動物がほとんど症状を示さない感染症もある
食肉や乳製品となる動物の感染症は、家畜の生産を阻害し、畜産家や消費者に経済的ダメージを与えるだけではない。
人に感染症を引き起こす可能性があり、非常に厄介で、食の安全の確保のためにも「畜産の感染症対策」は非常に重要な課題である。
そのため、日本では家畜が明らかな感染症状を示した場合、農場で迅速に適切な処置が取られ、被害が人に及ぶことは今ではほとんどありえない。
しかし、怖いのが、動物がほとんど症状を示さない感染症もあるということだ、と関崎氏は指摘。
私たちにとって身近な「O157」や「サルモネラ」もその一例である。これらの菌は農場で発見されることが難しく、どの段階でどのように食肉に紛れ込んだか特定できないことが多い。
豚レンサ球菌、人にも感染
こうしたことから、食の安全センターの食品病原微生物研究室では豚の病原体の一つである「豚レンサ球菌」について研究してきたという。
豚レンサ球菌は、重症の場合、豚に髄膜炎や敗血症などを引き起こし、人にも同様の感染症を引き起こす。
日本では1979年に島根県で報告されたことをきっかけに全国で発生しているが、人への症例はこれまでに20例未満と少ない。
しかし、いずれも髄膜炎などの重篤な症状となり、死亡例も2例あるという。
また話題になったのが、一昨年、一般消消費者が家庭で豚肉の調理中に手指の傷から感染した例があったことである。
つまり日本でも危険性がないわけでなはなく、誰もがこの菌のリスクや対策・予防法について知っておく必要がある。
ベトナムやタイでは年間100人以上が死亡
豚レンサ球菌は世界中で発生しており、日本では人への感染事例は少ない。
しかし、豚肉を生で食べる習慣のあるベトナムやタイでは年間100人以上がこの菌の感染が原因で亡くなっていることが報告されている。
豚レンサ球菌の恐ろしい点は、全く症状を示さず健康な状態で、と畜の段階まで発見されないこともあるということだ。
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