クルミに含まれる不飽和脂肪酸の酸化抑制技術〜健康博覧会セミナー

2017年2月15〜17日、東京ビッグサイトで「健康博覧会2017」が開催された。同展示会セミナーから、潟^バタの講演「クルミに含まれる不飽和脂肪酸の酸化抑制技術」を取り上げる。


オメガ3脂肪酸(αリノレン酸)が豊富

株式会社タバタは、主に各種ナッツ類の輸入と加工、原料の卸販売などを行っている。

取り扱っているナッツ類は、クルミの他にアーモンド・ピーナッツ・ピスタチオ・ココナッツ・マカダミアンナッツ、また健康食品素材として近年大注目のパンプキンシードなど。

ここ数年、「ナッツブーム」が美容や健康意識の高い人を中心に起こっているが、どのナッツも「天然のサプリメント」のような存在で栄養価が豊富。

通常の食事からは摂取しづらいビタミン・ミネラルを中心とした微量栄養素も多く含まれていることで注目されている。

その中でもクルミは特に人気が高くメディアでもよく取り上げられている。クルミは栄養価が高いだけでなく、話題の必須脂肪酸の中でも「オメガ3脂肪酸(αリノレン酸)」が豊富に含まれているからだ。

酸化が早いのがデメリット

オメガ3脂肪酸の機能性といえば、血行が促進される、LDLコレステロールの減少に役立つ、抗酸化作用、皮膚の代謝促進、血圧の低下する、血管の柔軟性を保つ、などがある。

当然、オメガ3脂肪酸を豊富に含むクルミにも同様の健康効果が期待されている。

もちろんオメガ3脂肪酸だけでなく、クルミには日常の食生活では不足しがちなビタミン・ミネラル、食物繊維、さらにポリフェノール類が豊富に含まれている。毎日少量継続して摂取することや、甘いお菓子の捕食としても適している。

オメガ3脂肪酸をたっぷり摂れる食品として、昨年はシソ油やエゴマ油など健康系オイルが注目された。

しかし、これらの共通のデメリットが「酸化が非常に早い」ということ。これはオメガ脂肪酸のデメリットで、クルミも同様、非常に酸化が早いナッツである。

消費期限が極めて短い食品で使用されてきた

クルミの酸化が進みやすいのは、加工する際のローストに原因がある。普通にローストすると、クルミの組織が破壊されて油(オメガ3脂肪酸)が外に出てしまい、すぐに酸素に触れて酸化が始まってしまう。

普通にローストしたクルミではわずか2か月もすれば酸化臭がするようになり、風味も損なわれ美味しく食べることができない。そのため、通常のクルミは使用用途が限られてしまう。

これはクルミだけに限ったことではない。不飽和脂肪酸(αリノレン酸やリノール酸なども)は酸素に触れると、ハイドロパーオキサイド(過酸化物)が生成され、さらにこれがカルボニル化合物に変化し、これが酸化臭の原因になる。

これは「自動酸化」といわれるもので、何もしなければ避けることができない現象だという。

そのため、クルミは健康効果が注目され人気の食材ではあるが、パンやケーキ、惣菜といった消費期限が極めて短い食品で使用されるのが主で、長期間陳列される商品に使用されるのは難しい現状があるという。

独自のロースト方法「ST加工」を開発

タバタ社では独自のロースト方法「ST加工」を開発し、水分活性をコントロールしながらクルミをローストする技術を開発したという。これは日米特許も取得済みの技術で、設備もオリジナルのものだ。

この加工技術を使用することで、2ヶ月経過しても酸化臭が出ないクルミを提供できるようになるという。

ST加工とは、スーパートリートメント加工の略で、ローストは行うが、その際に最適な水分活性を維持することで、組織を壊さずに油がほぼ外に出ないようにする技術である。

ST加工をしたものは現在では賞味期限を6か月まで対応できるようなっている。これにより大手チョコレートメーカーやグラノーラメーカーによって、ST加工クルミが採用されるようになったという。

「酸化が早い」という問題をクリア

近年チョコレートはカカオポリフェノールが豊富に含まれていることから、健康食品や機能性表示食品としても見直され、クルミが添加されることで、オメガ3脂肪酸(αリノレン酸)や食物繊維などの新たな成分の付加価値までパッケージに明記できるようになっている。

また実際使用されているチョコレートは賞味期限が12ヶ月まで可能になっている。現在このST加工技術は、同社のピーナッツなどの他のナッツでも採用されているという。

健康食品素材として注目の高いクルミだが、デメリットである「酸化が早い」という問題をクリアすることで、ますます流通や活用法が広がるのではないか。賞味期限を気にせずに、様々な食品に利用し、健康に良いクルミをより身近にしてほしいと話した。


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