食物アレルギーが年々増加
腸は栄養吸収のための器官であるとともに、最大の免疫器官であることが近年よく知られるようになっている。
人の腸内に棲みつく多種多様な腸内細菌が、外部から侵入する細菌やウイルスに対し、感染予防のために必要な免疫機能に大きな影響を与えていることが明らになっている。
腸管免疫系には、常に膨大な腸内細菌や微生物・共生菌が共存している。
私たちの体を守る「免疫」と大きく関係しているのが「アレルギー反応」だが、摂取した食品に過剰な免疫応答を示す「食物アレルギー」の問題が年々増加していることも報告されている。
食物アレルギーの抑制機構は「経口免疫寛容」といわれ、この機構が働くことにより、通常は過剰な免疫応答が抑制される。
さらに腸管の粘膜においては食品についた細菌による感染症を防ぐ。また、粘液中へ分泌されてバリアーとして働くIgA抗体を産生・分泌したりしている。
これらの反応は全て腸管に存在している独自の免疫細胞によって行われている。
インフルエンザに対する感染防御
八村氏らのグループは腸管免疫を利用し、「食品で感染症を防御する機能を増強できないか」、「アレルギー反応で多い皮膚症状と腸管の関係について」、「加齢と免疫機能の低下、食品による増強」などの研究を重ねてきたという。
ある種の食品を摂取することで、腸管粘膜でIgA抗体産生を増やすことができれば、全身のバリアー機能が高まり、感染症の防御機能を強めることに繋がると考えられている。
そのための食品として、以前から乳酸菌やビフィズス菌は特にIgA抗体の誘導が増強されることがいわれている。
一般的には「乳酸菌やビフィズス菌は免疫や腸内環境に効果的」と理解され、それらを豊富に含む食品の摂取が有効とされている。
八村氏のグループはL.paracaseiというヒトの腸から発見された乳酸菌が腸管の樹状細胞に作用し、IgA抗体産生をさらに増強すること、また、この乳酸菌を経口摂取することでマウス試験ではあるが、インフルエンザに対する感染防御能が高まることなどが明らかになったという。
・
・