メディカルハーブによる補完代替療法〜第13回 統合医療展2017セミナー

2017年1月25日・26日の両日、東京ビッグサイトで「第13回統合医療展」が開催された。同展示会セミナーから、降矢 英成氏(赤坂溜池クリニック院長)の講演「ホリスティックな観点からの補完代替療法〜メディカルハーブからエネルギー療法まで」を取り上げる。


補完代替医療を求める患者さんが増えている

降矢氏が院長を務める赤坂溜池クリニックではホリスティックな医療を提供している。ホリスティックという言葉はかなり一般的になってはいるが、いまだ曖昧なイメージがあるという。

それでも、来院する患者さんの多くは「ホリスティックなアドバイス」や「補完代替医療」を求める傾向が強い、と降矢氏。

そもそも医療や医学の分野で「治療」に準ずる言葉はたくさんある。「治療」と言えば一般的に外からのアプローチを指す。

「セラピー」と言えばアロマセラピーや森林セラピー、ハーバルセラピーや温泉療法などさまざまあり、治療よりもマイルドなアプローチがイメージされる。

ホリスティック、全体を多角的に扱う

「トリートメント」という言葉もよく使われるようになっているが、日本ではアロマセラピーやマッサージの現場で使われるのに対し、欧米では「処置」や「治療」のことも意味し、国によってニュアンスが異なる。

また日本語では「養生」という言葉もあるが、これは生活習慣における節制法を指している。

さらに最近は「ホリスティック」という言葉がよく知られるようになったが、これは治療の手法や技術ではなく「物の見方、考え方」に使われる言葉で、「ボディ、マインド、スピリットの全体を見る、全体的」という意味で用いられている、と降矢氏。

「代替医療」とは「1つの手法にこだわらず、別の方法によってアプローチする」という意味があり、現在は「補完医療」「統合医療」「補完統合医療」という言葉によって、「ボディ、マインド、スピリット」の全体を多角的に扱うことが求められるようになっている、という。

個々が持つ「自然治癒力」を高める

降矢氏のクリニックには心療内科もあり、そこにやってくる患者さんの傾向として、「薬物治療に対する拒否」が強く、「ホリスティックな治療法」や「自然療法」に対する期待が高く、また心理面(メンタルケア)を望む人が増えているという。

そのためクリニックでは、薬物や運動などでアプローチする身体療法だけでなく、カウンセリング、自律訓練法、認知行動療法など含む40近いアプローチ方法を用意。

患者さんそれぞれに必要なアプローチ方法を1つではなく複数の手法で統合させていき、治療に当たっているという。

メディカルハーブ(=植物療法)は、自然療法の1つであり、西洋医学や対処療法とは別のもの、と思われがちだが、実はメディカルハーブも7種類ほどある「薬物療法」の1つであり、漢方などと同等と考えてよい、と降矢氏。

そしてメディカルハーブは正しく使うことができれば非常に有効であるという。というのも、西洋薬と違い「ポイント」だけではなく「全体」、そして個々が持つ「自然治癒力」を高めることに役立つからだ、と降矢氏は解説。

オススメのメディカルハーブ

降矢氏はオススメのメディカルハーブとして、この分野の第一人者のアンドリュー・ワイル博士の幾つかの書籍から次のハーブをピックアップして紹介した。

強壮ハーブ:アメリカニンジン、エゾウコギ、アンジェリカ
強肝ハーブ:ミルクシスル、アーティチョーク
疲労回復ハーブ:ハイビスカス、ローズヒップ
抗酸化ハーブ:ルイボス、ローズマリー
緊張緩和や不眠対策:バレリアン、パッションフラワー
抗うつ:セントジョーンズワート
鎮痛ハーブ:カモミール、リンデン、オレンジフラワー
月経対策ハーブ:チェストツリー、ブラックコホシュ、アンジェリカ

これらのメディカルハーブの詳しい作用機序はアンドリュー・ワイル博士の「癒す心・治る力」というベストセラー本にも記述されている。

ワイル博士は他にも「にんにく、生姜、緑茶、アソトラガルス(黄耆)、朝鮮人参、マイタケ、冬虫夏草、ノニ」などを書籍で取り上げているという。

しかしこれらのメディカルハーブをただ西洋薬の代わりに使う、というのがホリスティック医療や自然療法ということではない。大事なのは考え方とアプローチの順番である、と降矢氏。次のように補完代替医療を解説した。

ホリスティックな観点からの補完代替医療とは

1、ホリスティックな健康感に立脚すること
一般的な健康感より視野を広げ、マインドとスピリットの状態を見る必要がある。むしろマインドを先に見るようにすること(病は気から)が大事と言える。しかし、特にスピリットに偏りすぎないように注意する必要がある。

2、自然治癒力を癒しと治療の原点にする
どんな病気でもそれは自然治癒力が低下した状態である、という共通点があり、どんな病気もまずは自然治癒力を高めることを基本として行うべきである。

3、自らが治す。治療者はあくまで援助するだけ
患者が医師に丸投げでは意味がない。患者自らライフスタイルを改善したり、養生したりすることで、自分で自分を癒す必要があり、それによって自然治癒力が高まることを忘れてはならない。

4、様々な治療法を選択し、統合し、適切な治療を行う
西洋医学、あるいは自然療法や東洋医学のいずれかを否定したり拒否したりするのではなく、総合的かつ体系的に選択し、自分に必要な治療法を過不足なく選択して実践する必要がある。

5、病の意味に気付き自己実現を目指す
病をネガティブなものとして捉えるのではなく、気づきとして捉え、その気づきをもとに自己実現できるよう努力する姿勢が必要。

治療の適切な順番

また、治療には適切な順番があると以下の点を指摘。

1、ライフスタイルや生活習慣の改善によるセルフケア(養生)
2、バランスや回復力、自然治癒力を高めるケア
3、1、2をしても回復しない場合の西洋医学や対処療法
4、同時にマインドやスピリットのケア

この順番が医療において大切であるが、多くの人が3を先に行い、それが再発の原因や完治しない原因になっている、という。

ホリスティックな観点や補完代替医療により、西洋医学や対処療法では行えない「心理面のケア」「自律神経系のケア」「癒し」などがカバーできる。

補完代替医療で利用される手法やテクニックだけを使うのもなく、西洋医療を否定するのでもなく、戦略と順番、考え方を間違えずにアプローチすることが大切だ、と降矢氏はまとめた。


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