γオリザノール、動物性脂肪の依存症を軽減〜「次世代機能製農林水産物」シンポジウム

2016年12月5日(月)、有楽町朝日ホールで、「次世代機能製農林水産物・食品の開発」公開シンポジウムが開催された。この中から、益崎 裕章氏(琉球大学大学院 医学研究科)の講演「玄米機能性分による脳機能改善と糖尿病予防〜基礎研究から介入臨床試験まで」を取り上げる。


糖尿病、認知症リスクの増加要因

現代社会において「脳の機能異常」の問題には2種類ある、と益崎氏はいう。「認知機能低下」と「依存症」である。

「依存症」というのは単に脳の機能異常が依存を引き起こしているということではない。

最近は「依存症」が糖尿病の原因にもなることが知られている。また糖尿病は認知症のリスクを増加させる要因であることも含まれているという。

主な依存要因にニコチン、アルコール、ギャンブル、ゲーム、薬物などがあるが、最近ではインターネットも含まれる。

また甘い物がやめられない、脂っこいものがやめられない、といった食への依存も見逃してはならない、と益崎氏は指摘する。

「依存症」軽減で、玄米に関心

今回の研究では、この依存の中でも「動物性脂肪の習慣的過剰摂取」「動物性脂肪に対する嗜好性」について、また依存と玄米由来機能性成分の関係について取り上げた。

この「依存症」を軽減させる可能性のある食材として「玄米」に関心が集まっているという。

そもそも玄米は天然の完全食とも呼ばれ、中でも米ぬかにはビタミンやミネラル、食物繊維といった機能性成分が豊富に含まれており、食後の血糖上昇を抑制する低GI食品であると以前から注目されている。

さらに玄米には善玉菌の増殖を促す食物繊維が豊富に含まれ、昨今の腸内環境ブームに後押しされプレバイオティクスとしても期待が寄せられている。

米ぬかに含まれるγオリザノール、2型糖尿病を予防

玄米食が2型糖尿病に有効であることは以前から疫学研究を中心に示されていた。しかし、そのメカニズムについては明らかでない部分も多かった。

メタボの男性に2ヶ月間主食の白米を同等のカロリーの玄米に置換することで、肥満、食後の血糖値、脂肪肝などが改善された例など多数報告されている。

また動物性脂肪に対する嗜好性の軽減作用も認められていた。つまり糖尿病になりやすい食習慣が2ヶ月の玄米食によって改善されたことが報告されている、と益崎氏はいう。

玄米が2型糖尿病に良い理由で、玄米に含まれるγオリザノールという機能性成分が良いのでは、ということは以前から知られている。

このγオリザノールは米ぬかにしか含まれていない機能性成分で、1953年に日本人の土屋 知太郎氏によって発見された。まさに「ジャパンブランド」の機能性成分でもある。

γオリザノール、動物性脂肪依存を改善

γオリザノールは米ぬかに極めて特異的かつ高濃度に含有されている。

動物性脂肪に対する嗜好性の軽減作用については、γオリザノールを経口摂取することで食欲中枢神経である視床下部に直接作用して過剰な小胞体ストレスを緩和する分子として機能する。

これにより、γオリザノールが「依存」と言える動物性脂肪に対する強硬な嗜好性を顕著に改善する作用を持つことを益先氏のチームが明らかにしたという。

γオリザノールはフェルラ酸と4つのステロールの化合物の集合体であり、経口摂取されたγオリザノールは「エステル結合が保持されたままの完全体」として脳に移行するという特徴があり、脳の小胞体ストレスの緩和など脳機能改善効果を発揮する。

医薬品には副作用があり、特に抗肥満薬の多くが心血管系の副作用の問題が指摘されている。

しかし玄米であれば食経験も長く日本人が慣れ親しんだ安心安全な食材であり、副作用もなく他の複数の健康メリットも享受しながら摂取できる点も注目すべきポイントであろう、と益崎氏。

玄米甘酒、腸内細菌を改善

益崎氏のチームは福島県の復興プロジェクトとして(株)会津天宝醸造との共同開発で、γオリザノールを高含有する「玄米甘酒」を作成。

8週間飲んでもらうクロスオーバー介入試験を実施したところ、間食回数や動物性脂肪に対する嗜好性の軽減効果が見られた他、腸内細菌の改善や、探査脂肪酸の血中濃度上昇も確認された、という。

特に日頃玄米の食習慣がなかった人や、腸内フローラの状態が良くなかった人において一層効果的であったことから、食習慣が乱れているメタボリックシンドロームの患者にも効果が高いことが期待される、という。

今後も玄米の機能性成分が脳機能異常改善に効果的に働くメカニズムについて研究を深めたい、とした。


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