身体不活動が注目
2015年、日本人の健康寿命は男女ともに世界第一となった。
世界的に類のないスピードで高齢化が進んでおり、今後40年高齢者の増加だけでなく、生活習慣病により死亡者が増加することが懸念されている。
また、サルコペニア、フレイル、ロコモといった身体不活動の原因となる人の増加、また身体不活動を原因とした認知症患者の増加などが予測されている。
運動が健康に良い、ということは一般的によく知られているが、近年は「身体不活動(1日30分以下の運動量の状態)」について注目が集まっている。
身体不活動の定義はないが、熊谷氏らの研究グループは就寝とは別に、覚醒時にエネルギー消費量が1.5メッツ以下のすべての座位行動、と定義しているという。
つまり「ただ座っている、ただ横になっている」時間だ。
身体不活動は認知症発症の危険リスク
運動不足は日本の死亡要因の第3位という報告もあるが、身体不活動は認知症発症の危険リスクとしては現在第1位と報告される。
具体的には「座位行動」が多くの慢性疾患や疾病の共通因子である、とNature誌にも紹介され、座っていることやそれが長くなることの健康への悪影響に注目が集まっている。
実際、秋山氏らが行った文献調査や国内の疫学調査(九州の久山町研究、篠栗町研究など)によると、40歳以上の日本人男女で、運動習慣がないことや座位時間が長いだけでなく、「全身の持久力」や「握力」及び「歩行速度」の低下は、心疾患、脳卒中といった死因別死亡率を上昇させることが分かったという。
逆に、運動習慣や持久力、握力、歩行速度に改善が見られると、死因別死亡率のリスクが低下するだけでなく、認知症発症リスクも低下させることが確認できたという。
生活習慣病のリスクを高める
また国内だけでなく、世界的にもガン予防指針として身体活動や体力の維持増進は奨励されている。身体活動の低下はガンリスクの向上になるとも言い換えられる。
現代人はテクノロジーの恩恵を受け、座位行動が長くなりがちだが、座位行動は心疾患、二型糖尿病、肥満、メタボといった生活習慣病のリスクを明らかに高める原因となる。
座位行動のひとつの指標であるテレビの視聴時間の増加はうつ病や自殺といった行動とも比例関係にある。
もちろん、これらの因果関係や科学的根拠は不足しており、今後の研究が期待されるが、「座位行動」についてはその悪影響を多くの人が理解する必要があろう。
座位行動の時間が増加
最新の運動科学研究では、すでに「運動=健康」ではなく「座位=病気」とテーゼが移行しつつあり、疫学研究でもすでに「座位行動は身体活動と独立して死亡リスク要因」と報告されている。
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