機能性表示食品届出の現状とエビデンスマーケティング〜健康博覧会セミナー

2017年2月15〜17日、東京ビッグサイトで「健康博覧会2017」が開催された。同展示会セミナーから、薬事法ドットコムの講演「機能性表示食品届出の現実とエビデンスマーケティング」を取り上げる。


より細かな届出が要求される

現在、機能性表示食品の受理件数は700件を突破しており、制度の認知や市場の拡大は順調のように見られている。

しかし、実は昨年11月以降、消費者庁のジャッジが厳しくなっており、11月以降の受理件数は118件と、ペースダウンしているという。

問題は「これまでOKだった(受理された)から」という理由では通用しなくなっていることで、より正確で細かい届出を行わないと何度も出し戻しを繰り返す羽目になるということ。

薬事法ドットコムでは、機能性表示届出関与実績が72商品あるが、この中にはスタートから関与した商品もあれば、何度も出し戻しを繰り返し行き詰まった企業からの依頼もあるという。

新成分の審査が厳しくなっている

機能性表示の魅力の一つに、これまでトクホ商品では記載できなかったヘルスクレームが表示できる可能性が増えたことがある。

例えば、「肌の水分」や「睡眠サポート」といった機能は機能性表示制度がスタートしなければ表記できなかった。

しかし、11月以降はこの新たな機能が追加されておらず、全て先例のあるものばかりになっている。

関与成分としても新たに加わったのは「アスパラガス由来含プロリン-3-アルキルジケトピペラジン(睡眠)」と「パイナップル由来グルコシルセラミド(肌の潤い)」、「グアーガム分解物(食物繊維/血糖値)」の3成分のみ。新しい成分については特に審査が厳しくなっている印象があるという。

認められない領域がより明確に

これはエビデンスの有無にかかわらず、消費者庁の方で「そもそも認めない」領域がより明確になってきていて、しかもその領域が拡大化しているからだという。

例えば、美肌系の「シミ、シワ、くすみ、弾力」などはエビデンスがあってもあくまで美容目的であり、健康増進ではないため認められない領域となっている。また、ダイエット系も同様に認められないのが暗黙の了解となっている。

もちろん「高めの内臓脂肪を減らす」は健康目的であるためOKであり、これまでも認められている。

しかし、一般の中肉中背の人が痩せる、ダイエットする、といったことだと直ちに認められないものになる。

つまり、認められない領域がより明確になり、制度スタート直後よりも許容範囲が狭くなっているというのだ。

エビデンスマーケティングのススメ

機能性表示は直接的な訴求広告ができるが、受理にこだわりすぎて、本来の目的が果たせないのであれば、「届出しない」という選択肢を選ぶのも一つである、という。

例えば、「セサミン」といえば「抗酸化」成分としてすでによく知られている。

しかし「抗酸化」では受理されないので、受理されるために「疲れを感じる人の寝つきや目覚めなどの改善に役立つ」としたら、逆にターゲットが狭まり、セサミンの訴求ポイントがぼやける。それなら「機能性表示は狙わない」のも一つだ、という。

では、機能性表示を狙わない場合、どのような手法が有効なのか。今、薬事法ドットコムが勧めているのが「エビデンスマーケティング」と呼ばれる手法だという。

そもそも健康増進法も薬事法も広告のみに適用される法令であり、それ以外には適用されない。

広告には3要件あり「顧客を誘引する意図が明確」「特定医薬品等の商品名が明らか」「一般人が認知できる状態」の3つが揃っているものが広告とみなされる。この一つでも該当しなければ広告ではないので健康増進法も薬事法も適用されない。

これをしっかり頭に入れた上でエビデンスマーケティングを行うと良い、という。

商品と正しく連動させる

エビデンスマーケティングは「リーガルであることを正しく理解し」「レベルと質の高いエビデンスがあり」「商品と正しく連動できる」場合に非常に有効である。

例えば、森永乳業の「ラクトフェリン」は「ノロウイルス対策」に非常に有効であることは複数のエビデンスで報告されている。

しかし、機能性表示では絶対に認められない範囲なので(病気の予防の範疇になってしまう)、機能性は狙わず、「強いからだ」で検索するとラクトフェリンの研究サイトにヒットするようにしかけ、そのページには一切商品のことは載せないというやり方を取っているという。

もちろん費用対効果は良くないが、質の高いエビデンスがあり、それを明確にプッシュすることに意義があるため、ラクトフェリンの研究サイトが強力な武器となっているという。

他の事例として、商品名をとにかく先に周知させ、エビデンスや機能性はどこにも掲載せず、商品を買った人、あるいは興味を持った人にサンプルや資料をそれぞれ別々に送るというのもエビデンスマーケティングの手法だという。

機能性表示にこだわらないアプローチも

また、小林製薬の「プリトロール」は二日酔いやプリン体対策の商品だが、二日酔いやアルコールのことは一切いわずにプリン体の吸収阻害のメカニズムだけをサイトで解説することで、どういう人がどういうタイミングに摂取すべきかは消費者に委ねる、という方法を取っているという。

エビデンスマーケティングといっても、このように数パターンの手法が存在し、商品や素材ごとに適したやり方は異なる。

費用対効果が良いわけではない、というデメリットがあるにせよ、やはりエビンデンスがあればそれを適切に公開することは大きなアドバンテージとなる。さらにうまく商品と連動させられれば機能性表示であるなしに関わらず大ヒット商品になる可能性は十分ある。

効果効能の根拠資料のレベルが低いのは論外だが、受理されない、されにくい、前例がないといった場合は、機能性表示にあえてこだわらず、エビデンスマーケティングで別のアプローチができないか、一度考えてみてほしいとまとめた。


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