告も増えている。また腸内細菌叢の働きによって感染症や感染症死を予防できることもわかってきている、という。
酢酸、腸粘膜上皮の増殖促進や保護作用
そうした中、ビフィズス菌がO157を予防するメカニズムも明らかにされつつある。無菌マウスにO157を感染させるとシガ毒素が発生し一週間ほどで感染死する。
しかし、ある種のビフィズス菌をあらかじめ無菌マウスに投与しておくと、マウスは感染死しない。ただし、ビフィズス菌は30〜40種類あり、O157の感染死を予防できないビフィズス菌もあるという。
感染死を予防するビフィズス菌でも、そうでないビフィズス菌でも、直接の死因となるシガ毒素の産生量に違いはない。
ビフィズス菌が直接O157の増殖やシガ毒素の発生を抑制しているのではなく、腸内で産生する代謝産物が異なり、それが感染死を予防するかどうかの差になるのではないか、という。
そこでそれぞれの糞便を解析したところ、やはりO157を予防するビフィズス菌としないビフィズス菌で代謝産物に大きな違いがあることが分かった、という。
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