ホメオスタシスの維持、従来の方法では検査しづらい
稲川氏らの研究グループはこれまで健康維持の観点から食細胞(マクロファージなど)の機能を評価してきた。
この経験から、体を健康に保つ機能とは「ホメオスタシス維持機能」であり、これには食細胞群が重要な役割を担っていることを見出した。
こうしたことから、食品や運動によりホメオスタシス維持機能を評価する方法を開発することを目標に研究開発を続けてきた、という。
というのも、ホメオスタシスが維持されているかどうか、従来の方法では検査しづらい。
病院での生化学マーカーは医療機関で採取し、専門の検査会社や病院が必要で専門技術が必要、測定のハードルも高いという問題があるからだ。
しかもホメオスタシスとは日々の体調変化と同様に繊細に揺れ動くものであり、いちいち病院で専門的に測定しているのではタイムラグも生じる。
微量血液で測定できるシステムを構築
そこでホメオスタシスを簡便に評価する装置を開発するため、また最終的には「リアルタイムで簡便に、そして安価で誰でも測定できる」ことを目標にシステム開発を行ってきた。
実際には、微量血液で測定できるシステムの構築を平成27年までに終了した、という。
このシステムの開発の背景には生活習慣病の原因を考えることにあったという。現代病ともいわれる生活習慣病は、過食や偏食、運動不足や環境汚染、慢性的ストレスや睡眠不足といった多岐にわたる原因が複雑に絡み合っている。
いずれも初期には自覚症状が薄いが、深刻化すると生活の質を著しく低下させるという共通点があり、どんな生活習慣病もまずは生体内の異物の増加によって引き起こされる、という共通点がある。
日々微妙に変化するホメオスタシスの測定が可能に
例えば、アルツハイマー型認知症であればアミロイドβ、高血圧症や動脈硬化であれば酸化LDL、肌の老化や血管の炎症ではAGE sなどが異物とされる。
これらの生体内異物を「作らせない」「溜めない」「排泄する」という自然免疫力を測定できれば、ホメオスタシスが正しく維持できている、と判断できるのではないか、という観点からシステムが開発されたという。
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