日本人は虚血性心疾患になりにくい?
1965年代、日本人の脳卒中(脳血管疾患)による死亡率は非常に高く、死亡原因の第1位で、がんが第2位、虚血性心疾患が第3位だった。
ところが1980年になる前にがんが死亡原因の第1位となり、脳卒中は右肩下がりで低下し2010年には虚血性心疾患の死亡者数よりも少なくなった。
いずれにせよ虚血性心疾患が1位になったことはない。虚血性心疾患で亡くなる人が非常に多い欧米からこのことが長い間注目されてきた。
特に米国では虚血性心疾患による死亡者が多いことが何年も社会問題になっており、積極的な対策がなされている。日本人は欧米人とは違い、遺伝的に虚血性心疾患になりにくいのか?
虚血性心疾患のリスクとコレステロールとの関係
日本人男性、日系アメリカ人男性、アメリカ白人男性で比較すると、日本人は確かに虚血性心疾患の罹患率が低い。
日系アメリカ人男性とアメリカ白人男性ではこれが増加することから、遺伝よりも環境要因が病気を作ると考えられている。
これに関して、さまざまな調査が行われたが、中でも有名なのが、通称「7か国調査」と呼ばれるもの。
1960年代から25年間「北米・米国・セルビア・南欧(内陸部・地中海沿岸)・日本」の7カ国に住む人のコレステロール値と虚血性心疾患死亡率の関係を追跡調査した研究である。
これによると、日本人の血中コレステロール値は残りの6か国の人と比較しても明らかに低く、この調査結果によって「コレステロールが良くないのではないか」と注目されるようになった、と岡村氏。
1980年から19年間の追跡調査でも総コレステロール値が220〜240を超えると虚血性心疾患のリスクが高まるという相関関係が見られたという。
日・米・英で日本人が最もコレステロールを摂取
食事内容を日・米・英で比較すると、食事の中に含まれるコテステロール量に大差はなく、むしろ日本人(和食)が最もコレステロールを摂取していることがわかったという。
しかしコレステロールの摂取源に違いがあり、日本人は「卵・魚介・肉」の順番でコレステロールを摂取しているのに対し、米・英人は「肉・卵・乳製品」からコレステロールを摂取していて、魚介からの摂取がほとんど無いという特徴があったという。
つまりコレステロールをどれくらい摂取するか、というより、コレストロールと一緒に摂取することになる脂肪酸が問題なのではないか、と考えられれるようになった。
1990年〜2000年、日本人のコレステロール値は上昇傾向に
この視点から日本人、米・英人の飽和脂肪酸摂取量と多過不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)の摂取量などを調査した。
すると、米・英人の飽和脂肪酸摂取量は明らかに日本人と比べて多いことがわかり、やはりコレステロールをどの脂肪酸とともに摂取するかの方が問題視されるようになってきたという。
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