健康食品、消費者の期待と専門家の理解の違い〜第13回 統合医療展2017セミナー

2017年1月25日・26日の両日、東京ビッグサイトで「第13回統合医療展」が開催された。同展示会セミナーから、千葉 一敏氏(アドバイザリースタッフ研究会 代表世話人)による講演「健康食品・サプリメントを勧めるにあたって〜消費者の期待と専門家の理解の違い」を取り上げる。


適切な商品を選ぶことは容易ではない

サプリメントや健康食品のニーズは高まっており、これらが果たす役割も非常に大きい。

しかし、消費者が考える健康食品とプロが考える健康食品の間には大きな理解の差があり、それがトラブルの原因になっていることが多いと千葉氏は指摘する。

そこで健康食品やサプリメントの相談を受ける際のポイントなどを解説した。

そもそも健康食品はあくまで「食品」であり、効果効能を謳えないのが大原則である。しかし食品の中でも「栄養機能食品」「特定保健用食品(トクホ商品)」「機能性表示食品」の3つについてはそれぞれ規定があるものの、効果効能や機能性を表示することが許可されている。

特に2年前からスタートした機能性表示食品については、医薬部外品やトクホ商品を超える数の機能表記がされた商品が増えている。

しかもこれらの商品は同じように店頭に並んでいるため、消費者が適切な商品を選ぶことは容易ではない、と千葉氏。

健康食品への誤った認識

例えば、健康食品を扱う専門家であれば、「医薬品は病気を治療するもの」ということを知っている。

さらにいえば、「健康食品は健康の維持増進に役立っても、医薬品の代替にはならない」ことを知っている。

しかし一般消費者は、健康食品が医薬品の代替になる、あるいは健康食品で病気が治ると考えている人も多い。漢方薬を健康食品と思ったり、健康食品には副作用がない、と思っている人も多い。

健康食品を扱う専門家は「医薬品にも健康食品にも副作用のリスクはあり、どちらも使い方が大切」ということを当たり前のこととして知っている。

しかし、一般消費者はそれを分かっていないことを頭に入れて欲しいと千葉氏。

高齢者ほど「医薬品」を嫌う傾向

健康食品を積極的に利用しているのは若年層よりも高齢者層だが、利用する理由の約25%が「家族や友人に勧められたから」というもの。

成分や使いやすさ、自分の体質のとの相性、既に飲んでいる医薬品との相互作用など、健康食品を摂取する上で理解しておくべきポイントを押さえていないことがほとんどだという。

しかも高齢者ほど「医薬品」を嫌う傾向にあり、健康食品に対する過剰な期待が大きい。

医薬品を嫌がる理由として「副作用がある」「なんとなく怖い」「医師に無理やり飲まされている」「必要じゃない薬まで処方されている」といった答えが多い。

健康食品の利用、8割が主治医に相談せず

一方、健康食品や医薬品の悩み、健康食品の選び方について相談された場合、薬剤師もサプリメントアドバイザーも「健康食品の利用については主治医(かかりつけ医)に相談してください」と必ず言うことになっている。

しかしほとんどの消費者が医師に相談などしていない。ある調査では「トクホ商品の利用についてかかりつけ医に報告していない」と回答した人が81%以上だったという。

トクホに限らず、健食の利用を医師に相談や報告をしない理由として「医師には必ず、そんなものを飲んでも仕方ない」と否定される、「それがいいかどうかよくわらない」といわれる、といった、医師が健食をネガティブに考えている、というイメージによるものが多い。

ますますニーズが高まる健康食品

また、健康食品全般において妊婦、小児、高齢者の利用を推奨していないものがほとんどである。

しかし、健康食品の専門家を介せば、むしろこれらの人にこそ健康食品は役立つという場合が多い、と千葉氏。

例えば、妊婦は葉酸摂取が必須だが、食品から十分量を摂るのは難しいため、サプリメントを活用することは悪いことではない。

また妊娠中に鉄剤を処方されて気持ち悪くなるケースが多いが、これもサプリメントに置き換えられる場合がある。

小児についてもあまりに食が細く発育に影響がある場合は機能性おやつが有効である。高齢者も咀嚼や嚥下機能が低下している場合、サプリメントで栄養をカバーできるケースが十分ある。

バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休息がベースになった生活に健康食品を加えることは有効であり、さらに商品の選択を適切にアドバイスできる専門家が加われば健康食品はもっと利用価値が高まるはずだ、と千葉氏はいう。

予防にお金をかける時代が到来した。薬局やドラッグストア、スーパーやクリニックでも、健康食品選びの専門家がいることで「街の健康ステーション」として付加価値が高まるはず。

ますますニーズの高まる健康食品について、専門家は消費者の声や知識を把握し、適切に届けて欲しい、とした。


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