ビタミンEの魅力、最新研究〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017

2017年4月19〜21日、東京ビッグサイトにて国際医薬品開発展〜ジャパンライフサイエンスウィーク2017が開催された。この中から、三菱ケミカルフーズ鰍フ講演「ここまでわかったビタミンEの魅力」を取り上げる。


8種類のビタミンEが存在

1922年、レタスから発見されたビタミンE。当初はラットの生殖に関与する必須な食事性新規因子として見い出された。

1924年には、5番目に発見されたビタミンとして「ビタミンE」と名付けられ、1936年にトコフェロールと命名、さらに1938年にはトコフェロールの合成に成功する。

近年では海洋生物由来トコフェロール、キウイフルーツより2009年に発見されたδトコモエノールなどが新しいビタミンEの仲間として確認され、現在は8種類のビタミンEが存在することがわかっている。

ビタミンEといえば「抗酸化」機能が有名。「神が生物界に与えた抗酸化剤」といわれ、生体内で発生したラジカルを消去・酸化抑制だけでなく、生体外でも物質の酸化防止剤として働く。

他にも、血流促進、免疫賦活、抗炎症、抗血漿板抑制、ホルモン分泌調整など、近年次々と優れた機能性が報告されている。

ビタミンEの3つの機能

これらの作用は、ビタミンEに「抗酸化」「細胞内情報伝達作用」「細胞膜安定化」の3つの機能が備わっているからである。

こうした機能により、ビタミンEはさまざまな健康維持や疾病予防に役立つと考えられている。

「抗酸化作用」については、体の100兆以上の細胞一つ一つを形成する細胞膜(生体膜)に活性酸素(フリーラジカル)が発生すると、通常は体内で幾つかの防御作業が働いて消去される。

しかし、消去されずに次々と酸化反応を繰り返すと、過酸化脂質が形成され、生体膜に障害が生じる。

この時、ビタミンEが存在すると、ビタミンEが代わりに酸化され、フリーラジカルが消去されて、過酸化脂質の形成が抑制される。

ちなみに酸化されたビタミンEはビタミンCやコエンザイムQ10などの体内にある他の抗酸化物質によって速やかに元に戻される。

米国では「心筋と免疫の健康増進」表記

「細胞情報伝達調整作用」については、遺伝子転写調整因子の移行の抑制機能などが知られている。

「生体膜安定化作用」については、生体膜を構成するリン脂質の二重構造の箇所にビタミンEが入り込み、膜組織を安定させると考えられている。

これらのビタミンEの働きから、日本では栄養機能食品において「抗酸化作用により、体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける」という表記が認可されている。

一方、米国においては「心筋と免疫の健康を増進する」「免疫機能、毛、眼、精神、前立腺、関節の健康に利益をもたらす可能性がある」「心臓と心臓血管系の健康をサポートする」といった表記が可能となっている。

ビタミンEの有効とされる摂取目安量(有効最少量)について、最新の研究では「抗酸化作用」67mg〜268mg、「血流促進作用」201mg、「免疫賦活作用」134mg。

また、「抗炎症作用」200mg、「抗血漿板抑制作用」134mg、「ホルモン分泌調整作用」402mg(いずれも天然のα-トコフェノール)の摂取が望ましいとされている。

1日2g投与でも副作用は見られず

こうした複数の機能を持つビタミンEは、医薬品や健康食品として利用されている。医薬品では100〜300mlの利用が多い。

健康食品では、カリフォルニア大学のパッカー教授が閉経後は乳がん予防のために100mg/日のビタミンE摂取を推奨している。

また、アリゾナ大学のワイル教授は健康を推奨するために80mg/日を摂取することを推奨している。

これらの摂取量や有効とされる量の摂取は食品からは不可能であるため、ビタミンEはサプリメントによる摂取が望ましいといえそうだ。

ちなみに日本人の食事摂取基準によると、成人の摂取目安量は男性が6.5mg/日、女性が6.0mg/日で、許容上限量が男性800mg/日、女性650mg/日、と設定されている。

現在、上限が800mg/日と考えられているが、実際のところ認知症などの症例に1日2g投与した場合でも副作用は見られず、安全性が極めて高いことがわかっている。

デトックスの切り札として

ビタミンEは抗酸化作用と抗炎症作用をベースに、多岐にわたる新しい機能性が認められつつある。

血流を改善し冷えを解消、肝臓や脳の健康を守り、さらに歯周の健康(昔から歯磨き粉にも添加されている)、骨の健康、サルコペニアの予防など、さまざまな有意な報告がなされている。

また、環境ホルモンにより体内のホルモンバランスが乱れることが懸念されるが、ビタミンEは昔からデトックスの切り札としても考えられており、まさに現代人に必要なビタミンといえる、とまとめた。



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